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■63 遊園地②

俺達は大きなお城の(そば)にある噴水まで移動すると、愛花達が固まって待機していた。

愛花に向かって手を振ると、愛花も俺に気付いて手を振り返してくる。


「もう兄さん! 心配したんですからね!」

「ごめんごめん、スマホの電波が悪くて気が付かなかったんだ」


俺はほっぺを膨らませた愛花をなだめる。うん、怒ってる愛花も可愛い。

愛花を横目に早苗さんに視線を移す。


「……それで、(はぐ)れてる間に俺達は昼飯を済ませているんですけど、早苗さん達はもうお昼は済ませたんですか?」

「えぇ、それなら私たちもお昼は済ませてあるわ」

「そうなんですね。……時間も時間だし、そうなりますよな」


俺は妙に納得をしながら、合流した皆を見回す。


「また逸れたら面倒だから午後からは皆で固まって移動しよう」


皆も賛成のようで、俺達は次に園田さんが乗りたいアトラクションへと向かう事にした。




到着したアトラクションはホラーテイストのマンションの様な建物だ。


「……なんか怖い雰囲気を(かも)し出してる建物だな」

「……はい! この建物には幽霊が沢山住んでいまして、私たちをその幽霊の一員に加えようと襲ってくるアトラクションです!」

「明らかに怖い系のやつだね」

「早く入りましょう兄さん!」


愛花はワクワクしながら俺の手を引っ張る。


「……ま、まぁ所詮は子供だましよ、早く入りましょう!」


恵は怖いのか声がうわずっている。

俺達はマンションの中に入ると、徐々に老いていく肖像画やしゃべる絵画など、恐怖を高める演出が始まる。


「……もう既に怖いんだが」


それから室内が一気に暗くなると恵は驚いて園田さんに抱き着いていた。

暗い中、道が開いたので奥へ進むと俺達は小さなバギーに乗れる場所へと到着する。


「3人しか乗れないみたいだな。……それじゃ恵と園田さんは一緒に乗るとして、あと1人は好きに選んでくれ」


園田さんはしがみ付いていた恵の方をチラっと見た後、俺の方を向く。


「……それじゃ山守君、一緒に乗ってくれますか?」

「俺ね、了解」


その後、愛花達はじゃんけんのグーとパーを出し合い一緒に乗り込むメンバーを決めていた。

俺ら3人はバギーに乗り込みアトラクションがスタートする。


「雰囲気があるな……」


室内は全体的に暗く、怖いBGMが流れている。


「……ですね」


答える園田さんの方を見ると、恵が園田さんの(すそ)(つか)んで周りを見回していた。

恵の反応を見て楽しんでいると恵側にあったピアノが急に鳴り出す。


「きゃッ!」


園田さんと恵は驚いて俺の方へ避けようと移動してくる。


「うわっ」


――ガシッ

恵は俺の服にすがりついてくる。


「……ったく、もう……いきなり何よ」


すがりついてきた恵はピアノの方を見てブツブツ小言を呟く。


「ちょっと恵? 狭いんだけど……」


俺の声を聞いて、自分がすがりついたのが俺だと理解する恵。


「……え、あ! ご、ごめんなさい」


恵は頬を染めながらすぐに元の場所に戻る。


「いや、新鮮な恵が見れて楽しいから別にいいけど」


園田さんはそんなやり取りをする俺達をニヤニヤしながら傍観(ぼうかん)していた。




程なくして、ゴール地点にバギーは到着して俺達は出口へと向かう。


「結構怖かったけど楽しかったね」

「……はい! とても楽しかったです」

「園田さん、結構怖いやついけるんだ」

「はい! 好奇心が勝っちゃいますね!」


すると、少し遅れて恵も出口から出てくる。


「お疲れ恵。大丈夫か?」

「……えぇ、少し休憩しましょ」


俺達は他の皆が出てくるまで近くのベンチに座って待つことにした。


「……そうだ! 私、飲み物買ってきますね」

「あ、いいよ。俺が行くから」

「いいですから! 山守君は恵ちゃんを見ていてください!」


護衛対象から何故か恵を見守っているように言われ、俺は根負けする。


「あ、あぁ……わかった。何かあったらすぐ連絡してよ?」

「……はい!」


飲み物を買いに走っていった園田さんを横目に、俺は隣で座る恵に視線を向ける。


「それにしても、恵って怖いの苦手なんだな」

「……えぇそうよ。悪いかしら?」


恵は開き直って答える。


「はは、怖いなら初めから乗らなかったら良かったのに」

「……いいのよ。瞳ちゃんが楽しんでる邪魔はしたくないもの」

「ふぅん……なるほどな」


恵なりに園田さんとの時間を大切にしているようだ。


「……でも園田さん、めっちゃ楽しんでるみたいだし、ここに来てよかったな」

「そうね……私もそう思うわ」


俺達が話していると、子供連れの3人家族が声をかけてくる。


「……あの、すみません。ちょっと写真撮って貰えますか?」

「……え、あ……はい。いいですよ」


俺はベンチから立ち上がり、父親からスマホを受け取る。


「あの大きなお城をバックにお願いできますか?」

「わかりましたー!」


俺は答えると、2,3枚の写真を撮影し終える。


「撮れましたよ」

「あ、いい感じに撮れてますね! ありがとうございます!」


父親は感謝を伝えた後、俺と恵を見た後に提案をしてくる。


「……お礼にお2人の写真も撮りましょうか?」

「……あ、ありがとうございます」


俺は断る理由もなかったので、お願いすることにした。

ベンチに座っていた恵に近づく。


「何かお礼に写真撮ってくれるってさ」

「……え! 写真?」

「うん。嫌だった?」

「うぅん! 全然嫌じゃない!」


恵は勢いよく首を振る。

すると、恵もベンチから立ち上がる。


「それじゃ、俺達もあの城をバックにお願いできますか?」

「わかりました」


俺はスマホをカメラの画面にして父親に渡す。


「それじゃ撮りますねー」

「おねがいしまーす。……ほら、恵。笑顔笑顔」


隣の恵は緊張した顔をしていたので、軽く助言をすると恵は笑顔を浮かべた。

すると、シャッター音が鳴り撮影を終える。


「いい感じに写真がとれました!」


俺はスマホを受け取ると、笑顔の恵とピースをしながら隣同士で並ぶ俺達の姿が映っていた。


「本当ですね! ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます! お2人も今日は楽しんでくださいね! それでは失礼します」


元気の良いお父さんは母親と子供の所へ戻り歩いていった。

俺達は再びベンチに座り込む。


「……ねぇ、私たちあの家族から付き合ってるように見えたのかしら?」


恵は(うつむ)きながら頬を染めて質問をしてくる。


「あ~……確かに」


俺達を客観的に見たら、誰がどう見てもカップルそのものだった。


「まぁ、思われる分には別に害がある訳でもないし、いいんじゃない?」

「……それもそうね」


納得した恵を横目に消えていった家族の方に視線を向ける。


「何か、いいよな。ああいうのって」

「……えぇ、子供も本当に楽しそうだったもの」


俺達がしみじみとしていると、視界に園田さんが飲み物を持って歩いて来るのが見える。


「あ、園田さん戻ってきたね」


すると、恵は俺の(すそ)を引っ張ってくる。


「ね、和樹君。さっきのは瞳ちゃんに内緒ね? あと、撮った写真私にも送っておきなさいよ」

「わ、わかった」


俺は耳元で(ささや)く恵に返事を返していると、園田さんがベンチに到着する。


「……おまたせしました!」

「ありがとう園田さん」

「瞳ちゃん、ありがと」


俺達は飲み物を受け取り、園田さんはベンチに座る。

それからすぐ愛花達とも合流し、次のアトラクションへと向かう事になった。




それからも日が暮れるまで園田さんの乗りたいアトラクションを回り続けた。


「園田さん、他に乗りたいものってあるかな?」

「……そうですねー……。うん、乗りたいものは一通り乗れたと思います!」


非常に満足している園田さんの顔をみた後、俺は皆を見回す。


「それじゃ、もう日も暮れてきた事だし、そろそろ温泉旅館の方へ移動しようか」


皆も頷き、俺達は遊園地の出口へと向かった。

出口を出た後、俺達は早苗さんのワゴン車に乗り込む。


「……ふぅ……。一日中歩き回って足が棒みたいだ」

「本当ね、ちょっと足を休めないと」


恵は自分の足をマッサージする。


「兄さん、とても楽しかったですね!」


愛花も梓ちゃん達と楽しんでいたようで、非常に満足した笑顔を浮かべていた。


「それじゃ、出発するけど忘れ物はないかしら?」


すると、早苗さんは運転席から俺達のいる後部座席に振り返って確認をしてくる。


「問題ないです!」

「じゃ、出発するわねー」

「お願いしまーす!」


俺は返答すると、車は温泉旅館へと向かっていった。

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

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