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■06 担任と部室

放課後になると、生徒は次々と教室を出て帰宅していく。

これから始まる週末に向けて何をしようかとワクワクしながら帰宅する者ばかりだ。


「これから生徒会?」


豊崎は帰り支度をする俺に話しかけてくる。


「あぁ。……ただ、その前に部室の件で高橋先生に空き教室があるか確認したいから、まずは職員室に行く予定だ」

「そう。……なら私も付き合うわ」

「え、いいのか?」

「えぇ、乗りかかった船だもの。出来る限り大きくしたいじゃない?」

「ありがとう豊崎」

「ふっふっふ……お二人さん。私の事も忘れて貰っては困るな!」


少し離れた場所に眼鏡をクイっとしながら笑みを浮かべる樹がいた。


「お、まさか樹も付いてきてくれるのか?」

「そのまさかだ。2人より3人の方が高橋先生も真剣に話を聞いてくれるだろう」

「悪いな、もう少しで仕度が終わるから待っててくれ」


2人のありがたい申し出を受け入れ、教材を鞄にしまう。




準備が済んだ俺は鞄を片手に持ち、席から立ちあがる。


「お待たせ、それじゃいこうか」

「えぇ」

「行こうか!」


教室から出て俺達は職員室に向かう。


「――兄さん!」


すると、後ろから聞きなれた声が聞こえた。




振り返ると既に帰宅していると思っていた愛花がそこに立っていた。


「あれ? 帰ってなかったんだ」


1年は昼休み後に1限だけして帰宅すると聞いていたのでもう帰っているもんだと思っていたが、……どうやら俺の授業が終わるのを待っていたようだ。


「はい、部室の事でこれから職員室に向かうんですよね? 私も付き合います!」


それだけの為にわざわざ待ってくれていたと思うと無性に可愛く見える。

今すぐ抱きしめてよしよし~と、したい気持ちをグッと抑えたところで俺は話し出す。


「そうだったんだ、ありがとう愛花。ちょうど今から職員室に向かうところだったんだ。一緒に行こうか」

「はい、兄さん!」




俺たち2年生のクラスは2階にあり、職員室は1階にあるので階段を下りていく。


「それにしても、愛花ちゃんと一緒に学校を移動するのも何だか久しぶりだよね。中学校ぶりじゃないかな?」


樹が一緒に職員室に向かう愛花に向けてしみじみと(つぶや)く。


「ですね! 改めてまた高校でもよろしくお願いします斎藤先輩!」

「うむ、何か困った事があればこの先輩を頼っていいぞ」

「私は初めてよね? これからもよろしくね。愛花ちゃん」

「はい! 豊崎先輩もよろしくお願いします」


愛花から先輩と呼ばれて無性に嬉しそうな2人だった。

樹は中学校でもよく一緒にいたので慣れたものだが、豊崎は高校で初めて愛花と行動する。だが、同じ女性同士で通じるものがあるのだろう。すぐに意気投合していた。




程なくして職員室に到着する俺達は、一人ひとり「失礼します」と言いながら職員室へと入っていく。


「えっと~……」


俺は高橋先生の机を見つける為に職員室内を一通り見渡す。

すると今から立ち上がり、どこかに移動しようとしていた高橋先生が視線に入る。


「高橋先生!」


高橋先生は俺に気付くと足を止めて俺たちの方を向く。




「あら山守じゃない。付き添いもいるようだけど、何か用かしら?」


高橋先生の場所まで移動し終えると、高橋先生は質問をしてきた。


「はい、その件で確認したいことがありまして、少しだけ時間よろしいでしょうか」

「少しだけならいいわ。こっちに来なさい」


どこかに移動しようとしていたにも関わらず、高橋先生は俺たちの申し出を受けてくれた。

高橋先生は、職員室の奥にあるテーブルを挟むように置かれたソファーへと俺達を誘導する。


「ささ、座って」


高橋先生に言われるがままソファーに腰を落とす。

そのまま高橋先生は給湯室に向かい、お茶を用意してくれる。




テーブルに5人分のお茶が置かれ、高橋先生も向かいにあるソファーに腰を落とす。


「それで、話って何かしら?」


俺は本題を話し始めた。


……

………


「なるほどね、新しい部活を始めたいから空いている部室はないか、という事ね」

「はい、既に参加メンバーは6名は用意しているんですが、活動する部室がまだ決まっていない状態でして……以前に廃部になって空いている部室などがあれば使わせて貰えないかなぁ……と思った次第です」


高橋先生は少し考え込む。


「そうねぇ、確かにいくつか廃部になった部活の部室は空いていたはずだけど、……部室が見つかったとして実際に、その……なんだっけ、生徒の問題を解決する活動って必要なのかしら? 問題を抱えたとしても、私たち先生に相談してくれればそれで済む気もするわ」


高橋先生はごもっともなご意見を言ってくるが、俺なりの言い分もある。


「おっしゃる通りですが、実際に問題を抱えている生徒がいた場合、いざ先生や周りの大人に相談しようとすると少なからず抵抗感を感じてしまうと思うんです。そんな状況の時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で、いち早く問題を抱えている生徒の話を聞くことができ役に立てると思うんです」


俺の考えを高橋先生にまくし立ててみた。


「お願いします!  どうか何か空いている部室があれば使用許可はいただけないでしょか?」


さらに考え込む高橋先生。


「……確かに、生徒目線で相談できる場所もあった方がいいかもしれないわね」

「そうですよね! ありがとうございます!」


なんとか高橋先生も納得してくれた様子だ。


「……それはそうと、部活動の名前とかって考えてあるの?」


……まったく考えていなかった。




一気に焦った俺は、同行していた樹や豊崎にに顔を向ける。


「おい、なんかいい活動名ってないか?」

「そうだな、”青春部(せいしゅんぶ)”ってのはどうだ」


樹は眼鏡をクイっとしながら提案してきた。


「却下だ、なんか恥ずかしい。……豊崎は何か思いつくか?」

「……そうね。万事部(よろずぶ)なんてどう?」

「……う~ん、なんか堅苦(かたくる)しい感じがするな」


俺はすがるような表情で愛花の方を向く。


「あはは……、えと、学生の生活を奉仕する活動だから。学園生活奉仕部(ほうしぶ)ってのはどうでしょうか?」


照れつつも良い活動名を考える当たりさすが我が妹。ちょっと長いが及第点ってところだろう。




「学園生活奉仕部か……っ! 高橋先生、仮決めですがその部活名にしたいと思います!」


苦笑しながら俺たちのやり取りを聞いていた高橋先生は我に返る。


「いいんじゃないかしら、部室にしても確か将棋部の部室が空いていたと思うわ」

「空いている部室、あるんですね!」

「えぇ。……だけど、使用許可をもらうには生徒会の許可が必要よ」

「わかりました。では、これから実際に生徒会に出向いて許可してくれるように頼んでみたいと思います」


何とか部活結成までの糸口が見えてきたのでテンションが上がる。


「ちょうどこれから生徒会に用事があったところだから、どうせだし私も付き合うわよ」


更に高橋先生は笑みを浮かべながら素敵な提案をしてくる。


「いいんですか、是非よろしくお願いします!」


とても心強い仲間が出来てさらにテンションが上がってくる。




「それじゃ、早速いきましょうか」


俺達はソファーから立ち上がり、生徒会室に向かおうとする。

だが、テーブルの上に置かれたお茶碗に視線が向かう。


「あ、これ戻しておきますね」

「あら、気が利くのね。お願いできるかしら」


ニコっと微笑む高橋先生に笑顔で返し、俺はテーブルの上に置かれた4人分のお茶碗を給湯室に持っていき流し台に置く。

その後すぐに4人のもとに戻る。


「お待たせしました。それじゃいきましょう!」


職員室を出た俺達は、おそらく一番の難関である生徒会室へと向かうのだった。

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

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