■59 夜会話
梓ちゃん達と雑談をしていると、まだ睡魔が残っているのに気づく。
「そういえば、寝る部屋って2階にあるんだっけ?」
「……そうだと思います。まだ見てはいないですが……」
「さっき、アリサが布団出してくるーって言ってたと思いますよ?」
神崎さんが思い出しながら話す。
「なるほど……それじゃ部屋の確認も兼ねて持ってきた荷物を部屋に移動してくるよ」
「……あ、はい! 行ってらっしゃいです」
「いってらっしゃいです、和樹さん」
俺は2人に断り、自分の荷物を持って2階へと向かう。
2階に上がると、通路にアリサちゃんと早苗さんがいた。
「もう布団は出し終わったんですか?」
「あ、和樹さん。……えぇ、アリサちゃんが頑張ってくれたんですよ?」
早苗さんは、アリサちゃんの頭をナデナデしながら話してくる。
アリサちゃんは満面の笑みで答える。
「そうですか。……改めて、今回はこんな素晴らしい場所を提供して頂いてありがとうございます」
俺は深々とお辞儀をする。
「ふふ、いいのよ? 大切なアリサちゃんからのお願いだもの」
早苗さんはアリサちゃんをハグしながら答える。
「……それにしても、お2人ってとても仲がいいですよね?」
「うん! お母さま、とっても優しくて大好き!」
「あらあら、嬉しい事いっちゃって……それに、アメリカから戻ってきた時の塞ぎこんでたアリサちゃんを元気にしてくれたお友達を招待だもの。お母さん、気合が入っちゃったわ」
「あわわ、お母さま、それはもう昔の事だよ!」
アリサちゃんが慌てて訂正する。
確か、前のお泊り会でアリサちゃんから同じような事を聞いた覚えがあったな。
「ご飯が出来たわよー!」
すると、1階から恵の声が聞こえてくる。
「ご飯が出来たみたいですね。それじゃ俺は荷物を部屋に置いてから降りるとします。……それで、どの部屋を使えばいいでしょうか?」
「そうね。特に決めていないから、好きに使って問題ないわ」
「わかりました! それではまたあとで」
「えぇ、またあとで」
「うん! もうお腹ペコペコだよ!」
アリサちゃんはそう早苗さんに言いながら1階へと向かっていった。
俺も近い部屋に入り荷物を置いた後、急いで1階へと向かう。
リビングに到着すると、既にテーブルに料理は並べられており、どれも非常に美味しそうな出来栄えだった。
「へぇ……めっちゃ美味そうじゃん」
「そうでしょ? 和樹君も早く座って、早く食べましょう!」
「おぅ!」
恵に言われるがまま座り、俺達は頂きますをして料理を食べ始める。
食材の質と恵達の料理スキルが相乗効果を発揮し、予想以上の破壊力でほっぺが落ちるほどの美味しさで俺達を驚かせる。
「……すごく美味しいわね」
「ありがとうございます。早苗さんが用意してくれた食材が良かったからだと思います!」
「……はい! 私も食材が沢山あって何を作ろうか迷っちゃいましたけど、喜んでもらえて嬉しいです!」
恵と園田さんは笑みを浮かべながら早苗さんにお礼を言う。
「ふふ、今回は私はサポート役に回っただけでお2人がメインで作ったんですよ?」
愛花も梓ちゃん同様に恵と園田さんの時間を尊重していたようだ。
優しい妹も持って俺は嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「うん! すっごく美味しい愛花! おかわりー!」
「はい! すぐ持ってきますね!」
アリサちゃんも大喜びの様でご飯のお代わりを愛花に頼んでいた。
「……見た目も良い上に実際に食べても美味しいとか最高だろ、恵」
「そうでしょ! 私も瞳ちゃんと一緒に作れて楽しかったわ! この料理なんて――」
それから恵は、本当に楽しそうに園田さんと一緒に料理を作る過程の話を俺に話続ける。
俺は話の内容より、楽しそうに話す恵に嬉しくなり笑みを浮かべながら話を聞いていた。
「片付けは私がしておくから、皆はゆっくりしててね」
楽しい晩御飯を食べ終えた後、早苗さんは率先して片付けをすると言って台所の方へと向かっていった。
俺が片付けをしましょうか? と尋ねようとしたが、それ以上に眠気がピークに来ており、それどころじゃなかった。
『……神楽耶、めっちゃ眠いんだが』
『うぅ……すみません! 私が憑依したばっかりに……』
『家や車でも少し寝た気もするんだけど、それだけじゃ回復しないんだな……』
『はい……。和樹君の体をお借りする時に体の全細胞を活性化させているので負担が一気に来るんだと思います』
『……なかなか厄介な代償だな。緊急時の時にしかしないでおくよ……』
『それは……もちろんです! 私も和樹君の了承が無い限り、勝手に体をお借りすることはないですので安心してください!』
『おぅ……』
飯を食べてすぐに寝るのは良くないと知りながらも皆に断り、俺は部屋へと向かった。
部屋に入るとアリサちゃんが敷いてくれたベットにダイブしてそのまま目を瞑るとすぐに眠りの世界へと入っていった。
…
……
………
目を覚ますと辺りは真っ暗になっており、皆が寝静まった後だという事が理解できた。
「……まぁ、そうなるよな」
『……おはようございます、和樹君』
『あぁ、おはよう』
俺は少し寂しい気持ちを抱きながらも、体の疲れは嘘のようになくなっていた。
部屋から出ると、2階の奥に大きく開いたバルコニーが見えたので、気分転換に外の空気を吸う事にした。
「おぉ……海が一望できるのかよ」
バルコニーに出た俺は、眼前に広がる海の地平線を見ながら呟く。
すると、バルコニーの入り口が開く音がしたので振り返る。
「……恵? まだ、起きていたのか」
「……えぇ、足音が聞こえたから。……そっちに行ってもいい?」
「あぁ」
すると、恵は俺の隣に来て先ほどまで見ていた景色を共有する。
「……すごい景色ね。夜空ってこんなに綺麗だったんだ」
「あぁ、アリサちゃんには感謝だな。こんなすごい家を貸してくれたなんて」
「……ごめんね。いろいろ負担をかけちゃって」
恵は俺が疲れている事を気にしている様子だった。
「いや、そうでもないよ。さっきの晩御飯もそうだし、今回の件でこれからは恵も思う存分に園田さんと交流を深めていく事ができるんだ。それにまだ高校生活は長い。友達はもっと増やしていけるだろうし……そんな恵の役に立てて良かったよ」
「……和樹君。……ふふ、何度お礼を言ってるかわからないけど……本当にありがとうね」
「好きでやっているだけだからな、そんなお礼を言われる事でもないよ」
すると、恵は俺の肩に頭を預けてくる。
「……ずるいよ和樹君は、そんな事言われたらどう感謝の気持ちを伝えればいいのか分からなくなっちゃう」
「恵?」
「……そういえば、私たち今付き合っている振りしてるんだったわよね?」
「確か、そうだったな」
すると頭を起こした恵と俺は見つめ合う形になり、恵はゆっくりと目を瞑る。
俺は……
――ガチャッ
すると、またもやバルコニーの扉が開く音がした。
「兄さん! 起きていたんですね!」
「あ、愛花!?」
愛花の登場に驚いた俺達は瞬時に距離を開ける。
「確か……兄さんってまだお風呂に入っていなかったですよね?」
「あぁ、……晩御飯を食べた後、すぐ寝ちゃったからな」
「それなら、ちゃんと入ってから寝てくださいね!」
「……愛花、それを言う為にわざわざ起きていてくれたのか?」
「えぇ……。もう限界ですので私もすぐに寝たいと思います」
愛花は目を擦りながら話す。
「夜弱いのにすまんな……。それじゃ今すぐ入ってくるよ。……それじゃ恵、また明日な!」
「え……えぇ。また明日ね和樹君」
俺はその場に愛花と恵を残してすぐに退散する。
「……やばかったな」
……愛花が来なかったら俺はどうしていたんだろう?
そんな事を考えながら風呂に入る準備をする為に部屋へと急ぐのだった。
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