■57 報告と護衛開始
6限が終わり放課後になると、俺の席に樹達が近づいてくる。
「さて、それじゃ帰ろうか和樹」
「すまん樹、ちょっと職員室に寄りたいから昇降口で待っててくれるか?」
「ん? 構わないが……付き添おうか?」
「いや、大した要件じゃないからいいよ」
「そうか、わかった。それでは先に昇降口で待たせてもらうから用事が終わったら来いよ」
「あぁ」
樹達に昇降口で待っておいてもらう事にして、俺は職員室に向かった。
職員室に到着すると俺は中へと入り、高橋先生の姿を探す。
「えっと……あ、いたいた」
机に座っていた高橋先生の近くまで移動して声をかける。
「高橋先生、恵の件で少しお話があるのですが、よろしいでしょうか?」
「山守ね。何かしら?」
「実は――」
俺は昼休みに起きた事を高橋先生に伝える。
「――なんとか逃げる事が出来て教室には戻ることは出来たので、実質的な被害はなかったんですけど……」
「なるほど、豊崎と付き合っている振りをしたことが裏目になって、山守が標的にされたって訳ね」
「はい。ただ、恵には絶対にこの事は伝えない様にお願いできますか? 恵がこの事を知ったら心配すると思うので」
「……わかったわ。教えてくれてありがとう。この事は豊崎には言わない様にしておくわね」
「ありがとうございます」
「いいのよ。でも、昨日山守が用意してくれた映像証拠と山守の証言があれば、私たちの大義名分は余りあるほど揃っている状態よ。来週の月曜日にはリサ達に直接指導を入れる事が出来るわ。だからこそ、何としても週明けまでに園田の護衛をお願いね。あと、山守も気を付けて過ごしなさい」
「わかりました! それじゃ、これから園田さんを家まで送り届けた後、早朝に決めた護衛計画を実行していこうと思います」
「えぇ、いってらっしゃい」
俺は高橋先生に報告を終えると、職員室から出て昇降口へと向かう。
昇降口に到着すると樹達が待機していた。
「すまん、お待たせ」
「お、来たな。それでは帰ろうか」
「あぁ、……恵、今日は俺達尾行じゃなくて、普通に一緒に帰るからよろしくな」
「えぇ、しっかり護衛お願いするわね」
「……よろしくお願いします」
それから俺達は上履きから靴へと履き替えて校門を出て帰り道を歩き始める。
俺の隣を恵が歩き、少し後ろに樹と園田さんが隣同士で桜並木を歩いていく。
「……今日はいろいろあって大変だったな」
「えぇ、和樹君が付き合っている振りをしようなんて言うからよ? あれからもクラスの女子から質問が止まないもの」
「すまんかったな。俺も思いつきに付き合わせてしまって、さっき高橋先生に確認したら週明けの月曜日にはリサ達に直接指導をする事が決まったらしい」
「……え、本当?」
「あぁ、これで恵に対しての嫌がらせもなくなるだろう。だからこそ、この週末は園田さんを守り切って過ごさないとな」
「……そうね。……ありがとう和樹君。和樹君に頼んだら、何でも解決しちゃうのね」
「まだ、気は抜けないけどな。週末はまだ始まったばかりだし、護衛しつつも園田さんと楽しい時間を過ごせるように俺達も全力で楽しもうな」
「えぇ!」
恵との話がひと段落したので後ろにいる樹の方へ振り向くと、樹達が俺達の事をニヤニヤしながら見ていた。
「なんだよ……」
「ふ、気にするな」
「ふふ……えぇ」
「まぁいいか。えっと、この後アリサちゃんが車でそれぞれの家に迎えにくる予定だから、俺達は寄り道せずにまっすぐ帰ろうと思うがいいよな」
「……わかりました。それに、わざわざ家まで守ってくれるなんて嬉しい限りです」
「何、お安い御用だよ。樹もそれでいいよな?」
「あぁ、私は一向に構わない!」
「よし、それじゃ急いで園田さんの家まで向かうぞ」
それから俺達は寄り道せずに園田さんの家まで向かっていった。
途中で恵とお別れする場所まで移動する。
「それじゃ、私はここでお別れね」
「あぁ、帰ったら出かける準備をお願いな。……前のお泊りみたいに大荷物にならないようにしてくれよ?」
「え、えぇ……気を付けるわ」
俺は恵とのお別れを済ませ、樹と園田さんの家まで向かった。
そして、程なく園田さんの家に到着する。
「それじゃ園田さん、また後でね。アリサちゃんの車で迎えに来るまで家を出ないように」
「……わかりました! ここまで護衛ありがとうございます。また後でお会いしましょう」
園田さんと別れた後、俺は樹と途中まで一緒に帰る事にした。
樹との分かれ道に差し掛かる。
「ここでお別れだな。それでは私も家に帰るとしよう。和樹、また後でな」
「おう、また後で」
最後に俺と樹もお別れを済まして、それぞれの家へと帰っていった。
急いで家に帰り、玄関に到着するとメイド服の愛花がリビングから駆け寄ってくる。
「おかえりなさい兄さん! やっと帰ってきましたね! さ、何があったのか話して貰いますよ?」
メイド服の可愛い愛花に出迎えられることに幸福感を感じつつも返答する。
「ただいま愛花! あぁ、わかったよ」
それから俺は部屋に鞄を置いて軽く着替えを終えた後、リビングに降りて今日起きた事を愛花に共有する。
「……樹達の騒動を鎮静化させるために豊崎先輩と付き合った振り、ですか。少し複雑な気持ちですが、わかりました」
愛花にもリサ達に襲われた事は伏せておくことにした。
不要な心配をかけたくはないからな。
「高橋先生に確認したら、週明けにはリサ達に直接指導することが決まったらしいから、付き合った振りも週明けまでの話だけどな」
「え、もうあの人たちに指導が入るんですか?」
「あぁ、高橋先生が頑張ってくれたんだろう」
「よかったです!」
「あぁ、だからこそ週末の園田さんの護衛をやり通さないといけないぞ?」
「そうですね。それじゃ早く出かける準備をしないと」
「だな! そういえば、アリサちゃんから連絡ってきてる?」
「あ、はい。えっと……」
愛花はスマホを取り出して確認する。
「……あと30分ぐらいしたら私たちの家に到着するらしいです」
「すぐだな、それじゃ俺達も出かける準備を始めるか!」
「はい兄さん!」
それから俺達は急いで二泊三日の用意を始めたのだった。
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