■54 護衛計画
俺は早速部員と園田さんが座っているソファーの方へ視線を向ける。
「それじゃ、先生から週末は園田さんの護衛を任せられた訳だけど……園田さん、問題ないかな?」
「……はい、問題ありません。動画でもリサ達は私を狙おうとしていた言動もありましたし……私も是非お願いしたいです」
「瞳ちゃんが問題ないなら、私も賛成よ。……それで実際何をして週末過ごそうかしら……」
「はいは~い! せっかくなら面白い事して過ごしたいな!」
アリサちゃんが元気よく手にあげて意見を述べる。
「それはもちろん、俺も同感だ!」
俺はアリサちゃんに元気よく返答する。
「……ただ、ある程度遠い場所を考えないとまたリサ達に尾行されてしまう危険性もあるんだ。出来る限り、リサ達が尾行できないような場所にしたい」
「それなら……私んちの別荘なんてどうかな? ちょっと遠いし、そのリサって人たちもなかなかすぐに来れないと思うな!」
「アリサちゃんちって別荘なんてあるんだ……。ってか俺達が借りても大丈夫なのか?」
「うん! お母様に頼めば許可してくれると思う」
「ありがとうアリサちゃん、候補の1つに入れておくね。……それで園田さん、どこか行きたいところってある?」
「……そうですね。いい機会ですし、行った事のない遊園地というものに恵ちゃんと行ってみたいです」
「遊園地かぁ……具体的にどこに行きたいとかってある?」
園田さんは有名な夢の国である遊園地の名をあげる。
「お、いいね! 実は俺もその遊園地っていった事ないからちょっと興味あるかも。みんなもどうかな?」
すると、部員の人たちも俺と同様に好感触のようだった。
「よし、それじゃ遊園地も有力候補の1つとして残しておこう」
すると、梓ちゃんが挙手をしてくる。
「はい、梓ちゃん」
「……あの、週末ですしどこかで泊まる必要もありますよね? ……そこで、温泉なんてどうかなって思って」
「温泉かぁ……いいねぇ。あ、でもアリサちゃんの別荘もあるし……迷うなぁ」
俺が迷っていると恵が話しかけてくる。
「和樹君、護衛だけど……それって今日の放課後からもう始まるようなものよね?」
「……あ、そうか。だったら、今晩から護衛を初めて二泊三日も出来るって事か」
「えぇ、そういうこと」
「わかった! それじゃ週末の護衛計画だけど、まず今晩からアリサちゃんの別荘を貸して貰ってそこで皆で一緒に過ごす。そして、明日は1日遊園地で遊んだ後、夜は温泉で泊まって、翌日に解散するって流れでどうだろう?」
「おっけー! 早速お母さまに連絡しておくね!」
アリサちゃんは、そう言いながらスマホを取り出して母親に連絡をしていた。
「……いいと思います! 恵ちゃんと楽しい週末が過ごせそうで今からワクワクしてきました!」
「えぇ、私も同感よ。瞳ちゃん、週末はいっぱい楽しみましょう」
「……うん!」
園田さんと恵も喜んでいる様子で安心していると、愛花が手をあげる。
「ん? 愛花、どうかしたか?」
「えっと、今日の放課後からの予定は分かりましたが、放課後までの園田さんの護衛はどうしましょう?」
「……た、確かに」
俺はすぐさま対策を考えて樹に視線を向ける。
「樹、今日は放課後まで園田さんと付き合った振りをしながら過ごしてもらえないか?」
「了解した! 私の演技力をとくと見せようじゃないか!」
「ちょ、何変なこと言ってるのよ和樹君! ……それに斎藤君も安易に乗るんじゃないの!」
「……いや、映像でも俺がリサ達に尾行の理由を伝えていただろ?」
「……それは……そうだけど」
「だとしたら、リサ達が納得する理由を用意しないといけない。急に俺達が園田さんとクラスで絡み始めるとおかしいだろ?」
「……瞳ちゃんはそれでいいの?」
「……私は問題ありません。私達の為に動いてくれているんですから、むしろありがたいです」
「瞳ちゃんが問題ないなら、私もいいけどね」
園田さんからも了承を得たことで、恵も納得したようだ。
「それで園田さん、今日のお昼は学食で食べる?」
「……あ、いえ。私はいつも弁当を作っているので教室で食べますね。それがどうかしましたか?」
「いや、俺達いつもお昼は学食で皆と食べているんだけど、園田さんもどうかなって思って」
「お弁当でいいのなら、是非参加してみたいです」
「おっけ! それじゃお昼は学食で一緒に食べよう!」
お昼の予定も決まり、決める事がすべて決め終る。
「……話は決まったな! それじゃ放課後までは俺と樹で園田さんを護衛して、放課後は園田さんの家まで送り届けた後、二泊三日の用意をする為に家に帰る。アリサちゃん、別荘の件だけどお母さんと連絡着いた?」
「うん! お母様が車を出してくれるみたい! 放課後は私がそれぞれの家にお母さまと車で回ってそれぞれ合流するって感じでいいですか?」
「いいんじゃないかな。……それじゃアリサちゃん、よろしくお願いね」
「りょーかいです!」
「よし、アリサちゃんと合流した後、別荘に泊まって明日は園田さんの希望の遊園地で1日遊ぼう! それが終わった後、梓ちゃんの要望にあった温泉で泊まる。結構な長丁場になるけど、楽しんでいこう!」
部員と園田さんの元気な掛け声が帰ってくる。
「……先生、ひとまず週末の予定は決まりました」
「そうみたいね。私も出来る限り早く動けるように手配しておくから、何か進捗があったらすぐ連絡するわね」
「はい、お願いします」
話がまとまり時計を確認すると、間もなく朝のチャイムが鳴る時間に近づいていた。
「……ギリギリだったな。それじゃ皆、今決めた護衛ミッションを今週末こなしていくからよろしくね!」
それぞれの返答を確認した後、俺達は部室から出て1年生組を解散させた。
「先生、部室の鍵って持ったままでもいいんですか?」
「えぇ、放課後また使うなら持ったままでもいいんじゃないかしら」
すると、恵が少し考えてから話出す。
「和樹君、放課後すぐに瞳ちゃん達と帰るのよね? それじゃ放課後はもう部室に来ないんじゃない?」
「……あ、そっか。それならもう鍵は返さないとな。それじゃ樹と恵は先に教室に向かってくれ。俺は鍵返してから教室に行くよ」
「わかったわ」
「了解した!」
2人の返答を聞いた後、俺は高橋先生と一緒に職員室へと向かう。
「……なんだか山守、楽しそうね」
「……え、そう見えますか?」
「えぇ、何だか生き生きしてるように見えるわ」
俺は高橋先生に言われてハッとする。
「……そうですね。俺も昔、親戚のおじさんに自分の問題を解決して貰った事があるんです。それが、人の為に行動できる活力になっているんだと思います」
「ふふ、良い考え方ね。そんな山守が考えた部活が出来て私も良かったなって思うわ」
「……あ、ありがとうございます」
俺は不意に高橋先生から言われた事に照れつつも職員室へと到着して中に入る。
「さ、山守も早く鍵を返して教室に戻りなさい」
「はい!」
俺はすぐさま部室の鍵を返却し、自分の教室へと急いで向かうのだった。
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