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■52 会敵

俺は尾行されていた事なんて想像もしておらず、動揺(どうよう)を隠せずにいた。


『……神楽耶も気づかなかったのか?』

『ごめんなさい。……私は和樹君の周辺の事しか察知できないんです』

『そっか……。わかったありがとう』


邪念を振り払うように顔を左右に振り、金髪セミショートの不良女子に視線を戻す。


「何で……尾行なんてしていたんだ?」


俺は声を(しぼ)り出すように(はっ)する。

金髪の不良女子は愛花の手を放して話始める。


「街中で見かけた。ってのが理由よ。豊崎のやつがまたクラスの園田って子とつるんでいたから、園田って子をシメにいこうとしたらあんたたちが尾行しているのが見えて、面白そうだからついてきたってわけ」


俺達がいなかったらまた園田さんに悪さをされていた事を知り、少なからずホッと胸を撫でおろす。

どうやら俺達の狙いにまだ気づかれていないようなので、俺はこいつらが何をしてきたのかを知らないふりをして質問する。


「何で園田さんにそんなことしようとするんだ?」

「理由なんて簡単よ。楽しいからに決まってるじゃない」

「楽しい? 楽しいのはお前達だけだろ」

「それで何か問題ある? 面白いわよ、豊崎が仲良くした相手を痛めつけていくと、あいつ自分から身を引いて孤立していくの。見てて笑っちゃうわ」


話せば話すだけ俺達とは全く違う価値観を持っている事が分かる。


「何で豊崎にそんな事をするんだ」

「理由なんて忘れたわ。面白いから続けているだけ」

「……なんだよ、それ」


行動原理(げんり)が理解不能すぎて眩暈(めまい)がしてくる。


「それよりか、さっきも妹ちゃんに聞いてたんだけど、なんであんたたちは豊崎達を尾行していたのよ?」


おそらく、それが聞きたくて俺達に接触(せっしょく)してきたのだろう。

当然の疑問なので俺は回答する。


「こいつが園田さんの事が好きだから俺達はそれに付き()っただけだ」


俺は(となり)にいた樹を(ゆび)さし、平然(へいぜん)と嘘をでっちあげる。


「ふ……私のあふれ出る愛情を(おさ)えてもらう為に付き()ってもらったんだ」


樹は瞬時(しゅんじ)に俺の意向を(さっ)してくれた。


「……気持ち悪」

「誉め言葉として受け取っておこう!」

「……ねぇ、リサ。もう遅いし、私たちも帰りましょうよ」

「うるさいわねジュリ」


どうやらリーダー格の名前はリサという名前のようだ。

よく授業をサボっているので名前を記憶していなかった。


「2人はこいつがしている事についてどう思ってるんだ?」


俺は取り巻きの2人に向かって話しかける。


「別に、カナミは面白いからリサに付き合ってるだけ」

「私は……同じもんよ」


髪に青色のメッシュが入っているカナミという子はリサと同じ理由らしいが、ジュリという名前の女子生徒は何か理由があるのか(うつむ)きながら言葉を(にご)す。


「1回だけ警告させてもらうが、これ以上……豊崎にちょっかいをかけないでくれないか?」

「は? 何であんたに指図されないといけない訳? 私達が何をしてどう過ごそうが勝手でしょ」


やっぱり言葉じゃ通じない相手のようだった。


「まぁ、いいわ。私も今日は尾行して疲れちゃったし、先にお邪魔させてもらうわね」

「……あぁ」


それから不良女子達は夜の闇へと歩いていった。




不良女子達が見えなくなったところで、俺は肩の荷を下ろす。


「……ふぅ……あ~びっくりした」

「まさか、私たちが尾行されているなんて思わなかったな」

「だな。……ってか樹、ゲームで尾行をやり尽くしていたんじゃなかったのか?」

「ふ、尾行されるゲームなんて存在しないのだ!」

「……そうかよ」


樹と軽口を叩いた後、俺は愛花に近づく。


「愛花、一人にしてすまん。……大丈夫だったか?」

「あ……はい! 私は大丈夫です。……あと、兄さん」


すると、愛花はスマホを取り出す。


「……実はずっと音声を録音していたんです」


すると、後ろから樹も愛花に合わせて話してくる。


「愛花ちゃんもか……私も実はずっとカメラで録画していたぞ」

「……へ? さっきのやり取りをか?」

「はい!」

「その通りだ!」


2人を交互に見て、俺は空いた口が(ふさ)がらなかった。


(たくま)しすぎるだろ二人とも! 樹、すぐ見せてくれ!」

「あぁ、構わない」


樹はそう言いながら先ほど、録画した動画を再生し始める。


「おぉ……! バッチリとリサ達が画面に映っている状態じゃん! それに、自分達の犯行を証言してるし、これ物的証拠になるんじゃないのか!?」

「お、そうなのか? やったな和樹!」

「やったのは樹だろ! 大したもんだ」


続いて愛花の録音した音声も確認する。


「……うん、こっちもしっかり俺達のやり取りが残されているな。ありがとう愛花!」

「いえ、兄さんが音声を残すように園田さんに話していたので、私もすぐに音声を残せるように設定しておいたんです」

「さすがだ愛花!」


今すぐ抱きしめてよしよししてあげたい。


「よし、それじゃ温かい飲み物飲んで帰るとするか」


俺は買い物袋に入っている暖かい飲み物を取り出して愛花に手渡した。


「ありがとうございます!」


自分の分も取り出して飲み始める。

横目で樹もコーヒーを一気飲みしていたが、気管に入ったのか思いっきり()き出していた。


「……何してんだよ」

「私も少々興奮(こうふん)気味(ぎみ)のようだ……早く帰って戦場に戻るとするか」

「……ゲーム好きだよな、本当に」


夜空を見上げて俺は一息つく。


「……よし、今日手に入れた証拠を明日、皆に共有しておこう、話はそれからだ。樹、今日はありがとうな。お前に頼んで本当に良かったよ」

「何、お安い御用だ。これからも何かあればどんどん頼むよ良い!」

「そうさせてもらうよ。それじゃ途中まで一緒に帰ろうぜ」


それから途中まで3人で帰り道を歩いていった。




途中で樹と別れた後、愛花と2人っきりになる。


「愛花、今日は怖い思いをさせて悪かったな」

「いえ! 今日は兄さんと普段しないような事を一緒に出来て楽しかったですよ?」

「まぁ……結果的にはうまくいったけどな。俺の油断(ゆだん)で愛花に危害(きがい)が出る可能性もあったんだ。これからは慎重(しんちょう)に行動していこうと思う」

「……兄さん」


愛花は少し前に()け出し、俺の方を振り返って前かがみになる。


「……今日の兄さん、すっごくカッコよかったですよ」

「……あ、ありがとう」


ニコっと笑顔で恥ずかしい事を言ってきたので、照れながら俺はそっぽを向く。


「ふふ……さ、早く帰りましょう! 今晩は美味しいご飯を作りますね!」

「わ、わかった。……いつも美味しいご飯だけどな」


俺はそう(つぶや)きながら、愛花の背中を追いかけた。

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

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