■50 接近
やる気に満ちたみんなの掛け声が鳴りやんだ後、俺はすぐさま行動に移す。
「恵、園田さんって確か図書委員だったよな?」
「そうね、確か放課後はよく図書室にいるはずよ」
「よし、今から図書室に行ってくる!」
「え! 今から?」
「あぁ、急に恵が絡んできたら園田さんも驚くだろ? 俺が事前に俺達の狙いを園田さんと共有しておくんだ」
「なるほどね。……私も一緒に行ってもいい?」
「丁度いい。皆にも園田さんの顔を覚えておいて貰いたいし、恵と一緒に図書室に同行してほしいんだけどいいかな?」
「問題なかろう。私も同行させていただく!」
「はい兄さん! 一緒にいきましょう」
「……ご一緒します!」
「はーい!」
「わかりました和樹さん!」
それぞれの返答を確認すると、俺は高橋先生に視線を向ける。
「それじゃ、俺達はこれから図書室に行ってきます。……部室って開けたままでも大丈夫なんですか?」
「えぇ、帰る前に鍵を閉めて職員室に返してくれれば問題ないわ。……豊崎の件も頑張りなさい。それと、私達教師の協力が必要になったらいつでも相談しなさいよ」
「分かりました! ありがとうございます。その時は相談させて頂きますね」
俺は高橋先生にお礼を言うと、皆で部室を出て図書室へと向かった。
2階へ移動し、図書室の入り口前まで到着する。
「まずは俺が先に入るから、皆はタイミングをみて入ってきて。そして、俺が合図をしたら集合してくれ」
皆が頷くのを確認すると、俺は図書室へと足を踏み入れる。
「……お邪魔します」
中に入り園田さんを探すと、返却カゴに入った本を本棚に戻す作業をしているのを確認する。
俺はすぐに園田さんの方へと向かった。
「こんばんは、園田さん」
「……え? 山守君……ですか? あの……図書室に来るなんて珍しいですね」
園田さんは俺に気付くと手に持っていた本をカゴに戻す。
彼女は園田瞳っていう名前で、おかっぱで肩まで伸びたモミアゲにセミロングの後髪を小さく括っている。
恵と1年の頃よく一緒にいた女子生徒だ。
「うん。ちょっと園田さんに確認したい事があったんだけど、今時間少しいいかな?」
「……えぇ、構いません」
俺達は近くにあったテーブルに着き、向かい合う形になる。
「……それで、どうかしたんですか?」
「うん。単刀直入に言うけど、俺は恵と園田さんの関係を修復したいと思っている」
「……え、恵ちゃんとの? でも……それは」
園田さん俯き、悲しそうな顔をする。
「大丈夫、事情は全部恵から聞いてるよ。今日はその問題を解決する為に園田さんに協力して貰いたくて来たんだ」
「……協力って、私……何をすればいいんでしょうか?」
「簡単なことだよ。1年前みたいに恵と仲良く学校で過ごしてほしい」
園田さんはポカンと呆気に取られた顔をする。
「……仲良く、ですか?」
「うん。俺達がしたいのは恵に嫌がらせをしてくる不良女子達の決定的な証拠を掴むことだ」
「……でも……なぜ、山守君はそこまでしてくれるんですか?」
「俺は学園生活奉仕部っていう新しく部活を作ったんだ」
「……部活、ですか」
「あぁ。学生の悩みを解決する為の部活で、今回恵からの依頼で恵と園田さんが抱えている問題を解決したいと思って行動しているんだ」
「……そうだったんですね」
園田さんの表情が少し明るくなるのを感じる。
「うん。だからこそ、園田さんの協力も必要なんだ。俺達が欲しいのは相手が嫌がらせをしてくる決定的な証拠。それにはトリガーとなる行動を恵と園田さんにしてもらう必要があるんだ」
「……わかりました。……でも、もし恵ちゃんと一緒にいる所を相手に知られ、私がまた狙われるようになったら……」
園田さんは昔の事を思い出しているのか、小刻みに震えていた。
「それは俺達が絶対に阻止をするから安心してほしい! それに、その場面を証拠として残して先生に渡せば問題提起してもらう手筈になっている」
「……本当ですか?」
「あぁ、本当だ! 俺達が欲しいのは物的証拠、嫌がらせがあった事実なんだ」
「……わかりました。他に……私に出来る事はありますか?」
「ありがとう園田さん! そうだな……もし、園田さんが相手と遭遇した時、俺達もすぐに駆け付けるけど……園田さんにも物的証拠を残してほしいんだ」
「……あの、物的証拠って具体的にどういったものですか?」
「あぁ、俺達は映像や写真を撮ろうという話になっているんだけど、相手と遭遇している園田さんが写真や動画を撮影するなんてバレバレだよな。だからこそ、園田さんに残してほしいのは相手の音声だ」
「音声……ですか」
「うん。スマホで音声を残す機能があるでしょ? もし相手と遭遇したらその機能を使って相手の音声を物的証拠として残してほしいんだ」
園田さんはポケットからスマホを取り出し、音声録音機能を確認する。
「……確かに、録音できそうですね」
「うん。でもさりげなく録音するようにしないと、相手にもバレてしまうからね。すぐに録音が出来るようにスマホ側で設定しておくといいかも」
園田さんはスマホの操作をし終えると、俺の方に視線を向ける。
「……これで私も準備ができました。山守君……ありがとうございます」
園田さんは深く頭を下げて感謝を伝えてくる。
頃合いだと思った俺は周りに聞こえるように話す。
「それじゃ……皆も出てきてくれ」
俺が声を張ると、それぞれ密かに図書室に侵入していた部員たちが俺の後ろに集まってくる。
「俺達、学園生活奉仕部が全面的にバックアップするから、よろしくね園田さん」
少し驚いていた園田さんは、微笑みを浮かべる。
「よろしくお願いします山守君。……それに皆さんも」
すると、恵が一歩前に出る。
「瞳ちゃん……改めて、よろしくね」
「恵ちゃんも……よろしくお願いします」
2人は微笑み合いながら言葉を交わす。
この当たり前のやり取りをこれからも出来るようにする為にも、俺は何としてでもやり遂げようと心に誓った。
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