■47 証言者
教室に戻ると次の授業の先生も入ってきたばかりだったので、俺は急いで席に戻る。
「……ふぅ、間に合った」
それから3限・4限と授業は終えて昼休みの時間になる。
鞄から愛花の特製弁当を取り出していると樹が席に近づいてきた。
「あ、そうか。和樹は今日も愛花ちゃんの弁当だったな!」
「良いだろぉ? あと今日も、じゃなくてこれからずっと、だからな」
「いつ見ても羨ましい限りだな!」
「……樹も料理を練習して弁当作ってくればいいんじゃないか?」
「はは! 私に料理をさせたら食材が可哀そうだ!」
「……どれだけ料理が下手なんだよ」
「ふ、だから私にはコンビニと学食があれば十分さ!」
樹と雑談をしていると弁当箱を持った恵が近づいてくる。
「何話してるのよ二人とも」
「ん? 樹に弁当を作らせるように説得してたところだ」
「ふぅん……で、学食には行かないの?」
「……確かに、呑気に樹と雑談なんてしてる暇なかった!」
恵に言われて愛花を待たせている事を思い出す。
「おい、早く学食に行くぞ樹!」
「いやいや、私はいつでも準備万全だったんだが」
「いいから、早く!」
「わ、わかった」
俺は弁当を持って教室の出口へと向かう。
だが、立ち止まっていた恵に俺は気付いて振り返る。
「あい、恵も早く行くぞ!」
「……えぇ!」
「ってか恵は今日お弁当なのか?」
「そ、そうね。……気まぐれで作ってみたの」
すると、弁当を後ろに隠す恵。
「ふ、豊崎まさか作った弁当の中身を見られるのが恥ずかしいのではないか?」
「う、うるさいわね。別にそんなんじゃないわよ!」
「まぁ俺も中身は気になるが。まずは学食に急ぐぞ!」
「了解した!」
「えぇ!」
俺達3人は教室を出た後、急いで学食へと向かった。
学食には当然ながら愛花達が待っていた。
「愛花ー」
俺は手を振ると、愛花が手を振り返してくる。
「すまん、話してたら遅れたよ」
「いえ、そんなに待っていませんでしたから問題ないです!」
「そう? 神崎さん達も待たせてごめんね!」
「いえ、和樹さん。気にしないでください」
「そうだよ! 実は私たちもさっき来たばかりだから!」
「……はい、4人で昨日の思い出話が盛り上がっちゃいまして、主に動物園の私の豹変っぷりについて……」
梓ちゃんは照れつつも思い出しながら話した。
「あはは。そっか、それじゃ席も無くなっちゃうし、中に入ろうか」
俺達は学食に入った後、座れる席があるかを見回して空いているテーブルの方へと向かう。
テーブルに到着すると正面に愛花、隣に恵が席に着く。
「それじゃ俺達は席見てるから、買ってきなよ」
「了解した! 席の守りは任せたぞ」
「あぁ」
樹や愛花以外の1年生組は学食の食券売り場まで向かっていく。
俺は自分の弁当の蓋を開けて先に愛花の特製弁当を拝むことにした。
「うん! やっぱり愛花の弁当はめちゃくちゃ美味そうだ!」
「ふふ、ありがとうございます兄さん」
俺は恵の弁当に視線を移す。
「恵の弁当かぁ。確か花見の時にちょこっと食べたっきりだな」
「……もしよかったら和樹君、少しだけ食べてみる?」
「え、いいのか?」
すると、恵は弁当の蓋を開く。
「おぉ、花見の時にも思ったが恵ってめっちゃ可愛らしい弁当に仕上げてくるよな!」
「……ま、まぁね。作り始めたら変に拘っちゃうのよ」
小さな海苔が巻かれたおにぎりに色とりどりのオカズが設置されており、非常に美味しそうに仕上がっている。
「それじゃ無難におにぎりでも頂こうかな」
恵の弁当からおにぎりを箸で掴み、弁当の蓋の上に置く。
「私もあげたんだから、和樹君も何か頂戴よ」
「お、そうだな。それじゃ俺もおにぎりをあげよう!」
俺と恵の弁当からおにぎりを交換し終えた時、樹や1年生組が続々と席に戻ってくる。
皆が席に着いたのを確認すると俺達は頂きますをしてそれぞれが食べ始めた。
俺も早速恵から貰ったおにぎりを食べてみる。
「うん! やっぱり恵の弁当も美味いな」
「ん? 和樹、豊崎から弁当分けて貰ったのか?」
「あぁ、樹たちが買っている最中にちょっと分けてもらったんだ」
「な、恵」
俺は恵にグッドサインを送ると、恵は照れながらそっぽを向く。……なぜ恥ずかしがる!
「……あの、和樹さん! 私も明日からお弁当作ってきたら食べて頂けますか?」
「お、梓ちゃんもお弁当デビューか! いいね、是非食べてみたいな」
俺は梓ちゃんに笑顔で返答する。
「弁当かぁ……料理が作れるのっていいな」
「神崎さんも練習すれば作れるようになるさ。愛花や梓ちゃんもずっと料理を作り続けてきて上手くなったんだから」
「……そうですね! 私も和樹さんに食べて貰えるように頑張ります!」
「おぅ、楽しみにしてるね」
すると、苦笑しながらアリサちゃんが話かけてくる。
「みんな頑張るんだねぇ、私は料理作るのって大変そうだし、お母さまが作ってくれるからあまり作ろうって気にならないんだよね~」
「確かアリサちゃんのお母さんが作った弁当って花見の時に食べたけど、めっちゃ料理美味かったよね?」
「そうなの! 本当に美味しいの!」
「だよな。あぁ……また食べてみたいもんだ」
「それなら私もお母さまにお弁当を頼んでみるから、愛花のお兄さんも食べてみてよ!」
「お、いいねぇ! 是非食べてみたいかも」
「絶対だからね!」
それからしばらくは皆で雑談をしながらお昼ご飯を食べ続けていった。
俺は愛花特製の弁当をあっという間に食べ終わり、幸せな満腹感に酔いしれていた。
「……さて、満腹感を楽しんだところで、今日の放課後だが、皆で生徒会室に向かおうと思う」
皆が頷き返すのを確認して、俺は話続ける。
「神崎さん、前から言っていた通り。放課後、生徒会長に部活動の活動実績の証言をお願いしたいんだけど、大丈夫かな?」
「はい。もう話す内容は決めています!」
「お、気合が入ってるね。もし、神崎さんの証言で部活が認められなくてもまだ4月末まで時間があるし、気を取り直していけば全然大丈夫だから、気にせず会長と話したい事を話すと良いよ」
「わかりました! 私が伝えられる事全部、会長にぶつけてみますね」
「うん。お願いね」
「それじゃ皆、放課後は昇降口に集合でよろしく!」
「「「はい!」」」
「おっけー!」
「わかったぞ!」
「えぇ、わかったわ」
それぞれ返答を返してくる。
程なくしてお昼時間も無くなってきたので、俺達は1年生組と別れて教室へと戻っていった。
教室に戻った後、放課後までの授業は上の空で過ごしていく。
部活の事を考えていたら、あっという間に放課後になる。
「よし! 樹、恵! 昇降口に行くぞ」
「あぁ準備万全だ」
「私もよ、行いきましょ」
俺達は3人で昇降口へと向かった。
「おまたせ、愛花」
昇降口には1年生組が待機しており、合流を済ませる。
「それじゃいよいよ、生徒会室に向かうけど準備は良い?」
皆が頷くのを確認した後、俺達は生徒会室へと足を向けた。
生徒会室に到着し、俺は扉を開けて中に入っていく。
「失礼します」
俺に続いて部員と神崎さんが続々と中に入ってくる。
「……おやおや、今日は勢ぞろいで何の御用でしょうか?」
すると、奥の机から会長が立ち上がる。
「はい。今日は俺たちの部活動の活動実績を証言しにきました!」
「そうでしたか。仮決定してまだ間もないのに、活動熱心な事ですね」
会長は手前のテーブルに移動すると他の生徒会員は立ち上がり、会長に席を譲る。
「それでは、その証言者をご紹介くださいますか?」
「はい。……神崎さん、お願いできる?」
すると、神崎さんが一歩前に出る。
「初めまして、1年の神崎麗子と申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ初めまして、3年の九条美咲と申します。よろしくお願い致します。……それではそちらに座ってください」
会長は対面の席に手を添えて、座ることを神崎さんに促した。
「はい」
神崎さんは会長の言われるがままに椅子に座り、会長と神崎さんは向かい合う形になる。
「それでは……始めましょうか」
生徒会室には独特な緊張感が教室全域に広がっており、俺達や他の生徒会員はもう会長と神崎さんの邪魔はできない雰囲気になっていた。
それほど、会長から発せられるプレッシャーはとてつもないものだった。
……神崎さん、頑張ってくれ!
「面白かった! 続きが見たい!」
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