■44 試着鑑賞と帰宅
周りの視線が次第に痛くなり始めてきたので、俺は愛花が入っていった試着室の傍まで移動する。
「……愛花?」
「……え、兄さん? どうかしましたか?」
愛花は試着室の中から驚きつつも返答してきた。
俺は試着室のカーテンに顔を近づけて小声で呟く。
「……すまん、周りの視線が痛いから早く着替え終わってくれ!」
「あはは……わかりました。もう少し待っててくださいね」
「悪いが頼む!」
俺はいかにも付き添い感を出しながら試着室の外で待つことにした。
程なくして、皆の試着が終わりカーテンが次々と開いていく。
「兄さん! お待たせしました。……どうでしょうか?」
愛花は先ほど俺が妄想した通りにメイド服っぽい服を着こなしており、妄想以上に可愛く仕上がっていた。
「……っ! 愛花、最強に可愛いぞ! 是非、その服で料理とか家事をしてくれたら嬉しいぞ!」
俺はグッドサインを出しながら愛花に力説する。
「あははっ……ありがとうございます兄さん!」
愛花はその場でグルっと周る。
「……そこまで言うなら、これ買っちゃおうかな?」
「いいのか! 是非頼む!!!」
これから自宅でメイド服を着た愛花にお世話してもらえる体験が出来ると考えるとテンションが爆上がりしてしまう。
すると、隣で肩出しセーターとミニ丈スカートに着替え終わった恵に視線が向かう。
「お! 恵もめっちゃ似合ってるじゃん! 肩とか足の露出が多めだけど全然問題ないな、むしろ他の男性の視線を釘付けてしまうぐらいの魔性の威力はあると思うぞ!」
俺はテンションが上がったまま恵に思った感想をまくし立てる。
「あ、ありがとう……。私も気に入ったし、これ買おうかな」
「いいね! あと、ロングソックスも履くと太ももが強調されて、更にいい感じになるかもな」
「……ロングソックスね、ちょっと探してくるわ!」
「おぅ」
恵は試着したまま、ロングソックスを探しに行った。
それから梓ちゃんとアリサちゃん、神崎さんの方へ視線を向ける。
「……麗子ちゃん、とても似合っています!」
「やっぱり私の言った通りだったわね! とってもお似合いよ麗子!」
「ありがとう! 2人もすっごく似合ってるよ!」
それぞれが服の感想を言い合っていたので俺も近づいてみた。
「やっぱり神崎さんには純白の服が合ってるね。とても似合ってていいと思うよ!」
「……和樹さんっありがとうございます! もうこれ買いますね!」
「あはは……神崎さんは決断が早くていいね」
すると、隣にいた白いTシャツに黒いデニムワンピースを着た梓ちゃんが恐る恐る尋ねてくる。
「……和樹さん……あの、私の服もどうでしょうか?」
「うん! 梓ちゃんは大人しい見た目だから黒いワンピースでも全然問題ないね。むしろ白と黒の組み合わせがより梓ちゃんの魅力を引き立たせてると思うよ!」
「……あ、ありがとうございます!! 私も白と黒の組み合わせ大好きなんです!」
「ね! ね! 私はどうかな?」
めっちゃカラフルな服装をしたアリサちゃんも目を輝かせながら尋ねてくる。
「そうだな。カラフルだけどバランスよく着こなしているって感じでとても似合ってると思うな! まさにアリサちゃんっていう服装ですごく良いと思うよ!」
「愛花のお兄さんも分かりますか! そうです! このカラフルさでインパクトを与えて色のバランスを整えておくことで目を疲れさせないようにしてるんです!」
「そんな狙いが……いや、服って奥深いんだな」
「へへぇ! だからこそ服って選ぶのが楽しいんですよ!」
「……なるほどね」
それからもしばらくは女性陣の試着などに付き合っているとあっという間に時間は過ぎていった。
俺は買い物袋を抱えた女性陣を見ながらショッピングモールの休憩スペースで呟く。
「……女の子の服選びに時間が掛かる理由が分かった気がする」
「あはは……兄さん、お疲れさまでした」
「ありがとう愛花。……俺も楽しかったし全然問題ないよ」
「和樹さん! 今日は服を選んで頂いてありがとうございます!」
すると、神崎さんがお礼を言ってくる。
「いや、神崎さんのお役に立ててよかったよ。今日買った服でこれからも愛花や他の友達と遊ぶ時に役立てるといいよ」
「はい!」
ニコっと微笑む神崎さん。
神崎さんにもすっかり笑顔が染みついたようで安心する。
「……そろそろ日が暮れそうね」
すると、恵は外を眺めつつ呟いた。
「だな。……そろそろ解散かな」
「ですね。兄さん、今日は付き合ってくれてありがとうございます」
「……私も、動物園に一緒に行けてとても嬉しかったです……!」
「うんうん! 私も楽しかった!」
「俺も楽しかったよ! それじゃそろそろ帰るとしますか」
皆は元気よく返事を返してくる。
それから俺達はショッピングモールを出て帰り道を進んでいく。
「この後、俺は愛花と買い物だからここでお別れだね」
「……それでは和樹さん。失礼します、また明日です!」
「まったねー!」
梓ちゃんとアリサちゃんがお別れを言うと、神崎さんは深々とお辞儀をしてくる。
「和樹さん、お泊りから動物園に買い物……すっごく楽しかったです! また明日学校でお会いしましょう!」
「また明日ね! ……あ、あと神崎さん、明日は放課後に生徒会室に行く予定だから会長と話す内容をある程度は考えておいてね!」
「わかりました!」
1年生組と一通りお別れを済ました後、恵が話しかけてくる。
「和樹君、今日は私も……すっごく楽しかったわ。たまにはこうして遊ぶのも良いわね」
「あぁ、恵が良いなら何度でも誘うから覚悟しておけよ。それじゃ、また明日な」
「えぇ、また明日ね和樹君」
愛花以外の女性陣とお別れを済ました後、愛花と俺は買い物に向かう事にした。
スーパーに向かっている途中で愛花と今日を振り返る。
「……今日はあっという間だったなぁ」
「……えぇ。すっごく楽しかったです!」
隣を歩いている愛花はニコっと微笑む。
「……また、今日みたいにみんなで遊べるといいな」
「ですね。……その時は麗子ちゃんも一緒ですよね?」
「もちろんだ。部活の活動が終わっても神崎さんとの関係は今のままで何も変わらないさ」
俺達は初め部活動の一環として神崎さんと交流を深めていたが、そんなことはもう関係ないだろう。
「何はともあれ、明日生徒会から部活の承認を正式に貰えたら皆でまたお祝いでもしよう」
「はい、その時は麗子ちゃんを部活に誘ってもいいでしょうか?」
「あぁ! 神崎さんが望めば部員は絶賛募集中だ」
「わかりました。では、その時に麗子ちゃんに聞いてみますね!」
「よろしく頼む」
そんな話をしているとスーパーに到着する。
俺は愛花に付き添って多くの買い物袋を抱えた状態で自宅へと帰っていくのだった。
「ただいま」
「ただいまです」
自宅に到着した俺達はただいまと言って家へと入る。
靴を脱いだ後、リビングに移動して荷物をテーブルに置く。
「……ふぅ……少し、休憩するか」
「……そうですね。今日はいろいろ動き周って疲れちゃいました……」
俺達は椅子に座って脱力する。
長いようで短かった濃厚な1日が終わり、お互いに充電が着れたように椅子にもたれかかっていた。
「……愛花、さっそくで悪いが今日買ったフリフリのついた可愛い服を着てくれると嬉しい……」
「え! 今からですか?」
「あぁ……あの服を着て料理する愛花が見たいんだ!」
脱力しながら俺は愛花に力説する。
「兄さんが言うなら……わかりました! ちょっと着替えてくるので待っててくださいね」
「やった! ありがとう愛花」
「ふふ、それじゃ行ってきますね」
テーブルの下で小さくガッツポーズをしながら俺は愛花を見送った。
何事も言ってみるもんだな。
それから俺は愛花がメイド服で下りてくるのをワクワクしながら待つのであった。
「面白かった! 続きが見たい!」
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