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■41 動物園②

「……でも、改めて恵から名前で呼ばれるのって何か恥ずかしいな」


俺は気まずい雰囲気を払拭(ふっしょく)しようと試みる。


「……っ」


恵はまだ名前で呼ばれ慣れていないのか、頬を赤くして顔を伏せていた。


「梓ちゃんからは名前で呼ばれ慣れてるし、最近だと神崎さんからも名前で呼ばれるようになったけど、恵から呼ばれるのは少し新鮮だよ」

『……っ!』


神楽耶は自分を指さして無言の圧力をかけてくるがスルーしておこう。

恵は邪念を振り払うように顔を左右に振ってから話始める。


「そう、そこよ! 結構和樹君の事を名前で呼んでる子多いじゃない? ちょっと前から気になっていたのよね」

「まぁ……梓ちゃんに至っては単純に愛花と被らない為だし、神崎さんに至っては……え~っと」


めっちゃ言えない理由だったので何かほかの理由を考える。


「ともかく! 今日から私も和樹君って呼ばせてもらうからよろしくね」

「あぁ、構わないが……確か恵ってクラスの女子から名前で呼ばれた事ってあまりないよな?」

「……えぇ、名前で呼ばれるぐらい友好的になれるまで付き合えないからね。やっぱり表面上だけの付き合いになってしまうのよ」

「それも結構辛いな。昨日、話してた標的にされるのに関係してるんだろう? どこかのタイミングで根本的な対処をした方がいいだろう」

「そうなんだけど、主犯格が分かってても証拠がね……」


恵は俯き、暗い顔をする。


「おいおい……誰に相談してると思ってる? 俺達は学園生活奉仕部のメンバーだぞ? 学生のお悩みを解決する為の部活だ」

「……まだ仮だけどね。っていうか部員の悩みでもいいのかしら?」

「当たり前だろ。自分の問題も解決できない人が他人の問題を解決できるはずがない」

「……和樹君にしては良い事言うじゃない」

「だろ? ってか茶化すなよ」

「ごめんごめん。それじゃ部活が正式に生徒会から認められたらお願いしようかな?」

「あぁ……任せてくれ!」


お悩み相談の先約を付けたところで俺はスマホを開く。


「……それにしても、みんな遅いな?」

「確かに、結構待ったんじゃない?」


俺は愛花にNINEアプリでメッセージを送ってみた。

-------------------------------

『おーい、飲み物。どこまで買いにいったんだよ?』

『あ、すみません! 途中で動物のふれあい広場がありまして、梓ちゃんが夢中になってウサギさん見ていたら時間が……』

『あ~……なるほどね』

『今すぐ、戻るのでもう少し待っててくれますか?』

『いや、俺の方からそっちに向かうよ。愛花達は動かないで待っててくれ』

『……わかりました! すいませんがお待ちしていますね』

-------------------------------

愛花とのやり取りを終え、事情を恵に知らせる。


「……なるほどね。それじゃ早く行きましょうか」

「だな」


俺達は丸太椅子から立ち上がり、愛花達が歩いて行った方向へと足を進めていった。




程なくすると、動物のふれあい広場っぽい看板が見えてきた。

(ちょう)分かりやすく梓ちゃんがガラスで(おお)われている広場にいるウサギをニヤニヤしながらのぞき込んでいた。


「たしかに、外から中が丸見えだな。嫌でも視界に入ってくる」

「そうね。……でも可愛いわねウサギ。私も触ってみたいかも」


すると、愛花達は手を振りながら俺達に近づいてくる。


「すみません兄さん! 梓ちゃんウサギさんに夢中で……」

「あぁ、見ていていろいろ察したよ。どうせだし、入って直接触らしてもらおう」

「ですね! あと、お二人のお飲み物です。どうぞ」


愛花から俺と恵は飲み物を受け取る。


「ありがとう。それじゃ入るか。……えっと、入り口はどこだ?」

「多分、裏側じゃない」


恵はそう言うとガラス越しに見える入り口っぽい箇所を指さしながら答える。


「確かに、あそこっぽいな。グルっと回って入ってみよう」

「そうね」


俺は梓ちゃんを呼ぶために近づく。


「梓ちゃ~ん」

「はぁ……ウサギさん……可愛いですぅ……」


なるほど、これは愛花達も苦労しただろう。

俺は梓ちゃんの肩に手を置き、元気よく問いかける。


「梓ちゃん! ウサギさんを直接触る為に中に入らない?」

「ふぇっ! ……え、和樹さん!? なんでここに……?」


瞬時に赤面する梓ちゃん。


「みんなも待ってるぞ?」


俺は後ろに待機していた恵と1年生組の方へ手を向ける。

梓ちゃんも状況を次第に理解し始めていく。


「……すみませんでした! ウサギさんに夢中で周りが見えなくなっていました」

「あはは……梓ちゃんの面白い一面(いちめん)が見れて楽しかったですよ?」

「見ていて楽しかったです!」

「だね~! むしろ私たちが梓ちゃんを見て楽しんでた感じだし!」

「俺も夢中になる梓ちゃんを見れて楽しかったし、これで気を取り直して中に入って直接触ってみようか」

「……はい!」


困惑(こんわく)していた梓ちゃんの表情が笑顔に変わり、俺達は動物のふれあい広場の入り口へと足を進める。


「ここかな?」

「みたいね」


グルっと回ると広場の入り口を見つけることが出来たので、俺達は靴を脱いで中に入っていく。


「いらっしゃいませ!」


すると定員の方が挨拶をしてくる。


「すいません。6人なんですけど」

「かしこまりました! 6名様ですね! このふれあい広場ではウサギと触れ合う事が出来る場所となります。そこに餌も販売いますので触れ合いながら食べさせてあげることもできますよ!」

「ありがとうございます」


俺は軽くお礼を伝えると、言われていた餌の販売場所へと向かう。


「基本的には生野菜だけなんだな」

「……その野菜を夢中で食べるウサギが……また可愛いんです!」

「そうなんだ! ……それじゃ人数分買っておくか」


梓ちゃんが力説をしていたので、人数分の餌を買った俺は皆に分け与える。

荷物を専用カゴに入れ終わった俺達はバリケードを通ってウサギが野放しにされている空間へと足を踏み入れた。


「へぇ、ガラス越しに見てたけど、内は結構広いんだな」


そんな事を言っていると梓ちゃんは一目散(いちもくさん)にウサギが群衆(ぐんしゅう)で生息している場所へと向かっていった。

他の1年生組も梓ちゃんについていく。


「はは、今日は梓ちゃんの面白い一面が見れて楽しいな」

「私もあれだけ夢中になれるものがあればいいんだけどね」


恵も苦笑しながら1年生組を見守っていた。


「恵もウサギと(たわむ)れてこいよ。俺はここにいる一人狼っぽいウサギと(たわむ)れているから」

「……そうさせてもらおうかしら!」


すると、恵も小走りでウサギが3、4匹まとまっている方へと向かっていった。

恵もどうやらウサギと(たわむ)れたかったようだ。


俺は1年生組の方に視線を移すと、梓ちゃんが複数匹のウサギと(たわむ)れていた。


「……こう見ると小動物が小動物と(たわむ)れている風にしか見えないな……」


見ていてなかなか面白い。

愛花もウサギを抱きしめながら梓ちゃんの様子を笑顔で見守っている。

……俺はそんな愛花に抱きしめられているウサギに対して嫉妬をしていた。


「……いや、動物に嫉妬してどうする」


恵の方を見ると、緩んだ笑顔をしながらウサギに餌を与えている。

まんざらではない様子の恵。

俺もしばらくはこの一匹狼のウサギと状況観戦をして楽しむとするか。

「面白かった!  続きが見たい!」

「今後どうなるの!?」


と思っていただけましたら

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なにとぞ、よろしくお願いいたします。

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