■40 動物園①
家から出た俺達は、昨日決めた動物園へと向かった。
まずは最寄り駅から動物園の最寄り駅まで移動し、降りた後は動物園へ続く道を歩く。
移動している間、通りすがりの男子たちが振り返って隣を歩いている愛花を見てくるあたり、兄として非常に鼻が高い。
「もう……そろそろ到着ですね! 皆さんも既に動物園の入り口で待機しているようです」
「りょーかい!」
愛花は豊崎達とスマホで連絡を取っていたようでスマホを見ながら到着する旨を伝えてくる。
動物園の入り口が見えると、豊崎達が視認できる。
「おーい! おまたせー!」
俺は手を振りながら大声に呼びかけると豊崎達も俺たちに気付き手を振ってくる。
合流した俺は改めて皆を見回すと誰もがとても可愛らしい服を着ていた。
特に豊崎は普段とは違い、肩出しフリフリ付きのミニ丈ワンピースを着ていてめちゃくちゃ可愛い服だった。
俺は少し動揺したが、落ち着いて動物園の入り口付近を見ながら梓ちゃんに尋ねる。
「梓ちゃん、動物園ってあまり人がいないもんなのか?」
「……いえ、休日だともっと人がいると思いますよ」
「多分、今日が平日だからじゃないかしら。ほら、今日って私たちの学校だけ休みじゃない」
「あ、そっか。考えようにしては有難いな。だってほぼ貸し切り状態みたいなもんだし」
「貸し切り! やった! 早速入ってみようよ!」
「だね。入園時間も過ぎてるし、入場券を買って入ろうか」
テンションの上がるアリサちゃんに後押しされ、俺達は入場券を買う場所まで移動する。
俺たちは入場券を購入し、次々と動物園に入っていく。
動物園に入ると、梓ちゃんはいち早く駆け出して両手を広げて大きく深呼吸をする。
「はぁ…! いい空気です! 皆さん、どこから回りますか?」
梓ちゃんは高いテンションのまま振り返って尋ねてくる。
「あはは、梓ちゃんテンション高いね! ……そうだな。何から見て回りたい?」
俺は一緒に歩いていた豊崎や1年生組に尋ねる。
「そうね~。……キリン! ……と言いたいところだけど、こういう時って定番のものから見て回るのが通説じゃないかしら」
「ん~? 定番のものってなんだろう?」
アリサちゃんが考え込む。
「定番なもの……猿とか熊とかじゃないですか?」
と神崎さんが恐る恐る答える。
「……いいですね! それじゃ定番の動物から攻めていきましょう!」
梓ちゃんも乗り気なようで、初めは定番の動物を見て回る話に落ち着いた。
俺は案内板にある全体マップを見ながら目的地を探す。
「えっと……。うわぁ、結構広いな。油断するとすぐにはぐれてしまうかも」
「そうね。一応はぐれた時の落ち会い場所を決めておきましょ? 落ち会い場所はこの入り口でいいかしら?」
「……だな、はずれたらスマホで連携を取りながらこの入り口付近で落ち会うようにしよう!」
皆が頷くのを確認すると、俺たちは歩き出した。
まず最初に訪れたのは猿の楽園だ。
「梓ちゃんの言ってた通り、結構活発に動いているもんなんだね!」
「……えへへ、はい! このお猿さんには餌も与えることもできるんですよ!」
「いいねぇ……あ、確かに! 近くで餌が売られているね。ちょっと待っててよ」
俺たちは近くに売られていた与える用の餌を少量購入し、梓ちゃんに手渡した。
「……ありがとうございます和樹さん!」
梓ちゃんは餌を受け取ると他の女性陣に配っていく。
「……猿の餌は手のひらに餌を乗せて差し出すと食べてくれますよ!」
「はい! わかりました梓ちゃん!」
「何かどんどん私たちの方に群がってくるわね! ……必死というかなんというか。ちょっと面白いわね」
「どうぞ!」
「ほらほら~」
梓ちゃんを司令塔に据えて豊崎や他の1年生組が餌を与えていると、猿は柵などによじ登り順番待ちの状態になっていた。
「へぇ……やっぱり猿も順番待ちとかするんだな、人間に近い動物なだけはある」
俺はそう言いながら猿と戯れるみんなを写真に収めようとスマホを手に取る。
「はーい、みんなこっち見てー。ピースー!」
「……あ、はい!」
「とと……急ね。はい」
「和樹さん、ピース!」
「ピースピース!」
カシャッ――
しっかりと猿と戯れる女の子の図を写真に収める事ができた。
俺は写真をとる役割が意外にも楽しい事に気付く。
「よし、他にも俺がシャッターチャンスがあったらどんどん写真撮っていくからよろしく!」
「お願いしますね兄さん!」
「……ありがとうございます! 和樹さん!」
「和樹さん、ありがとうございます!」
「ありがと山守君。あとで私たちにも頂戴ね」
「あぁ、もちろんだ!」
すると、アリサちゃんが近づいてくる。
「どんな感じで撮れたんですか~?」
「ん? あぁ、はい。こんな感じ」
俺は写真を見せる為にスマホ画面を見せる。
「お、いい感じ~! 愛花のお兄さん写真センス抜群ですね!」
「あ、……ありがとうアリサちゃん」
褒められて不覚にも嬉しくなっていた俺がいた。
その調子で他のあらゆる動物を見て回っては写真に残していく。
そして豊崎の見たがっていたキリンの場所へと俺たちは到着する。
「お、豊崎が見たがっていたキリンがいるぞ!」
「ええそうね! ……やっぱりデカいわ」
キリンは近くにある木の葉をむしゃむしゃと食べており、非常にまったり過ごしていた。
「兄さん、今度は私が写真を撮るので豊崎先輩と横になってください!」
「お、そうか! ありがとう」
俺は愛花に言われるがまま、キリンを背に豊崎と隣になって写真を撮ることにした。
「ピース! ……豊崎?」
「……え、えぇ! ピ、ピース!」
豊崎は頬を染めて少し俯いて考え事をしていたが、すぐに元の状態に戻る。
カシャッ――
スマホの写真を撮り終えた愛花は視線を俺たちに戻す。
「はい! いいのが撮れました! 兄さんと豊崎先輩に後で送っておきますね」
「サンキュー」
「ありがとう愛花ちゃん」
ある程度歩いた俺たちは近くに木で出来た屋根付きテーブルがあったので少し休憩を取る事にした。
「いい感じの休憩スペースがあっていいな、ここ」
「ですね! それじゃ私たちは飲み物買ってくるので兄さんたちはここで待っててください」
「あ、それなら俺が行ってくるけど?」
「いえいえ、兄さんはゆっくり休んでいてください!」
そう言うと、1年生組は飲み物を買いに歩いていった。
必然的に俺と豊崎だけが残された状態となる。
「いろいろ回ったなぁ……キリンも見れたし、来てよかったな豊崎」
「……え、えぇそうね」
豊崎は少し緊張している様子だ。
「そういえば合流したときは言いそびれたけど、今日の服めちゃくちゃいい感じだな」
「え……あ、ありがとう。……だってそれは……」
豊崎の声が徐々に小さくなり後半部分を聞きそびれてしまう。
「あ、ごめん。ちょっと聞こえなかった」
「……いや、何でもないわ。ちょっと久しぶりに外で友達と私服でお出かけだったから張り切っちゃったのよ!」
「そっか。めちゃくちゃ可愛い服で驚いたよ。豊崎にもこういった服が似合うんだな」
「……どういう意味よ、それは」
「あ、すまん! 単純に似合ってるって事だ」
「……ふん。なら……私の事、名前で呼んでくれたら許してあげる」
「……へ?」
すると、急激に顔を赤くする豊崎。自分で言って恥ずかしくなってしまったようだ。
「あぁ……それぐらいなら。それじゃ……恵って呼ばせて貰おうかな」
「……わ、私も今度から山守君の事、和樹君って呼ばせてもらうわね!」
「ご、ご自由にどうぞ」
少し気まずい雰囲気が2人を包み込んだ。
「面白かった! 続きが見たい!」
「今後どうなるの!?」
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