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■39 早朝

俺は柔らかいものに包まれるような感覚を感じていた。

そして、それは(かす)かに暖かい。


俺はその気持ちのいい感覚をさらに求めようと手を伸ばす、すると柔らかいものを包むような感触が手のひらに広がる。

手のひらに広がる感触を楽しむように揉みしだき、感触を楽しんでいると次第に俺の意識が覚醒していく。


「……ん……ん!?」


カーテンの外は微かに明るかった。

それよりも驚きなのは、俺はアリサちゃんと梓ちゃんに抱き着かれて身動きが出来なくなっていた事だ。

かろうじて脱出できた片手の先には豊崎の胸があり、先ほどの柔らかい感触の正体が発覚する。


「……っ!!」


俺はすぐさま豊崎の胸から手を放し、急激に意識が覚醒する。

運よくまだ皆は起きておらず、天使のような寝顔で寝息を立てていた。


『あ、おっはようございます和樹君! 今日はお早いお目覚めですね!』

悠長(ゆうちょう)に挨拶してる場合か! なんだこの状況は! 神楽耶、どうすればいい?』

『ふふ、お二人とも寝相が悪かったようですね。和樹君は観念してお二人が起きるまで待つしかないでしょう』

『……まじかよ』


俺は思念で神楽耶から状況を確認する。

選択肢は二つ。2人が起きるまで待つか、起こすか。

2人の天使のような寝顔を見ていると、起こすのは非常に申し訳ない気持ちになる。

だからと言って、このまま起きているのも至難の業だ。

つまり、俺が出した答えは……再び寝る事だった。

俺は目を瞑り、暖かい柔肌に包まれながら再度眠りの中に入っていった。




次に意識が覚醒したのは唐突(とうとつ)な衝撃と共に訪れた。


「ぐふっ!」


腹部に強烈な一撃を食らい、俺は強制的に目が覚める。


「……な、なんだ! 何が起きた!」


体を起こし俺は辺りを見回す。

俺以外の布団はすべて片付けられ、不敵(ふてき)な笑みを浮かべる豊崎が俺を見下ろして立っていた。


「あら、やっと起きたわね。おはよう和樹君」


どうやら衝撃の正体は豊崎のようだ。

髪は既に後ろに(くく)っており、見慣れたポニーテールになっていた。


「……おはよう。できればもっと優しく起こしてくれると嬉しかったな」

「あら、手加減はしたはずだけど。ごめんなさいね」

「いや、お願いしていたのは俺だからな。ありがとう、起こしてくれて」


俺は深夜に起きた事は俺の心の奥底に封印すると決意しながら布団から起き上がる。

アリサちゃんと神崎さんはテーブル近くの椅子に座ってテレビを見ており、台所には愛花と梓ちゃんが立って朝食の用意をしていた。


「おはよう愛花、梓ちゃん。それにアリサちゃんに神崎さんも」

「おはようございます兄さん!」

「……あ、お……おはよう……ございます」

「おはようございます和樹さん!」

「おっはよー!」


愛花や神崎さんやアリサちゃんは元気よく挨拶を返してくるが、梓ちゃんは頬を赤くしながら挨拶をしてくる。

梓ちゃんの照れている原因については深く追求しないようにしつつ、俺は布団を畳む。


「愛花、この布団どうすればいい?」

「庭に干しておいてもらえますか? 他の布団も既に干しているのでわかると思います」

「わかった」


愛花に言う通り、庭には布団が人数分干されていた。

俺は自分の使った布団も同様に干しておく。

リビングに戻ってきた後、俺は身支度をするために自室へと向かい出かける用の服に着替えてリビングに戻る。


「……あ、兄さん、朝食が出来たのでみんなで食べましょう!」

「わかった」


それからみんなで愛花と梓ちゃんが作った朝食を食べ始める。


「そういえば、朝起きたら愛花のお兄さんに抱き着いてたんだよね! 驚いちゃった!」

「……っ!」

「……へぇ、そうだったんだ。寝てたのがもったいないよ」


梓ちゃんもわかりやすいぐらい動揺しているが、俺はしらを切ることに専念する。


「あはは……兄さん、鼻の下が伸びてます」


どうやら顔に出ていたようだ!


「……山守君、私たちが寝ている間に変な事してないでしょうね?」

「いや、さっきお前がさっき起こしてくれるまで寝ていたんだぞ? 変な事をしようがないだろ」

「……それもそうね」


俺は冷や汗をかきながら朝食を食べる。


「そういえば、まだ動物園の開園までには時間があるけど、豊崎達はこのまま動物園に向かう予定?」

「いや、私たち荷物が多いから一度家に帰って動物園に現地集合って形にしようかって話を山守君が寝ている間にしていたのよ」

「……そうだよな。荷物を持ちながら移動するのも大変だし」


大荷物の豊崎とか特に。


「そ。だから、朝食を頂いた後は一旦私たちは家に帰ろうかと思っているわ」

「その方がいいな。よし、それじゃ早く朝食を食べてしまおう」


皆が頷くと朝食に箸を伸ばしていく。




程なくして朝食が食べ終わった俺は愛花と朝食の片づけをする。


「それじゃ片付けは俺たちがしてるから、豊崎や梓ちゃん達は一旦家に帰って準備してくるといいよ」

「わかったわ。それじゃ動物園で落ち合いましょう」

「……和樹さん、また……後で会いましょう」

「それでは一旦帰りますね和樹さん」

「また後でね~」


各々が持ってきた鞄を持つと軽く挨拶をして玄関の方へと向かっていく。


「また後でな~」


俺は玄関に向かう皆に大声で言い放つ。

しばらくすると、皆が玄関から出ていく音が聞こえる。


「……ふぅ、急に静かになったな」

「ふふ、そうですね兄さん」

「……それじゃ俺たちも早く準備しますか」

「はい、兄さん!」


俺は愛花と微笑み合い、片付けの手を動かしていく。




片付けが終わり俺は手短に出かける用意を済ませた後、樹も動物園に呼ぼうかと思いスマホで連絡をしてみた。

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『おはよう、宿題の方はどうだ?』

『ふ……見えないゴール程、怖いものはないな』

「……なるほど、ゲームばかりしてないで明日までには終わらせておけよ」

「ぐぬぬ……そうだな、今日でケリをつけようじゃないか!」

「まぁ、頑張れ!」

---------------------------------------

……樹を呼ぶのは難しそうだな。

俺は5人の女性と動物園を回る事に覚悟を決めていると、出かける用意が済んだ愛花がリビングに入ってくる。

可愛らしいピンク色のキャミソールにフリフリの付いたミニ丈スカートで首から双眼鏡をぶら下げていた。


「めっちゃ可愛いじゃん。双眼鏡もギャップがあっていい感じだな」

「えへへ、そうですか? ありがとうございます!」


ニコっと愛花は笑顔になるのを横目に俺も席から立ち上がる。


「それじゃいきますか!」

「はい!」


俺たちはそう言うと玄関へと向かい靴を履き替える。

さて、今日は動物園に行った後、神崎さんの洋服選びに付き合い、最後は愛花と買い出しに行くという非常に濃厚な1日になる。

最高に楽しみで今からワクワクが止まらないな。

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

★評価とブックマーク登録をよろしくお願い致します。

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