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■38 戸惑い

リビングに戻ろうとしていると神楽耶が思念で話しかけてくる。


『ふふ! 今日は人が大勢で見ていて飽きないです!』

『言ってろよ、当事者としてはハラハラものだからな』

『そうですか? 和樹君もまんざらではないと思いますが』

『……どうだかな』


リビングに到着すると愛花達が俺から受け取ったバスタオルを紐でグルグル巻きにしていた。


「……何してるんだ?」

「あ、兄さん。……捨てた後にバスタオルから出てこない様に紐できつく固めているんです!」


他の1年生組も恐る恐る愛花の持つバスタオルを見つめている。


「一応、俺が潰しておいたからもう死んでて動かないとは思うけどな。……まぁ、念には念って感じでいいと思うぞ」


俺は愛花にそう伝えながら布団に腰を落とす。


「……あ、そうでしたか。それでは……これぐらいでいいですかね」


愛花はそう言うとバスタオルに巻いていた紐を(くく)り、小さいバスタオルボールが出来上がる。

その後、燃えるゴミ袋に投げ入れて愛花達も俺が座っている場所へ戻ってくる。


後処理(あとしょり)完了です! お疲れ様でした兄さん」

「愛花もお疲れさん。明日Gの駆除グッズも一緒に買っておくとするか」

「確かに、その方がいいですね」


俺たちが話していると、パジャマ姿の豊崎がリビングに入ってくる。

さっきは気付かなかったが、いつもはポニーテールだが今は髪を下ろしており、ロングヘアーでいつもと少し違った雰囲気を感じる。

……それに、何か(みょう)にしおらしい。


「……お風呂頂いたわ。ありがとう」

「お……おぅ、お帰り。さっきは災難(さいなん)だったな、申し訳ない」

「……いいのよ。私も年甲斐(としがい)もなく叫んじゃった訳だし、お互いさまって事でチャラにしましょう」


何故か妙に緊張してしまう。

おそらく、豊崎の下着姿を見たからってのが原因だろう。

あの時はGを仕留めることで精一杯だった為、あまり意識をしていなかった。


「……その、あれだ。とりあえず座れば?」


豊崎は無言で頷くとポフっと布団に腰を落とす。

座っても豊崎は沈黙したままで俺は非常に調子が狂う反応だった。


「……え~~っと、それじゃ次は俺がお風呂に入ってこようかな?」


俺は愛花に耳元で小さく(ささや)く。


「(愛花、あとは任せた!)」

「(はい! 分かりました!)」

「それじゃ、行ってくるよ。愛花達は何か適当に遊んでてくれ」

「分かりました。いってらっしゃいです兄さん」

「……行ってらっしゃいませ。和樹さん」

「行ってらっしゃいです!」

「いってら~」


1年生組に見送られる中、立ち上がり豊崎に一言伝える。


「豊崎も、俺が風呂から上がってくる時には復活しておけよ」

「……わかってるわよ」


そう小さく言葉を交わすと俺はリビングを後にした。




階段を上がり、自分の部屋から着替えを取った後、脱衣所へと向かう。

脱衣所に着いた俺はサクッと服を脱いだ後、向こう側を向いている神楽耶に思念を飛ばす。


『それじゃ、神楽耶は待機してろよ?』

『はい! わっかりました!』


守護霊……いや、神楽耶の場合は守護神だったかな。

お風呂場は神楽耶は付いてこない為、本当の一人になれる非常にリラックスできる場所なのである。

俺は体をサクッと洗い終え、湯船につかる。


「ふぅぅぅぅ………極楽、極楽」


皆が入り終わったとは思えないような丁度いい温度だった。

おそらく、豊崎が上がる前に温度の調整をしてくれていたのだろう。

そんな気の利く女性はなかなかいない、豊崎には感謝だな。


「……それにしても、さっきの豊崎の仕草は反則だろ」


髪型がいつもと違いロングヘア―だからなのか、いつもの天真爛漫な雰囲気は無く非常に清楚っぽくお淑やかな立ち振る舞いで動揺してしまった。

更に、さっきの騒動(そうどう)で豊崎の方も変に意識してしまい、しおらしい態度をとっている始末。

……どう対応していいのか正直分からなかったな。


「……ま、愛花がなんとかしてくれるだろう」


俺は愛花に丸投げしておいたので、俺が風呂から上がった時には何もかも元通りだと勝手に思っておくことにした。




程なくして、風呂から上がり終えた俺はすぐさま服を着終える。


『神楽耶、もういいぞー』

『わっかりました!』


俺は思念で神楽耶に伝えると、脱衣所を出てリビングへと向かった。

リビングに到着すると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……何してたんだ?」

「あ、……えと兄さん。おかえりなさいです!」

「……和樹さん、おかえりなさいです!」

「おかえりなさいです和樹さん!」

「おっかえりー! えっとね! みんなで女子トークをしてました!」


異様な光景に突っ込むと皆からおかえりの挨拶が帰ってきた。


「女子トークねぇ……」


アリサちゃんの言う女子トークが何なのか、俺は怖くて聞けなかった。


「豊崎、調子はどうだ?」

「……ま、まぁまぁかな!」


豊崎は返答を返すが、周りの皆が(みょう)に俺と豊崎を見てニヤニヤしていた。

……なんだろう?


「そういえば愛花、明日の予定は豊崎に伝えたか?」

「あ、はい! 兄さんが入ってる間に伝えておきました。豊崎先輩もご一緒してくれるんですよね?」

「……えぇ、せっかくだし私も参加させてもらうわ」

「おっけ、了解だ! 明日は全力で楽しむか!」


細かい事はともかく、少なくとも豊崎から避けられていない事が確認できて俺は安堵(あんど)する。




俺は皆が座っている布団の近くに座り直し、明日の計画を練り始める。


「さて、みんな明日動物園に行く訳だが、実は俺ってあまり動物園に行った事がなくて、どう楽しめばいいのかよくわからないんだよな。梓ちゃんはよく動物園にいったりするの?」

「……はい! 動物園ってすごく癒されるんですよ! 特に動物と触れ合える場所なんてもう最高で……あ! すいません……!」


梓ちゃんは珍しくテンションが急激に上がるがすぐさま(しぼ)んでいく。見ていて非常に面白い。


「そっか、確かに動物と直に触れ合えるのってなんかいいな。どんな動物がいるんだ?」

「そうですね。よくあるのがウサギやモルモットなどでしょうか。私はウサギさんと一緒に(たわむ)れるのが大好きなんです! はぁ……!」


梓ちゃんは動物園について力説をして来るや否や、両手を天に合わせて(おが)みながら放心していた。

面白すぎるんだが、この子。


「へぇ、そうなんだ! 俺も実際にウサギと戯れてみたいな。……愛花もあまり動物園行った事ないよな?」

「えぇ! だからこそ梓ちゃんと一緒に動物園に行けるのが今から楽しみなんです!」


愛花も梓ちゃんの変貌っぷりに気付いているのか、ワクワクしているのが伝わってくる。


「そうだ! 梓ちゃん、何か事前に用意しておくものってあるのかな?」


俺は昇天(しょうてん)していた梓ちゃんに尋ねてみる。


「……あ、そうですね。基本的に囲いの中に動物たちが放たれているので、双眼鏡(そうがんきょう)などあれば動物を近くで見る事ができて良いと思いますよ!」

「双眼鏡か……愛花、そんなのあったかな?」

「確か、2階の倉庫にあったはずです。後で取り出しておきましょう!」

「お、そうなのか。頼む!」


2階の倉庫には何でもあるんだな、今度しっかり何があるのか把握しておく事にしよう。


「豊崎も動物園は初めてなのか?」

「そうね。あまり行った記憶がないかな。だからこそ行ってみたいって感じね」

「お、いいね! 何か好きな動物とか見たい動物っているの?」

「う~ん……キリンとか?」

「……確かに、動物園じゃない限りキリンなんて会う事ないもんね」

「でしょ? あと像とかもいたら見てみたいかも!」

「いいな! まとめて全部見て回ろうか!」

「えぇ!」


俺は豊崎が動物に興味がある以上に、普段通りに豊崎と話が出来るようになっている事を嬉しく感じていた。


「梓ちゃん、他に何か動物園を楽しむ際の注意事項ってあるの?」

「そうですね! 強いて言えば、動物が活発になっている朝方に行くのがおすすめです! お昼時になると動物たちはあまり動かなくなってしまいますので……」

「なるほどなぁ……」


俺はスマホから近くにある動物園の開園(かいえん)時間を確認する。


「朝の9時30分か……。俺の家から出るとして、9時前には出た方がいいかもな」


皆にそう伝えながら時計の方に視線を向ける。

間もなく日が変わる時間帯に差し掛かっていた。


「……もうこんな時間か。そうだな、俺って朝弱いからそろそろ寝た方がいいかもしれない。みんなは朝って強い方?」


俺は愛花以外の女性陣に尋ねる。


「……私は問題ありません!」

「私も大丈夫です!」

「私も問題ないかな~」

「そうね。私も特に問題ないわ」


どうやら朝が弱いのは俺だけだったようだ。


「……了解。俺が起きなかったら蹴飛ばしてもいいから起こしてくれるか?」

「ふふ……それじゃ私がその役割を買ってあげるわ」


豊崎は不敵(ふてき)に笑みを浮かべながら答える。


「……お手柔らかにお願いします」


すると、まわりの1年生組にドッと笑いが起きる。

俺と豊崎もお互いに笑い合う。

リビングに暖かい空気が流れるのを感じた。


「よし、それじゃそろそろ寝るとしますか」

「はい兄さん!」




各々が自分の布団に入り終わると愛花がリビングの照明を消すスイッチの方へと向かう。


「それじゃ、明かり消しますねー」


ポチッ――

すると部屋は一気に暗くなり周りが見えなくなる。

愛花が布団の方へ戻る音を確認すると、俺は目を瞑り眠りにつくことにした。




『……って、寝れるはずないだろう!』

『よく考えたがなんだこの状況は、俺と女子5人で一つの部屋で寝るって』

『ふふ……いいじゃないですか。……お休みなさいです和樹君』


……と、ひとまず今の状況について全力で神楽耶に思念で突っ込みを入れ終わったので、俺は観念して強制的に意識を手放した。

「面白かった!  続きが見たい!」

「今後どうなるの!?」


と思っていただけましたら

画面を↓に下げると【★★★★★】があります。


率直に思って頂いた1~5の応援をご自由にお願いいたします。

また毎日投稿していくので【ブックマークに追加】をして次話をお待ちして頂ければと思います!


なにとぞ、よろしくお願いいたします。

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