■27 相談者
階段を降りてリビングに到着するとテーブルの上には美味しそうなペペロンチーノとシーザーサラダが並べられていた。
「お待たせ、今日も美味そうだな。早く頂こう」
「はい! ちょっとまってくださいね」
台所にいた愛花はエプロンをしまった後、テーブルまで来てから椅子に座る。
「お待たせしました」
「……それじゃ」
「「頂きます」」
2人で頂きます、をしてから食べ始める。
すぐさま俺はめちゃくちゃ美味いペペロンチーノを平らげる。
その後、シーザーサラダをフォークで摘まみながら俺は先ほど神崎さんと話した内容を愛花に伝える。
「さっきだけど、神崎さんから早速連絡があったんだよね」
「あ、そうだったんですね」
「今度、愛花のご飯を食べに家に来たいって言ってたよ」
「本当ですか! なら、腕によりをかけて美味しいものを作りますよ!」
「だな、今度誘ってみようか」
「はい!」
少し間を開けて続ける。
「あと……ちょっと聞きたいんだけど、神崎さんってクラスでいつもどんな感じなの?」
愛花は少し考えた後に話始める。
「……えと、麗子ちゃんですが今日お昼に誘うまでは周りから少し浮いている、というのが率直な感想だった思います。でも、お昼以降は私や梓ちゃんと話している時は、笑ってお話出来ていたと思います」
「そっかぁ……。いや、神崎さんの話を聞いてみると子供の頃からあまり人と関わらない生活をしていたらしくて、人とどう打ち解けていけばいいのかわからないって言っていたんだよね」
「そうだったんですね。……何か理由があったんでしょうか?」
俺は少し迷ったが、愛花には正直に伝えておくことにした。
「神崎さんって子供の頃から普通な見えないモノが見えるみたいで、その事を周りに言っても信じて貰えず、可笑しな目で見られてしまった事でそれ以降は人と関わり合う事を避けてきたんだって」
「え……それってつまり……」
「愛花の想像通りだな。自分しか見えないので誰にも相談できずに一人で過ごすようになったんだとさ」
「なるほど……」
「神崎さんは人と打ち解けるようになりたいって話していたから、そこで部活動の一環で協力できないか俺が提案してみたら、是非って事だから明日他の部員にも相談しようと思ってるんだ」
「……え、最初の相談者って麗子ちゃんって事ですか!?」
「だな、詳しくは明日話そうと思っているから、明日のお昼も神崎さんを誘っておいてもらえるか?」
「わ、分かりました! 私も麗子ちゃんのお役に立てるように頑張りたいと思います!」
「ふふ、俺もだ」
俺たちは話を終えると残りの晩御飯を食べ始める。
程なくして晩御飯を食べ終えた俺たちはご馳走様を行い、俺は食器などの後片付けをすることにした。
洗い物などが済んだ後、リビングで愛花としばらくテレビを見ながら談笑し、そのあとそれぞれお風呂に入り自室へと戻る事にした。
自室に戻った後、神楽耶に質問をする。
『神楽耶、霊感ってなくす事ってできないのか?』
『ん~そうですね。なくすっていうより対処する方法はあると思いますよ』
『どんな方法だ?』
『例えば、見えたとしても気のせい、だと思って過ごしたり、楽しい事や面白い事をして笑うのも効果的です!』
『え、そんなんでいいのか!?』
『はい、他には精神を高めるような徳を積む事をするのもいいですね。例えば人に奉仕をしたり親切な事をするなどです』
『それって俺たちが作った部活動みたいだな』
『そういえばそうですね! そういった行動をしていると徐々に近寄ってこなくなり、結果的に見えなくなるものだと思います』
俺は神楽耶から聞いた事を踏まえて考える。
つまり、神崎さんを部活に誘ってしまえば万事解決するんじゃないか。という事だ。
ただ、それは神崎さんの意志によるものだし、俺たちが出来るのは周りと打ち解ける為の方法についてだ。
『わかった、ありがとう神楽耶』
『いえいえ~』
『それじゃ、そろそろ寝るよ、お休み』
『はい、おやすみなさいです!』
俺は神楽耶に軽くお礼を言って、布団に入り目を瞑る。
明日、神崎さんの事を皆に相談してみよう。
翌日の朝、目覚まし時計の音で目が覚めるが、いつも通り二度寝をかました後、結局愛花に起こされた。
「それじゃ、朝ごはん用意出来ていますから、早く降りてきてくださいね」
「ほーい」
俺は眠気眼で返事を返す。
『やっと、お目覚めですね! おはようございます!』
『おはよー』
神楽耶にも軽く挨拶をしておく。
その後、朝飯を食べて学校の仕度を済まして学校へと向かった。
「梓ちゃんにアリサちゃん! なんと、部活の最初の相談者が見つかったんだ」
「……え! もう見つかったんですか?」
「昨日の今日でめっちゃ早くないですか!?」
梓ちゃんとアリサちゃんと合流した後、俺はすぐさま昨日の事を2人に伝えると見事に驚いていた。
詳細を2人に伝える。
「……そうだったんですね! 私も麗子ちゃんの事、気になっていたのでお役に立てるように頑張ります!」
「そうね! 早く学校に行って麗子と話たいな!」
「まぁまぁ、詳しくはお昼に相談しようと思ってるからまた神崎さんをお昼に誘っておいてね」
俺は元気よく返事を返す2人を横目に学校へと足を進めた。
学校へ到着すると、愛花達とお別れをしてクラスへと向かう。
ガラッ――
扉を開けて自分の席に行く前に豊崎の席まで移動する。
「山守君、おはよー。……な、なによ」
「ふっふっふ、おはよう豊崎。聞いて驚け、なんと部活の相談者をもう見つけたんだ!」
「早くないっ!? もう見つけたの?」
案の定、驚く豊崎であった。
豊崎の声で樹が近づいてくる。
「おはようお二人さん、豊崎、何かあったのか?」
「おはよう斎藤君。いや、山守君がもう相談者を見つけたって言うから」
「ははっ! さすが和樹だな! ……それで、誰がその相談者なんだ?」
俺は2人に神崎さんの事を伝える。
「……なるほど、そんなことがあったのね。いいんじゃない? 確かに昨日話した感じ、あまり人付き合いに慣れてないっぽかったし」
「そうだな、これも何かの縁だろう。私も全力で協力しようじゃないか!」
豊崎は快諾し、樹もメガネをクイっとしながら賛同してくれた。
「愛花にまた神崎さんをお昼に誘ってもらうように頼んであるから、詳しくはお昼に聞いてみよう」
「わかったわ」
「了解した!」
2人は思いのほかやる気の様で安心した。
すると、高橋先生が教室へ入ってきたので俺は小走りで高橋先生の傍まで近づく。
「高橋先生!」
「あら山守、おはよう」
「おはようございます。あの、報告があるんです。部活の相談者が決まりました!」
「あら、早いわね。まだ張り紙も作っていないのに」
「あはは……。あ、張り紙って放課後には出来るんでしたっけ?」
「えぇ、放課後には用意しておくわ」
高橋先生と話しているとチャイムが鳴り響く。
「さ、もうHRが始まるから席について頂戴ね」
「あ、はい! 張り紙と相談者については放課後に部室でさせて頂きますね!」
「えぇ」
俺は自分の席へと戻るとHRが始まった。
その後、俺は早くもお昼が待ち遠しく思い、午前の授業が上の空で過ぎていくのであった。
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