■26 子弟関係
昇降口へ到着し、靴を履き替えた俺たちは校門から学校を後にした。
分かれ道までは一緒に下校し、先ほど梓ちゃんともお別れを済まし愛花と家へと向かっている。
「今日はいろいろな事が起きましたね兄さん」
「そうだな。神崎さんとも友達になれたもんな」
「そうです! 思い出しましたが、麗子ちゃんお昼休みから少し明るくなったと思うんですが、何か知りませんか?」
「あ、……え~っと、いやわかんないけど」
心当たりがあるのだが、どう言って良いのかわからないので誤魔化しておく。
「そうですか……でも、良かったです。今日知り合った時の麗子ちゃんは、なんだか昔の私みたいに思えたんです」
「昔か……」
俺たちが芳樹おじさんに引き取られる事になる前は、愛花は確かに神崎さんのように周りと関わりを持とうとせず、俺以外の相手に無関心だった頃がある。
「はい。でもお昼休み以降から、なんかこう……元気になったというか、表情が明るくなったんですよね」
……おそらく、今まで隠してきた事を俺に打ち明けたことで、抱えていたものがなくなったんだろう。
「俺も昼休みにいろいろ神崎さんと話が出来て楽しかったし、また機会があればお昼に神崎さんを誘ってみてよ」
「はい、兄さん!」
愛花のニコっとした笑顔を横目に見ながら家へと足を進めた。
程なくして自宅に到着した俺たちは「ただいま」と言った後、自室へと向かう為に階段を上がる。
「ご飯が出来たら呼びますので、待っててくださいね」
「おぅ」
愛花に軽く返答しながら俺は自室へと入っていく。
部屋に入ると俺は無造作に鞄を地面に置き、服を着替える。
そっぽを向いていた神楽耶に俺は問いかけてみた。
『神楽耶って俺が田舎にいた頃からずっと傍にいたってことだよな?』
『え……あ、はい。そうなりますね!』
神楽耶はそっぽを向きながら慌てて思念で答えてくる。
『思い返してみると、田舎から戻った後に芳樹おじさんと出会って人生がガラッと変わったと思うんだけど、それって神楽耶のおかげだったりするの?』
『さぁ……それはどうでしょうね。私が出来る事は和樹君を守る事だけですから』
『……それって必然的に愛花も守っていた。って事にもなるの?』
『ん~……そうですね。そう言えなくもないって感じです』
『……どういう事だ?』
『えと、説明するのが少し複雑なのですが、……私が愛花ちゃんを守っている方に力を分け与えているって感じですね』
愛花を守っている存在もいるんだな。
『ほぇ……そんなことも出来るんだ』
『はい。和樹君は愛花ちゃんをとても大切にしているのは見ていて感じましたし、愛花ちゃんにも幸せになってほしいですからね!』
『そうだったのか、……いろいろありがとうな』
『いえいえ~!』
愛花が明るくなったのも神楽耶の力が少なからず影響しているようだ。
着替え終わり、こちらを向いてくる神楽耶に質問をしてみる。
『それそうと、今日知り合った神崎さんだよ。あの子、いろいろ見えるって言ってたけど、そんなに日常的にいるもんなの?』
『そうですね~。いる所にはいるって感じです。……和樹君も見てみますか?』
神楽耶はとんでもない質問をしてくる。
『え……いや、俺でも見れるもんなの?』
『はい、私の視点を和樹君にお貸ししたら見れると思いますよ』
『マジか。……めっちゃ興味はあるけど、ちょっと怖いな……また今度お願いするかも』
『わかりました~』
神楽耶と話をしているとスマホから通知が届く。
確認してみると、どうやら神崎さんからのようだ。
――――――――――
『師匠、こんばんは』
『お、早速のご連絡ありがとう! まだ師匠って呼ばれるの慣れないね(笑)』
『今日は突然すいませんでした』
『全然いいよ。こちらこそ、愛花と友達になってくれてありがとう。これからも愛花をよろしくね』
『はい。和樹さんと出会えたキッカケをくれましたし、愛花には感謝です』
『愛花にも伝えているけど、またよかったらお昼一緒に食べようね』
『はい!』
『このアプリって通話も出来るって愛花から教えて貰っているのですが、少しお話させて頂いてもいいですか?』
『うんいいよ、晩御飯が出来るまでだけどね』
――――――――――
俺はなかなか大胆な行動をしてくる神崎さんに少し圧倒されつつも着信を待つ。
しばらくすると、神崎さんから着信が届いた。
「もしもーし、和樹です」
「あ、神崎です! 師匠、いきなりすいません」
「気にしないで、それで急に通話って何かあった?」
「あ、いえ。ちょっと師匠の声が聴きたいと思いまして」
なんかドキドキするんだが。
「そうなんだ! そう言ってもらえて嬉しいよ。今日も外を散歩してたりするの?」
「あ、今は家にいます。親はまだ帰ってきてないですけど」
確か、夜遅くまでお仕事されているんだっけな。
「そうなんだ。なら今度、愛花の手料理を食べに家に来てみる?」
「え! いいんですか師匠! 是非、行ってみたいです!」
めっちゃテンションが上がる神崎さんに少し嬉しくなる。
「愛花の手料理はめちゃくちゃ美味いから楽しみにしておいてね」
「わかりました! それじゃ早速愛花にも後で伝えておきます」
一呼吸おいて、神崎さんに話しかける。
「……それにしても、本当に神崎さんってお昼の時のイメージと変わったよね」
「あ~……いや、あの時はすいませんでした。あまり人と関わり合うのを避けていましたから」
「そうなんだ。いつ頃から人と関わり合うのを避けてたの?」
「子供の頃なので、ほんと小学生低学年ぐらいからずっとです」
「そっか……いろいろあったんだね」
「はい……でも! 今は師匠と会えましたからこれから少しずつ人と関わっていきたいと思ってます」
ここで俺がもし拒絶をしたら神崎さんはどうなってしまうんだろう。と少し想像したがすぐに想像をぶち壊す。
せっかく神崎さんは一歩踏み出そうとしているんだから、俺は精一杯力になろう。
「そうなんだ。でも、そんなにブランクがあるんだから、急に人と関わっていくのって大変じゃない?」
「実は……そうなんですよね。愛花達とは積極的に話しかけてきてくれるので私もお話をすることはできますが、それ以外が……」
「……そういうもんだよな」
「はい……」
何年間も続けてきた事を急に変えるのは誰でも難しい。
俺はそんな神崎さんの力になれる事がないか考える。すると、今日許可された部活動の事を思い出す。
「……あ、そうだ! 神崎さん、今日部活動の許可が下りたんだよ。学生から悩み事を聞いて解決するって部活動なんだけど」
「あ、愛花が話していたことですね」
「うん。よかったらなんだけど、神崎さんが周りに打ち解ける為の手助けさせて貰えないかな?」
「え……いいんですか?」
「全然、むしろ神崎さんの力になりたいもん」
「ぜ、是非お願いしたいです」
「よし、決まりだね! 詳しくは明日話そっか」
「分かりました師匠!」
すると、一階から愛花の声が聞こえてくる。
「にいさーん! ご飯できましたよー!」
「……あ、すいません。長話しちゃって」
愛花の声が聞こえたのか、神崎さんが謝罪をしてくる。
「全然。それじゃ晩御飯できたみたいだし、これで失礼するね」
「はい! 師匠、それではまた連絡しますね!」
「うん、それじゃ」
俺は通話終了ボタンを押して通話を終える。
女性と通話したのって愛花以外に初めてかもしれない。めちゃくちゃドキドキするな、こういうのって。
俺は荒ぶる心臓を落ち着かせながら階段を下りていった。
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