■24 生徒会の意向
神崎さんと話をしている中、俺は尿意がそろそろ限界にきている事に気付く。
「っと、ごめん神崎さん。今トイレに向かう途中だったんだよね。話はまた時間がある時にでもいいかな?」
「あ、はい! わかりました師匠!」
俺は神崎さんと別れた後、すぐさまトイレへと向かい用を済ませた。
……ふぅ、なんとか間に合った。
男子トイレから出るとそこには神楽耶が待機していた。
『……朝言ってた通り、トイレには付いてこないんだな』
『もちろんです! 私だってそこはしっかりわきまえています』
教室に戻るとその直後にチャイムが鳴る。
どうやらギリギリ間に合ったようだ。
俺は急いで机から教科書を取り出し、午後の授業の備えを行っていく。
午後の授業が終わり、放課後になると樹や豊崎が帰り仕度を済ませて俺の席に近づいてくる。
「やっと放課後だな」
「昇降口だったわよね、早くいきましょ」
俺は2人に急かされながらも帰り仕度を済ませ、鞄を持って席から立ち上がる。
「おまたせ、それじゃ行こうか」
教室から出て1階にある昇降口へと俺たちは向かった。
昇降口には愛花たちが既に待機しており、何故か神崎さんも交えて談笑をしていた。
「愛花ー」
愛花に手を振りながら呼びかけると愛花も軽く手を振り返してきたので小走りで愛花に近づく。
「みんなお待たせ! ……それはそうと、なんで神崎さんも待ってるの?」
「はい。帰る前に兄さんとまたお会いしたいと話していたので一緒に待っていたんです」
「何よ山守君、気に入られてんじゃない」
豊崎がおちょくってくるが、理由を知っている俺は適当にはぐらかしておく。
「ありがとう神崎さん、わざわざ待っていてくれて」
「はい! 愛花からスマホにNINEアプリを入れてもらったので、……よかったら連絡先を交換してくれませんか?」
どうやら、俺と連絡先を交換する為に待っていてくれたようだ。
「あ、そうだね。まだ交換してなかったや」
神崎さんは人付き合いをあまりしていなかったので、スマホの扱いはあまり上手ではないようだ。
愛花に使い方を教えて貰いながら連絡先を交換する。。
「これでよし、っと。なんかあったら連絡してきてね」
「分かりました、し……和樹さん!」
神崎さんは師匠と言いそうになったが、なんとか踏みとどまったようだ。
今師匠とか言われたらいろいろ面倒くさい事になるだろうから助かった。
「それじゃ、俺たちは今から生徒会室に行くから、神崎さんまた明日ね」
「はい、それではお先に失礼します」
「また明日ね、麗子ちゃん!」
「愛花もまた明日」
神崎さんは愛花達とお別れの言葉を交わすと、神崎さんは昇降口から靴を履き替えて外へと向かっていった。
「それじゃ、いきますか!」
神崎さんの見送りが終わったタイミングでみんなに言い放つ。
それぞれが頷くのを確認すると、俺は生徒会室へと足を向ける。
生徒会室は昇降口から近くにあるのですぐに到着する。
俺は他のメンバーと目配せをすると扉に手をかけ、思い切って扉を開ける。
「お邪魔します!」
俺に続けて他のメンバーも元気よく挨拶をして生徒会室へと入っていく。
「こんばんは山守さん。今日は人が多いですね」
「こんばんは、会長」
「丁度よかったです。今、山守さんを呼び出そうとしていたところでしたからね」
「……それで、早速ですが部活動の申請について進捗は何かありましたでしょうか?」
会長は机から1枚のプリントを取り出し、そのプリントを見ながら話し始める。
「……はい。部活動に関しては高橋先生からの助言もあり、仮決定ですが部活動は認められています。部室の利用も許可がおりました」
「っ! ありがとうございます!」
俺の後ろに立っていたメンバーからも多少なりと歓喜の声が聞こえる。
だが、会長は凛とした表情で言葉を続ける。
「……ですが一つだけ条件があります。4月中に明確な活動実績を提示していただきます。……もしそれが無かった場合、5月以降の部室の使用を禁止、部活動も即刻解散してもらいます」
「……えっ」
ピシャリと言い放つ会長。
俺たちは期間限定で部室の利用許可を得たが、同時に部活動の解散の危機に面してしまったのである。
「……会長、その活動実績についてですが、悩みを解決させた学生をこの生徒会室に呼んで証言してもらう。という形式で問題ないでしょうか?」
「えぇ。問題ないでしょう。私がいくつかその証言者にご質問させて頂き、納得できる内容であれば……の話ですが」
会長は表情を崩すことなく続ける。
「……わかりました。今月中には必ず、証言者をここに連れてきます!」
「決まりのようですね。……国枝さん、ちょっといいでしょうか」
会長が呼びかけると傍のテーブルで作業をしていた国枝さんがパイプ椅子から立ち上がって近づいてくる。
「以前も紹介させて頂きました部活動の監査を行う国枝さんです」
「山守さん、改めてよろしくお願いしますぅ!」
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします」
会長とは真逆でふわふわした雰囲気を持つ国枝さんに少し癒されてしまう。
「国枝さん、山守さん達に部室の鍵と場所の案内をして頂けますでしょうか」
「分かりました会長。それでは皆さん、私についてきてくださいね」
国枝さんは俺たちの方を見て言うと生徒会室を出ていく。
俺たちも国枝さんについていくようにゾロゾロと生徒会室を後にした。
職員室も生徒会室のすぐそばにあり、職員室へとすぐ到着する。
国枝さんに続くように職員室へ「失礼します」と言いながら入っていく。
「こっちです」
国枝さんに職員室の奥にある鍵が壁にズラッと整理されている場所へと案内される。
どうやらここから部室の鍵を借りられるようだ。
「ここから鍵を借りて部室を使用することができます。鍵をここから持ち出す際には、そこにある端末から名前とクラスを登録して頂きます。返却する際にも同様に端末から登録をお願いします」
「わかりました。今日からもう部室って使っていいんですか?」
「はい。使用して問題ないはずです」
「ありがとうございます!」
「いえいえ、会長からちょっと大変な条件を提示されていましたが、頑張ってくださいね!」
国枝さんはほんわかした笑顔を俺たちに向けてくる。
俺はすぐさま将棋部と書かれていたネームタグの文字を消し【学園生活奉仕部】と書き換える。
そして鍵を取り外し、国枝さんの言っていた通りに端末に登録し終わる。
「これで帰る時に戻しに来ればいいってことですよね?」
「はい、おっしゃる通りです。続いて部室を案内しますので付いてきてください」
俺たちは国枝さんに付いていき、職員室を「失礼しました」と言いながら出る。
将棋部であった部室は3階にあるようで階段を上がり、部室まで案内された。
「お待たせしました。ここが元将棋部の部室で、今日から山守さん達の学園生活奉仕部の部室となります」
「あ、ありがとうございます!」
俺はすぐさま鍵で部室を開ける。
ガチャ――
扉を開けると、結構散らかっている部室になっていた。
「……結構、散らかってますね」
「あはは……将棋部は数年前に廃部になっているようであまり手入れが行き届いてないみたいです……ね」
「だ、大丈夫です! まずは掃除してから使わせて頂きますよ」
「……お願いできますか? 私も定期的にお邪魔させていただくと思いますので、またよろしくお願いしますね」
「はい。ここまで案内ありがとうございました!」
「いえいえ、それでは私は戻りますね。……あ、あと部室にあるパソコンも自由に使って頂いていいとのことです。ログインIDやパスワードも机の引き出しに入れてあるようです」
言われて部室の奥を見るとパソコンが置かれている机があった。
「いいんですか! 是非活用させて頂きます!」
「それではこれで失礼させて頂きますね。何かあったら私国枝にご相談ください!」
国枝さんは無邪気な笑顔を俺たちに向けると生徒会室へと戻っていった。
それからすぐに俺たちは部室に入る。
「今日からここが俺たちの活動拠点って感じだな」
すると、緊張の糸が切れたかのように他のメンバーが話始める。
「ふぅ……やっと落ち着けるわ。山守君、会長の威圧感に負けずに話せるなんてすごいじゃない。私は口を出す隙もなかったわ」
「俺も前に和樹と生徒会室で会った事はあったが、口出しできないオーラがあるよな」
「はい。そんな会長と普通にお話できるなんて、さすが兄さんです!」
「……和樹さん、カッコよかったです!」
「だよね。愛花のお兄さんに頼りっきりだったよ! ……それはそうと、なんかいろいろあるねこの部室! 早く片付けしようよ!」
どうやらみんなも会長の威圧感に圧倒されていたようで、俺に賞賛の声をかけてくる。
なんとも恥ずかしい気持ちになる。
「だな、まずはこの部室の大掃除からだ!」
俺は照れているのを誤魔化しながらメンバーに言い放つ。
俺たちの部活動が今、ここから始まっていくんだ。
「面白かった! 続きが見たい!」
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