■23 進捗報告
程なくして各々がお昼ご飯を食べ終わる。
すると、豊崎は俺に思い出したかのように尋ねてくる。
「山守君。QRコードの件だけど、使えそうなサイトがあったわよ」
愛花のお弁当が美味すぎて昇天しそうになっていた俺は意識を取り戻す。
「お、まじか。どんなサイトだ?」
俺は席から立ち上がり、豊崎の後ろからスマホをのぞき込む。
「これよ。無料で使えるフォームを提供しているみたい」
豊崎のスマホには某有名検索サイトの運営会社が提供している相談事などを記入できるフォームが表示されていた。
「よさそうじゃん。無料で使えそうだし、これにしよう!」
「決まりね。あとはこのページに飛べるようにQRコードを作るだけって感じかな」
「だな」
すると豊崎の隣で困惑顔をした神崎さんがこちらをみていた。
「あ、ごめんね。今俺達で新しい部活を作ろうとしていたんだけど、その相談事だよ」
「部活動……ですか?」
「そうそう。神崎さんは高校に入ってから何か部活はする予定はある?」
「……いえ、そういうのにあまり興味ないので」
「そっか」
神崎さんに部活動の勧誘をしようとしたが、興味のない相手に言うのは気が引けた。
俺は自分の席に戻ると、早朝に生徒会室で会長から聞いた話を共有する。
「朝に会長と少し話をしたんだけど、放課後になったら部活動の申請結果が出るらしい。放課後に俺が確認しに行ってくるから、何かわかったらスマホで連絡するよ」
「ふふっ……私も付き添おうではないか!」
「兄さん、私も付き添いますね」
「……愛花ちゃんが付き添うなら私も付き添ってもいいでしょうか?」
「なら私も! いいですよね愛花のお兄さん!」
五月雨式に参加表明されて、少し驚いてしまう。
「……別に構わないが、生徒会室では大人しくしておいてくれよ。結構生徒会長って威圧感すごいから」
俺は会長から醸し出されるプレッシャーについて予め梓ちゃん達に伝えておく。
あのプレッシャーに面と向かって対抗されると、俺も圧倒されてしまう程だからな。
「何よ、みんな付き添う流れじゃない。……これじゃ私だけ帰る訳にはいかないわね」
豊崎は仕方ないな、といった風な表情で同行する旨を伝えてくる。
「みんなありがとう。……ともかく、今日の放課後で部活動の今後が決まる。放課後は昇降口に集合な、集まってから生徒会室へ向かおう」
俺は部員メンバーが頷くのを確認する。
神崎さんは我関せずを突き通している様子だった。
お昼休みの時間も無くなりそうになっていたので、俺たちは学食を出ることにした。
「麗子ちゃん、今日は急なお誘いに答えてくれてありがとうございます」
「……別に良い。良いものも見つけられたし、来てよかったよ」
神崎さんは愛花に少し微笑むと愛花も釣られて笑顔になる。
愛花も神崎さんに丁寧にお礼を言い、俺たちは1年と2年に分かれて解散をした。
俺は樹と豊崎にトイレに行くと伝え、2人と別れて1人で廊下を歩いていた。
……すると、後ろから神崎さんの声が聞こえてくる。
「……和樹さんっ!」
「え、俺?」
振り返ると、少し息を切らして追いかけてきた神崎さんがいた。
「そんなに急いでどうしたの?」
「……えと、あの……」
神崎さんは俺に何かを伝えようと勇気を振り絞っているように見受けられる。
「……和樹さん、私を弟子にしてください!」
「……いやいや、なんでだよ!」
俺は予想の斜め上をいく神崎さんの告白につい声に出して突っ込みをいれてしまった。
すると、神崎さんは動揺せずに続ける。
「和樹さんはとてつもない存在と一緒に行動していますよね? ……私、そういうの見える体質なんです」
どうやら神楽耶が言っていた通り、神崎さんは人ではない存在が見える子のようだ。
でも、まだ神楽耶を認識してから1日も経っていないのに、ここで打ち明けていいものなのか?
『……神楽耶、どうすればいい?』
『わ、私に聞かれても……でも、悪い子ではないですから、話を聞くだけならいいんじゃないですか?』
『……そうだな』
神楽耶と軽く思念を交わすと、俺は神崎さんに事実確認をすることにする。
「……そういうのって、つまり幽霊とかそういった存在の事?」
「和樹さんが想像する通りです」
「……それで、俺の傍でとてつもない存在がいるって事か」
「はい」
もう言い逃れが出来ないと思った俺は頭をかきながら神崎さんに近づく。
「……この事は周りに言いふらさない事」
「っ! やっぱり、和樹さんも認識しているんですね!」
俺は神崎さんが聞こえる程度の小さい声で告げると、途端に神崎さんの表情が明るくなる。
学食で見ていた神崎さんとはまるで別人のようだ。
「神崎さん、さっきと違ってめちゃくちゃ明るくなったね」
「あ、すいません。ちょっと嬉しくいて、つい」
「認識できるって言っても今日の朝からだし。神楽耶以外は俺も何も見ることはできないぞ?」
俺は神楽耶を指さして答える。
「神楽耶さんって呼ぶんですね!」
「……えと、初めまして神崎さん、でいいのかな?」
神崎さんは神楽耶に向かって話したことで、神楽耶は戸惑いながら返答した。
どうやら神崎さんには神楽耶の声が聞こえるようだ。
「神崎さんって神楽耶以外にもいろいろ見えたりするの?」
「それはもう、見えまくりです。子供の頃から見えていて、その事を人に言っても相手にされず、変な目で見られるのでいままで人と付き合う事を避けていたんです」
神崎さんの愛想がよくなかったのも、相手を避けようとする日々を生きてきたからなんだろう。
「……そうだったのか、俺でよかったらいろいろ話も聞けると思うし、改めてよろしくね。神崎さん」
「はい! 師匠!」
「……師匠!?」
「あの、師匠って呼んではダメですか?」
「いやいや、普通に呼んでくれよ」
「……そうですか」
神崎さんはシュン……と見てわかるぐらいの落ち込みようだったので、俺は折れることにした。
「……わかったわかった! ……でも、他に人がいない時だけ呼んでくれ、なんか恥ずかしい」
「っ! 分かりました師匠!」
「って事で、これからもよろしくね神崎さん」
「よろしくお願いします師匠!」
俺と神崎さんは握手を交わす。
愛花が連絡をくれた時にはどんな子が来るんだろうと思っていたが、想像を遥かに超えた子と出会うことになってしまったな。
「面白かった! 続きが見たい!」
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