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■22 不思議な子

俺以外にも樹や豊崎とも軽く挨拶を交わす神崎さん。

やはり不愛想なのは変わらず、タイミングを見計らって俺はみんなに提案してみる。


「ここで立ち話も何だし、席に座ろうよ」

「そうね、早くいかないと席埋まっちゃうだろうし」


豊崎も同意してくれたようで、全員で学食へと入っていく。

俺は7人が座れるスペースがないか学食内を見回す。

奥に1つ空いているテーブルはあったので俺たちはその場所へと足を進める。

移動している間、神崎さんは俺の方をチラチラ見てきていた。厳密にいえば神楽耶の方だが。




席の端っこに座りながらお弁当を置く。


「神崎さん、俺たちが席見てるから飯買ってきなよ」

「はい! 席は私たちが見ておきますね」


愛花は俺の正面に座ると、俺と同様に席の見張り役を買うと言ってきた。


「……わかりました。行ってくる」

「それでは、行ってくるから席の護衛は任せたぞ」


神崎さんは軽くお礼を言い、樹たちも思い思いのお昼ご飯を買いに行く。

皆が買いに行くのを見計らって愛花に俺は尋ねた。


「愛花、神崎さんってどんな子なんだ?」

「えと、どこからお話すればいいのか……麗子ちゃんは私と席が隣同士だったんですね。それで授業の教科書を忘れてしまったとの事だったので私が見せていたんです」

「ふむふむ、それで話すようになったと」

「そうですね。授業の間のお休み時間もあまり人と話すような方ではなかったのですが、せっかく知り合ったので私の方からアプローチしてみた感じです」

「なるほど、愛花は優しいな。……あまり愛想がよくないのは話慣れていないから、ってのもあるのか」


あるいは別の理由があるのか。

俺は神崎さんが神楽耶の事を認識しているような素振りをしていた事を思い出す。


『神楽耶、神崎さんって見た感じどう思う?』

『そうですねー。私を見ていたことは驚きましたが、悪い人ではない事は()()()()()()()()()()()

『……気ってなんだよ?』

『人が常に放っているオーラのようなものです。そのオーラでその人がどういった人なのかだいたいわかることができるんです』

『そんなものがあるんだな。ありがとう、神崎さんが悪い人じゃないって事が分かっただけでも良かったよ』

『どういたしまして! ……あ、でもあまり見られると私もドキドキしてしまうので和樹君から見ないように言ってくださいよ』

『……どう言えばいいんだよ。納得できる言い方が想像つかないんだが』


すると、神崎さんがいち早く席に戻ってくる。

手にはおにぎりを1個だけ持っていた。


「神崎さん、お昼それだけでいいんだ」

「……私、小食ですから」

「あはは……」


神崎さんはなぜか俺の隣に座ってくる。

大胆な行動に少しばかりドキドキしてしまった。


「あの……神崎さん? 愛花の隣には座らないんだ」

「……はい。愛花のお兄さんに興味があります」

「あははっ! よかったね兄さん」


興味を持たれる事は悪い気はしないが、堂々と言われるとなんか照れてしまう。

おそらく、俺ではなく神楽耶に興味があるのだろう。神崎さんはなんとも不思議な子だ。


「そう思ってもらえてよかったよ。愛花から聞いたけど、隣同士の席になったんだってね?」

「……はい」


……おぉっと、会話終了かよ。え~っと、次の話題……次の話題っと。


「神崎さんって中学生の時はどんな中学生活を過ごしてたの?」

「いたって普通の中学生活でしたよ」


……やべぇ、会話が発展していかない……。俺が次の話題を考えていると神崎さんは続けて話す。


「……ただ一つを除いては」

「……え?」


ボソッと何か神崎さんが話すが、他のみんなが各々好きな昼ご飯を持って席に戻ってきて中断される。




「おぉっと、俺が座ろうとしていた席に先約だと!」

「悪いな樹、別の席に座ってくれ」


俺は席の端っこに座っているので、隣の席は1つしかないのだ。


「ふっ……何、無いなら作ればいいのだ」


樹はメガネをクイっとしながら言うと、神崎さんとは逆の方に椅子を移動する。


「ちょっ! 狭い狭い」


俺のお弁当を置くスペースを占領してくる樹。


「……何やってんのよ、あんたたち」


豊崎も帰ってきて早々、呆れた顔で俺たちに言い放ちながら神崎さんの隣に座る。


「ごめんねぇ神崎さん。バタバタしちゃって」


豊崎は俺と樹が神崎さんの食事スペースを少し占領していることに対して謝罪をしていた。


「……別に良い。どうせおにぎり一個だけだし」


寛大な心を持つ神崎さんからお許しを得ると、梓ちゃん達も戻ってきて愛花の隣に座っていく。

どうやらみんなが戻ってきたようだ。


「それじゃそろったことだし、食べようか」




俺が言うと、各々が「頂きます」と言って食べ始める。


「……それにしても、見事に入れ物がお揃いね」


お弁当箱を開けようとすると、豊崎は俺と愛花の弁当箱を見ながらそう呟く。


「いいだろう、愛花特製のお弁当だ」

「それはさっきも聞いたから。……でも花見で愛花ちゃんの作るお弁当食べてみたけど美味かったわよね」

「ありがとうございます豊崎さん!」


愛花と豊崎はニコっと微笑み合う。


「そのお弁当を今後も食べられるって訳だから、さぞ幸せなんでしょうね」

「まぁな。でも、豊崎も十分料理美味かったじゃないか。お弁当は作ってこないのか?」

「私には毎朝お弁当を作るっていう芸当は無理よ、面倒くさいし」


豊崎の意見が一般的な意見だろうな。愛花は料理自体を楽しんでいるようだし、そこの違いなのだろう。


「神崎さんも料理とかって普段はしないの?」

「……しないかな」


俺は絶妙なタイミングで神崎さんに会話のパスを渡したのだが、上手く潰されてしまった。

なかなか手ごわい相手のようだ。


「そっか。でも普段家で何してるの? 趣味とかってあるのかな?」


俺は負けじと追撃を続ける。


「……あまり家にはいない。親、帰ってくるの遅いから」


おぅ……広げづらい話題だ。


「そうなんだ。ってことはお散歩が趣味って感じかな?」

「……そうなりますね」


やっと健全な回答が来たことに安堵しつつ俺は続けることにした。




「お散歩っていいよね。健康的だし」

「あまり健康を意識しているって訳ではないかな。家でやることないからしてるだけだし」

「良い事じゃん。家でじっとしているより何倍か良いと思うし。神崎さんのおすすめスポットとかはあるの?」


俺はそれからもひたすら神崎さんに会話をし続けていく。せっかく愛花が連れてきた子なんだし、いろいろ知りたいからな。

話をしてみると次第に神崎さんの凝り固まったモノが崩れていくのが分かる。

神楽耶が言う通り、少し変わっているが根は良い子なのが理解できた。


「――あの、名前……もう一度聞いてもいいですか?」

「……え、あぁごめん。俺は和樹。改めてよろしくね」

「和樹、さんですね。覚えておきます」


少し内向的(ないこうてき)で人と接してこなかった理由があるようだが、それはまた次の機会にでも確かめてみるとしよう。

「面白かった!  続きが見たい!」

「今後どうなるの!?」


と思っていただけましたら

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なにとぞ、よろしくお願いいたします。

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