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8章 20話 未踏

(リーダーとして戦っていくのに必要なのは広い視野)


 【面影】の2代目リーダー。

 それが詞に与えられた役割。

 背負った肩書は、決して軽いものではなかった。


(突っ込んでいくことしかできないんじゃ、リーダーは務まらない)


 ――【聖剣】の鋼紅のように圧倒的な戦闘力があるのならそれでもいいかもしれない。


 だが【面影】内に限って見ても、香子という詞より優れた近接戦のエキスパートがいる。

 なら、何がある。

 詞がリーダーとして、パーティを束ねる者として選べる選択肢は何だ。

 そう考えた。


(だからこれが――ボクの答えだよっ)


 選んだ答えは――バランサー。

 遠近あらゆる間合いに対応し、時にサポートに回ることもできる。

 戦況に応じ、あらゆる穴に対応できる万能なピースとなる。

 そう決めたのだ。


「うおおおおおぉ!?」


 レイチェルを守る防壁が砕け始めた。

 

 詞が射撃戦に参入したことで、撃ち込まれる弾は倍以上となった。

 いくら鉄壁の防御でも、これだけ弾丸を叩き込まれては強度の限界も近いだろう。


「はぁぁぁ!」


 防壁が砕ける直前。

 香子は射撃をやめ、蛇腹剣を振るった。


 それと同時に砕ける防壁。

 そこでレイチェルは選択を迫られる。


「どっちを受けたいのかな?」

「そういうことかよ」


 レイチェルが苦々しく笑う。


 銃弾と蛇腹剣。

 作り出せる防壁は一つ。

 レイチェルは選ばなければならない。

 どちらの攻撃を受けるのかを。


「トラップ【防壁】」

 

 彼が防いだのは――銃弾。

 詞と透流の射撃を防壁によってすべて遮断した。


 一方、香子の蛇腹剣は防壁を迂回しながらレイチェルを狙う。

 そのままうねる刃は――


「【反転】」


 ――彼の裏拳に弾かれた。


 単発の斬撃なら反転トラップで弾ける。

 そう判断したからこそ、彼は防壁で射撃を防ぐことを選択したのだ。


 とはいえ、詞たちもそれくらいで万策尽きるわけがない。

 その程度の対応、織り込み済みだ。


「こっちもかよ……!」

 

 レイチェルが弾いた蛇腹剣。

 それは――濡れていた。


 香子は蛇腹剣を大きく振り回し――外の雨水を斬り払いながらレイチェルに攻撃していたのだ。

 だからたとえ刃を防いでも、付着していた雨水はレイチェルへと跳ねる。

 どれほどの効果なのかは分からないが、レイチェルの余裕を削るのには役立つだろう。


「この――」


 香子は防壁を回り込み、レイチェルへと迫る。

 斬れなくともいい。

 彼を後退させることができれば――彼を防壁の陰から追い出すことができたなら射撃が有効打となる。

 さっきの攻防もあって安易に刃を弾くこともできない。

 この状況なら――


「トラップセット【防壁】」


 香子を見据えたレイチェル。

 彼は手中の小石を――近くの壁に投げつける。

 直後、壁から防壁が伸びた。


「ぐッ……!」


 横合いから伸びた防壁が香子に直撃する。

 バランスを崩す香子。

 彼女は防壁に押しのけられ――詞たちの射線に踏み込んでしまった。


「「ッ」」

 

 誤射を避けるため、詞たちは一斉に射撃を止める。

 そうなればレイチェルも防壁に隠れる必要がなくなる。

 その隙に彼は防壁から飛び出し、より優位を取れる立ち位置へと移動した。


「ったく――仕方ねぇな」


 彼が選んだのは建物の奥へと続く廊下。

 ほぼ隙間なく防壁でカバーできる幅の狭い戦場。

 そうなれば詞たちは多角的な攻めを行うことができず、レイチェルは防壁一枚ですべての攻撃を阻むことができる。

 しかも建物の奥ということで、さっきまでの雨水を利用した攻撃が難しいというのも大きい。

 短時間でこれだけの判断を下すあたり、やはり彼の戦術眼は油断ならない。


「そろそろ――」


 何かを言いかけてレイチェルが固まった。

 ――彼の意識が戦場に向いていないように見える。

 とはいえ、こちらを誘っているだけかもしれない。

 詞たちは彼の様子を静観していた。


「……マジかぁ」


 そう言うと、レイチェルは頭を掻く。

 その声にはどこか陰鬱というべきか、愁いの色が宿っていた。



「――グレミィが死にやがった」

 そろそろ8章のラストバトルが近づいてきました。



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