転生時の条件提示に失敗した話 1
「いわゆる転生」を知らなかった女の子の話です。
転生交渉に必須の条件があるなんて知らなかった。
なんせ転生なんて初めてだったから。
私はこれから転生する。なぜ分かるかというと、交渉したからだ。白く光る″何か″と…………
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私は他殺された。町内で注意喚起されていた通り魔の、2人目のターゲットとなってしまったのだ。夜8時、塾の帰り道で後ろから突然刺されてそのまま。ドサリと倒れて思ったのは、「ここで死んだら今までの受験勉強全部パアか…」だった。
今日は親の迎えがないとわかっていて遅くまで塾で自習していた私が悪いのか?イヤホンで英単語を聞きながら帰っていた私が悪いのか?私の運が悪いのか?
…違う。違う違う。悪いのは通り魔の方じゃん。大きい声出せばよかった、あの後捕まったのかな。いや、1人目の時点で捕まえてて欲しかった。
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『こんなに未練を感じる魂は久しぶりです。』
「え?」
『あなた、死んだのですよ。けれど、死に際に生への未練が凄すぎて魂が上にも下にも導かれなかったのです。』
「…上下って?」
『天国と地獄です。』
一面真っ白の空間の中に、私がいる。塾帰りの格好のままだ。
コアだろうか。とても輝いている一点から、声が聞こえる。夢か現実か、わからない。
『あなたは生きる事への未練が凄すぎたのです。そこで提案です。もう一度、やり直してみませんか?』
「………何をですか?」
言いたいことは微妙に分かるのだが、確信が欲しくて問い返す。
『人生を、です。』
私は提案されるほど生きたがっていたのか…とどこか他人事のように思った。何でだろう。あ、受験勉強のこと最後に思ってたからかな。
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刺された夜、私は高校3年生で、季節は秋だった。所属していた吹奏楽部の大好きな先輩と大学でもオーボエを吹きたくて、必死に勉強をしていたところだった。
2年生時の私の学力では合格圏内ではなかったから、そこから必死に勉強した。苦手な理数科目を中心に塾、図書館様々な場所を利用して、毎日自習していた。その成果は順調に出て、角度はそこまで付いていないけど成績も右肩上がりに伸びていた。しかし、余裕できるほどではなかったため、1月の共通テストに向けて勉強を中心とした生活を続けていたのだ。
そりゃあ悔しい。だって本当に勉強中心の生活をしていたから。死ぬとわかっていたらもっと他のことに時間使えたのに。先輩との約束もしなかったし…。代わりに、休日に先輩を誘ってカラオケボックスで演奏していたと思う。
というか、せめて結果を出したかった。判定が欲しい。特に頑張った数学IIBで、どれだけ点数が取れるか知りたかった。あと、高い塾代を出してくれた親にも申し訳が立たない。
刺された場所を中心に、全身で痛みを感じながらも、その悔しさと申し訳なさで頭がいっぱいだったのだ。
小説って書くの超難しいですね