婚約破棄されたけれど、これはこれで 〜いえ、別にそう言う趣味というわけではないのですけども〜
もう、タグで全部バレてる気がするんですけど
「 ペルファル侯爵家、ベアトリーセ ・ ペルファル侯爵令嬢。イングヴェ ・ フルトクヴィストの名において婚約を破棄させてもらう」
「な、なぜそんな事に…」
侯爵令嬢ベアトリーセ ・ ペルファルは近衛騎士団団長フルトクヴィスト伯爵の息子、イングヴェ ・ フルトクヴィストの婚約者。美しく長い銀髪に翡翠のような瞳を持つ美少女だ。少しキツめの顔立ちではあるが、その微笑みは慈母の様でもあった。身長も高めでヒールを含めれば同年代の男子と変わらないほどでスタイルも抜群。王立学園の成績は常に上位で、立ち居振る舞いは淑女の鑑と言われている。
そして、その目の前で控えめな胸を張り仁王立ちしているのがイングヴェ ・ フルトクヴィスト、と名乗る12〜13歳の美少女だった。
「先日の魔王討伐の際に最後の最後で呪いを受けてしまってな。何やら運命自体を書き換える強力な呪いだったらしく、一生このままらしい…」
「まあ、大変ですわ」
「なんか嬉しそうだなオイ」
魔王討伐に参加した王太子を庇って代わりに呪いを受けて、少女になってしまったのだ。
もちろんその辺の事情は秘密だが。
「嬉しそうなどとそんなまさか。それで、今後はなんとお呼びすれば」
「………」
胸の前で手を組みにじり寄る姿は、明らかに嬉しそうなベアトリーセだった。
「こちらに責がないとは言えないが、これでは結婚など無理だから、無かった事にして欲しい、のだが?」
「その件に関しましては、もう少し時間をください。いろいろ、その、調整が必要ですので…」
「調整?」
扇の影でベアトリーセがニヤリと笑ったのはイングヴェからは見えなかった。
「それで、今はどのようになさっているのですか?」
「どのように、とは?」
「伯爵家の御子息が突然少女になったなどと、普通は信じられないでしょうし、次男とは言え行方不明の状態でどこかから少女を迎えると言うのもおかしな話ではありませんか」
「うぐっ。確かにその通りで、今は客として家にいる。何故かメイド達が張り切ってしまって今のところ服などは困っていないのだが…」
「ちっ」
「ん? 今舌打ちしなかったか?」
「まさか、そのようなことは致しませんわ。おほほほ」
扇で口を隠して誤魔化すベアトリーセ。
イングヴェは元は筋肉ムキムキの巨漢で、顔はいかつい男であった。
ベアトリーセとしてはそちらも嫌いでは無かったが今の姿がツボに入り過ぎていた。
ピンクブロンドのふわふわの長い髪をハーフアップにして、透けるような白い肌、光の加減で金色にも見える大きな瞳、柔らかそうな小さな唇とそこから漏れる可愛らしい声。長身のベアトリーセですら目を合わすのに見上げるほどだった身長は今や彼女の胸ほどまでしかない。
だが、態度や言動はイングヴェのままなのだ。萌え。
それはフルトクヴィスト伯爵家のメイド達にとっても同じことで、今のイングヴェを大層気に入っている。風呂に入れてはピカピカに磨き上げ、取っ替え引っ替え服を着せては悦に浸っていた。イングヴェには何が楽しいのか分からなかったが、この身体になってから出来ることもなく、周りが喜んでいるのならと付き合っているのだった。
「話し合いの最中に失礼するよ」
いきなりスタイルの良い金髪碧眼の美丈夫が現れた。イングヴェの主人にして親友でもある王太子だ。
「今回の件は私にも責任が…」
「カエレ!!」
イングヴェが王太子の発言を遮った。
「カエレとはご挨拶だな。これでも私はお前の主人なのだが…」
「この剣を構えることも出来ぬ身体で、騎士として仕えろと言うのか?」
「む、だから私が責任を取ってだな…」
「発言を遮る不躾をお許しください」
「なんだね、ペルファル嬢」
「申し訳ありませんが、法律上はまだ私の婚約者でございます」
「我が国では同性婚は認められていないはずだが?」
「途中から女になった場合の規定も無いはずですわ」
睨み合う王太子とベアトリーセの間に火花が散る。
「………」
イングヴェが途方に暮れていると、新たな来訪者が乱入してきた。
「殿下、一体何を…」
そう言ってやってきたのは王太子の婚約者マリア ・ マトレン ・ シュニッツラー公爵令嬢だった。薄紫のカールした髪の美女だ。チラッとイングヴェを見た次の瞬間に膝から崩れ落ちる。
「ど、どうした。大丈夫か?」
一番近くにいたイングヴェが駆け寄っると、ガシッと両肩を掴まれた。
「かわいいー」
その後、イングヴェを見た者達は皆同じような反応を起こし、国が傾きそうな勢いであったが、経済効果も凄まじく右肩上がりとなった。イングヴェは後に傾国の美女と呼ばれることとなるのだった。
なかなかバカっぽい感じに書けた気がするんですけどもどうですかね。ダメですか
なんか、魔法で美少女にされてなんとかって小説が面白かったので自分でも書いてみた、みたいなやつです。
スンマソン