純潔を捧げると回復魔法が使えなくなるけど我慢出来ない女ヒーラーは覚悟を決めました
「ゴブリンが4匹……いや、奥にもう1匹で全部で5匹か」
草むらで身を潜める男の視線の先、ゴブリン達が焚火を囲み何かの肉を食べながらくつろいでいる。完全に気を抜いているのか、武器を置き周りを警戒している様子もない。
「見てくださいエリック、斧に血がついています。ついさっきまで狩りをしていたんじゃないでしょうか」
エリックと呼ばれた大柄な男の隣、細身の美しい女が見つけたそれは、このゴブリン達が集団での狩りの後で疲労と油断が生じていることを推測させた。
「まさに好機、だな。よし行こうカトレア。5匹も倒せば次の町の宿で個室が取れるぞ」
エリックはそう言って剣を構え、勢いよく草むらを飛び出そうとした。―が。
「……私はその、同じ部屋でもいいんですが」
カトレアのその言葉に盛大にすっ転んだ。顔面を強打し、その音でゴブリン達も驚きこちらに気が付いた。
「な……ぐっ!う、うおおおおぉぉぉ!」
やけくそ気味に走り出したエリックは一気に一番近いゴブリンに近付き、慌てて武器を拾おうとしたその右腕を斬り飛ばした。甲高く耳障りな鳴き声を上げてその場に倒れこむゴブリンの首元に剣を突き立てとどめを指す。剣を引き抜くと同時にゴブリンが左右から二匹同時に飛び掛かる。
「ぐぅっ!」
右側のゴブリンの胸を剣で貫く。一撃で絶命させるが左側のゴブリンから棍棒の一撃を左肩に喰らってしまった。恐らく骨が折れているだろう激痛が走る。
「癒しの光よ、ヒール!」
カトレアが短く詠唱し終わると同時に小さな光がエリックの左肩を包み、瞬く間にその傷を癒し骨を繋げた。そのままお返しとばかりにゴブリンの左腕を切り落とし、残るは二匹だ。一匹がこちらに向かって駆け寄り、目の前に迫った瞬間に身を低くした。エリックが視線を落とした直後、距離を取っていたゴブリンが放った矢が頬を掠め、赤い筋が一本刻まれる。
「エリック!」
「ちぃっ!大丈夫だ!……小賢しい真似を!」
低い姿勢からエリックの胸を目掛けて斧を振り上げようとするゴブリンを、その斧ごと蹴り付ける。ゴブリンは小さく悲鳴を上げて吹っ飛び、受け身を取れず体を打ち付ける。エリックの足も斧の刃が当たり出血しているが気に留めずしっかりとどめを刺し、最後に一匹残り慌てる弓を構えたゴブリンも近付いて斬り伏せた。周囲に他のゴブリンや魔物の姿はなく、2人は見事戦闘に勝利した。
「痛っ!染みるな……」
「我慢してください、薬草は染みれば染みるほど効果があるって言いますよ」
「それ、お袋もよく言ってたな。迷信だと思ってたけど」
「そんなことありません……よっと!」
「うがっ!」
ゴブリン達との戦闘が終わり、2人はエリックが足に受けた切り傷の治療をしていた。薬草を傷口に塗り、包帯を巻く。回復魔法が使えない冒険者パーティでは一般的な治療法だ。
「……しかし薬草なんか使わなくても、回復魔法で治しちゃ駄目なのか?」
至極真っ当な疑問だ。なぜならカトレアは生命と再生を司る神ヴィシュラーマを信仰するヴィーラ教の巫女である。ヴィーラ教の巫女は清らかな心身で神に仕えることで生命を司る魔法、俗に言う回復魔法を操ることが出来る。
「こ、これくらいの傷なら薬草で治した方が良いんですよ!いざと言う時に魔力が残っていないと困りますし、魔法は温存しておかないと!」
「でもカトレア、君は優秀な巫女だ。魔力が尽きて回復魔法が使えないなんてこと、今までの旅で一度だって―」
「今までは今までです!これからも大丈夫という保証はありませんよ?ありませんとも!」
「それはそうかもしれないが……なんだかやけに必死なような」
「そ、そんなことはありません。それより日が暮れる前に次の町を目指しましょう。さあ、出発です!」
「……わかった。そうしよう」
戦士エリックと巫女カトレアの2人は冒険者だ。魔王が勇者に討伐されておよそ100年が経ったこの世界には、未だ魔王が生み出した魔物が蔓延っている。それらは魔王の死後勢いを失いつつも環境に適応し、最早絶滅させることは難しいほどにこの世界に馴染んでしまった。人間に対し敵意を持つそれら危険な魔物を退治して世界を旅する者達を冒険者と呼んだ。冒険者は数人でパーティを組んで旅をするのが一般的で、エリックとカトレアは2人のパーティを組んでいる。過去には他にもパーティメンバーがいた時期もあったが、いずれも抜けてしまった。その理由は2人の関係にある。
「さっきの話の続きですが、その、部屋は一緒でもいいんじゃないでしょうか?」
「いやいやいや、駄目だろう」
「どうしてです?恋人同士が同じ部屋に泊まることがおかしいですか?」
そう、2人は冒険者としてのパートナーであると同時に恋人同士でもある。過去に同じパーティを組んだ者達は皆、甘い空気に滅入ったか2人の邪魔をするのは悪いと思ったか、いずれも離れていった。
「……俺の理性が持たん」
「エ、エリック……」
実は2人はまだ体を重ねるには至っていない。エリックがへたれなのか?いや違う。カトレアが許さないのか?それも違う。若く体力が有り余り、心底愛し合う男女である、お互いに本心ではそうなることを強く望んでいる。ではなぜか。答えはカトレアの信仰するヴィーラ教の教えにある。
「俺達は戦士と巫女、2人だけのパーティだ。君が回復魔法を使えなくなってしまっては冒険は続けられないぞ」
「……わかっています」
生命と再生を司る神ヴィシュラーマは男の神であり、酷く嫉妬深いとされている。ヴィーラ教には巫女がその純潔を男性に捧げた時、神に与えられた力である回復魔法を失うとされている。巫女が愛する男は神のみであり、それを裏切った者からは力を奪う、ヴィシュラーマはとんでもない処女厨であった。
「この冒険がいつまで続くかはわからんが、金が貯まり気に入った場所が見つかれば2人で家を買って、そこで夫婦になろう。それまでは互いに清い体でいるんだ。大丈夫、2人なら耐えられるさ」
「……はい」
エリックは自分に言い聞かせるようにそう言ったが、カトレアは不服そうに頬を膨らませた。
その後夕陽が沈む前に近くの町に着き、2人はまず冒険者ギルドへ立ち寄った。先の戦闘で仕留めた5匹のゴブリンを換金するためだ。受付でエリックは2人分の小さな紙切れを差し出す。
「頼む」
「はいよ、……ゴブリンを5匹、と。500てとこだな。いいかい?」
この小さな紙切れは大陸の全ギルド共通で使用可能な冒険者証書であり、魔法の力が込められている。それは持ち主の中にある魔力と連動し、倒した魔物の魔力を吸い、持ち主がどんな魔物を何匹倒したかを漏れなく自動記載する優れものだ。
「500?そんなにいいのか?」
「ここいらのゴブリンは中級以上、上級未満でそこそこ手強い。あんたら中々の腕みたいだな」
事実エリックとカトレアは腕の立つ冒険者だった。2人だけでの戦闘が多かったため、どちらかが動けなくなれば1人で戦わなければならないという緊張感を常に背負いながらの旅は、4、5人以上が基本である他の冒険者達よりも多くの経験となったのだ。
「カトレア、換金してきたぞ」
壁に貼り出された魔物の退治依頼を見ていた相棒に報酬の半分が入った袋を手渡す。中身を見てカトレアは少し驚いた顔をした。
「思ったより多いですね」
「ああ、何か美味いものでも食おうか?」
「……いえ、少しお買い物をしてもいいですか?」
「わかった。それじゃあ先に宿に向かってるから晩飯で合流しよう」
金銭的に余裕がある時は相手の金の使い道に口を出さないのが2人の暗黙のルールだった。エリックには女が戦闘に関係ない装飾品に金を使う意味はわからないが、それを口に出してもろくなことにならないのはわかっている。
一時間ほど待ってカトレアが宿に戻ったあと、2人は夕食を取り別々の部屋で夜を明かした。食事の最中、何を買ってきたのか聞かれたカトレアは曖昧に笑うだけだった。
翌日、昼前に宿を出た2人は町から東にある森の中を歩いていた。
「魔女の残した結界ってどんなものなんだろうな」
「……危険なものではないみたいですが」
「まあ、行ってみればわかるか」
前日カトレアが冒険者ギルドで見つけた依頼書の中に悪戯好きな魔女の残した結界の調査というものがあり、2人はそれを受けることにした。すでに別の冒険者が何度か受けた依頼だが、より正確に把握するために複数の冒険者に依頼しているそうだ。危険度は低く報酬もそれ相応だが、カトレアが珍しく受けたいと主張した依頼だった。それに反対する理由もなかったのだが、エリックが一つだけ気掛かりなのはこの依頼を受けた時の受付の男の、なんとも形容し難いこちらを見透かしたような含み笑いだ。その上で最後に一言、冒険者になって依頼を受けるようになって初めて言われた言葉―。
「まあなんだ、楽しんできな」
あれは一体どういう意味だったのか。そんなことを考えている内にどうやら2人は目的地に着いていたようだった。森の中を流れる小川の向こう側に小さな家があった。外壁にはツタが生え広がっており、外からでは人が住んでいる気配は感じられない。
「あれが多分、魔女の家だと思います」
「行ってみよう」
扉の前まで来てみてもやはり人が住んでいる気配はなかった。扉に鍵はかかっておらず、すんなりと開けることが出来た。家の中は薄暗く雑多に物が散乱している。壁には本棚と薬棚が並び、大きな窯や見たことのない道具もあり、いかにも魔女の家という様相だ。
「すごいもんだな。……それで結界ってのはどういうものなんだろうな。―カトレア?」
「……エリック、ごめんなさい!」
「え?」
カトレアが扉を閉めると、一瞬にして家の中の空気が変わった。空間が歪み、雑多に物が散乱した部屋から殺風景な白壁の部屋に変質した。天井には薄明かりが一つだけ灯り、部屋の中心には唯一の家具―奇麗にベッドメイクされたダブルベッドが置かれている。
「な、何が起こった?」
「これが魔女の結界です。男女が2人で部屋に入ることで発動し、条件を満たさない限り絶対に出られない空間に閉じ込められるんです」
「どんな結界か知っていたのか?」
カトレアは黙って頷く。エリックは依頼書の内容を確認していなかった。カトレアがしっかり把握していると言ったので今回は任せていた。そして彼女はその内容を正確には伝えていなかったのだ。
「……これを、読んでください」
そう言って手渡された依頼書に書かれた内容は、エリックが思っていたものとは大分異なっていた。
〇依頼内容
東の森にある魔女の残した結界の解除。危険度★☆☆☆☆
〇詳細
森の中に小さな家がありそこに男女が入ると【男女の営みによってのみ解除される結界】が発動する。
一時的な解除は一度の営みで可能だが、完全な解除は設定された回数に達する必要があるため多くの冒険者に協力を求む(残り217回)。
〇報酬
回数×50
「な……」
エリックは絶句するしかなかった。頭の整理が出来ていない。だがそんなことはお構いなしに事態は進行していくのだ。
「なんで脱いでるんだ!?」
「え?なんでって……依頼書読みましたよね?」
「読んだけど……いや待て、落ち着けカトレア!」
目の前には下着姿の恋人の姿があった。無論この状況を作り出したのは他ならぬカトレアであるため、本人はすでにヤる気満々準備万端である。なんという温度差!が、しかし、2人にはここで一線を越えられぬわけがあったはずだ。それはいいのかカトレア!
「回復魔法が使えなくなるぞ!それはまずいだろう!?」
「他の方法で役に立ちます!アーチャーとか、シーフとか、モンクとか……転職して頑張ります!」
「回復役はどうするんだ?」
「ポーション飲みながら戦いましょう!」
「あれは苦くてまずいんだ!」
「美味しいポーションを探します!いやむしろ作ります!」
「無茶苦茶だ!そんなことで―」
「エリック!!」
恋人の今まで聞いたことのないほど大きな声に思わず気圧される。エリックにとっては馬鹿々々しく感じられるこの状況だが、カトレアは本気なのだ。
「私達、恋人同士になってどれくらい経ちました?」
「……もうすぐ2年か」
「その間恋人らしいこと、全然してないですよね」
「い……や、そんなことはない、だろう。多分」
「ありますよ。回復魔法のことがあるから同衾はなしにしたって、ハグもキスも、手を繋ぐことすらほとんどなかったじゃないですか!」
「……」
事実である。要は一線さえ越えなければいいのでそれ以外にイチャつく分には処女厨神ヴィシュラーマの怒りも買わないのだが、2人は必要以上とも思えるほどストイックな関係を築いていた。いや、正確にはエリックが全くと言っていいほどに手を出さなかったのだ。
「もう、我慢出来ないんです……エリックは全然そんな気にはならないのかもしれないけど、私はエリックに触れたいんです!」
「……うおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
「!?」
突然、エリックは剣を抜き壁に向かって駆け出した。そしてそのまま全力で白壁を斬りつける。しかし壁の材質とは関係のない何か魔法的な力によって弾かれ、傷一つつけることが出来ない。それでももう一度、二度三度と一心不乱に斬りつける。当然全て弾かれてしまう。
「む、無理ですエリック!やめてください!」
「俺だって!」
「え?」
「俺だって、君に触れたいに決まってるだろう!」
「!」
「でも、君の手に、唇に、体に触れてしまえばその先へ進むことを我慢出来る自信がなかったんだ……。俺が自分の欲望のために君から回復魔法を奪うことなんてあってはならない。そうだろ?」
エリックも悩み、耐えていたのだ。健全な年頃の男にとっては生殺しの2年間。辛かっただろう。ただの不能野郎ではないのだ。その背中を一糸纏わぬ姿のカトレアが抱きしめる。だが鎧越しではその体温がエリックに届くことはない。お互いが生まれたままの姿でなければ、本当の温もりを伝え合うことは出来ない。
「私達、きっともう先に進むべきなんです。私はもう覚悟は出来ています。さあ、エリックも……」
そう言いながら丁寧に鎧を脱がそうとするカトレア。しかしまだエリックは踏み切ることが出来ない。
「……いややっぱりなあ」
「ええい、まどろっこしいです!」
「むぐっ!?」
カトレアは鞄の中から血のように赤い液体の入った瓶を取り出して口に含むと、屈強な体をこちらに向き直らせ少しカサついた唇に押し付けた。そしてその液体をそのままエリックに口移しで飲ませた。
「何を飲ませた!?」
「ふ、ふふふ。何だと思いますか?」
普段の彼女には似つかわしくない挑発的な口調、薄ら赤く光る眼、この変化には覚えがあった。
「まさか、狂化剤か!?」
「凄い!正解です!流石エリック!」
狂化状態とは理性と痛覚の一部を失うことで身体能力のリミッターを外し、飛躍的に戦闘能力を上げた状態のことで、これを基本戦術として利用する狂戦士という職業もある。狂化剤とは特殊なキノコを原材料としてこの狂化状態を作り出す薬だ。また冒険者の間ではこれをごく少量服用することで媚薬として代用することが出来るという使用法が広まっている。
「昨日の買い物は、これ、か」
「うふふ、薬が効いてきましたね。その獣のような眼……素敵です!」
エリックのこれまで抑えてきた理性が、段々と崩壊していく。目の前の美女の煽情的な身体から目が離せない。
瑞々しく輝く唇、抱きしめれば壊れてしまいそうな肩、大き過ぎず小さ過ぎずハリのある胸、細く引き締まった腰から太もも、その全てに今すぐ飛びつきむしゃぶりつきたい欲求を、最早抑える術はなかった。
「く、そぉぉっ!カトレアああああぁぁぁぁ!!」
「エリックううううぅぅぅ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉおおおぉ!!!」
「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁあああ!!!」
後日、冒険者ギルドの受付の男が語ったことだが、あの依頼で一度にあれだけの報酬を得た冒険者は他にいないそうだ。
「全く、若いってのはいいよなあ」
およそ2年後。
「オークが4匹…… いや、奥にもう1匹で全部で5匹か」
草むらで身を潜める男の視線の先、オーク達が焚火を囲み何かの肉を食べながら休んでいる。だがけして油断した様子はなく、1匹のオークが常に周囲を警戒している。
「見てくださいエリック、あの肉はロックワームの肉です。あの大物を狩ってきたあとなら相当に疲労しているはずです」
「よし、行こうカトレア」
「はい!」
そう言うと2人は鞄からそれぞれ虹色に濁った薬瓶を出すと一気に飲み干した。瞬間、2人の肌は紅潮し、目は赤く光を帯び、筋肉も膨張したように見える。もしやこれは狂化状態か!
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉおおおぉ!!!」
「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁあああ!!!」
やはりそうだ!狂化剤を飲んだ2人は真っすぐにオーク達に突撃し、壮絶な戦いが始まった!肉が爆ぜ!血が吹き荒れ!鉄と鉄がぶつかり合う!まさに地獄の戦場だ!!
ここで2人の戦いの最中ではあるが、あのあとからここまでの2人に何があったのかを語らせてほしい。あの結界を解除して依頼を達成したあと、当然と言うべきかカトレアは回復魔法を失った。転職する覚悟を語っていた彼女だが現実は非情であり、巫女以外の道を知らぬ非力な女になれる戦闘職はなかった。が、しかしあの結界の中での出来事にヒントがあった。そう、それが今まさに目の前で起きていることに繋がるのだ。
「どおおぉりゃあああああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁあああ!!!」
「はあああああああああぁぁぁぁあああああぁあぁぁぁぁああ!!!」
見よ2人の勇ましき姿を!元々屈強な戦士であったエリックはまさに鬼神の如き強さでオークを圧倒し、か弱いカトレアも双剣を素早く繰り出し決定的なダメージを重ねている!これが狂化状態!恐るべき戦闘能力向上効果!
―話の続きに戻ろう。狂化剤に目を付けた2人はそれを戦闘に活かす術を考えた。また回復を薬草やポーションに頼ることになるため、必然カトレアが目指す職業は薬師と決まった。薬師に必要な才は筋力や魔力ではなく知識と繊細さ、幸運にもカトレアをその両方を備えていた。
そしてカトレアは町の薬師に弟子入りし薬学を学び、その間エリックは一人で他の冒険者パーティに助っ人として入ることで生計を立てた。
そうして時が経つことおよそ1年、狂化剤に自動回復効果を混ぜた新薬を開発するまでに至ったカトレアは再びエリックとのパーティに復帰した。
「ふんんんんぬぅああああああああああぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「いいぃぃぃぃぃぃぃぃぃやあああああぁぁぁぁぁぁあああぁ!!!」
その後の2人はお互いが狂化兼自動回復剤を飲みながら魔物の群れに突っ込み壊滅させる戦闘スタイルを確立させ、一部では有名な実力者パーティとして知れ渡ることになる。ただ2人が有名になったのは他の理由もあり……。お、そうこうしてる内に戦闘が終わったようだ。オーク5匹の死体の中に肩で息をする2人の姿がある。
「はぁ、はぁ、カトレア!!」
「ふぅ、んんっ、エリック!!」
ああ、いけない!2人は狂化剤の効果が続いており、戦いの興奮そのまま抱き合い熱く唇を重ね合い出した!!こうやって戦闘の度に盛ってしまうから一部で有名になっているというのに!!
……とにもかくにも2人は無事冒険者として順調な道を歩み始めた。目標である2人で家を買い、夫婦となる夢もそう遠くはないであろう。愛に狂う男女に幸あらんことを。
皆さま良いお年を~。