飛行魔法
王国城下外門前
外門までは、時折早朝に動く馬車に混じって移動して来たが、城下の外から隣町まではかなり距離があり、人の通りも少ない。
人目を気にする必要が無い為、最短での移動が可能になる。
外門から少し離れた場所に、志朗とアルメルシア、エミリーの姿があった。
「ここから、魔法で空を飛んでの移動になります。
速かったり、気分が悪くなったらすぐに言ってくださいね」
志朗の言葉に、アルメルシアはゆっくり頷いた。
「分かりました」
「魔法使い様の魔法を体験するのは初めてなので、期待していますね」
無表情で言うエミリー。『期待している』と、言っていたがその真意は分からない。
「で……では、いきます!」
志朗は大杖を持ち、力強く地面を打ち鳴らした。
3人の周囲に円を描く様に風が吹く。
感嘆の声を上げるアルメルシア。
そして、ゆっくりと3人の身体が浮き上がり、地上から10m程上昇した所で止まった。
ダリアから教えてもらった魔法の一つだ。複数人で実践するのは初めてだったが、上手くいったようだ。
「では、移動します」
先程よりも3人を取り巻く風が強くなり、ゆっくりと3人の身体が進行方向に進み始めた。
「大丈夫ですか?」
志朗の言葉に、2人は頷いた。
2人共問題無いことを確認すると、志朗は少しずつ速度を上げていく。
更に、風の抵抗を受けることが無いように、魔法で風を操作する。
辺りが明るくなってきた。東の空から太陽が顔を出した様だ。
西の魔法使い達の隠れ里は王都から途中馬を変えながら早馬で片道5日程。
空を飛べば休憩を挟みながらでも1日半から2日程で着くはずだ。
目的地の大体の場所は昨夜、ダリアが持ってきた地図で把握している。
――2人の負担にならない程度で、なるべく速く。
太陽を背に志朗達は更に速度を上げた。
2人の体調を確認しながら、空を飛んで移動する事数時間。
長時間、長距離の飛行で無理をする訳にはいかないと、3人は休憩の為に近くの街に寄る事にした。
そこは、王都に次いでとても大きな街だった。
人々が往来を行き来し、客寄せの声がそこかしこから聞こえてくる。
街路の端には所々木が植えてあり、レンガの街並みと街路樹が、美しい街並みを作り上げていた。
時刻は昼を回った所。昼食時ゆえに店が軒を連ねる路地、主にレストランやカフェ、屋台などに人が殺到し、かなり混雑していた。
「凄い人ですね」
「この街は王都から近い場所の一つなので、人も店も多く集まっています。私も昔一度来た事があります」
辺りを見回しながらアルメルシアは言った。
「この時間帯ですと、食事処はどこも満員。
手近な屋台で購入して、ベンチ等の座れる場所で食事する他無さそうですね」
「外で食事するのは久しぶりね」
人混みを掻き分けながら言ったエミリーに、アルメルシアが笑い掛けた。
「なるべく急がねばなりませんが、あまり長時間の飛行でルシア様のお身体の負担を大きくする訳にはいきません。
食事が済み次第、馬車を捕まえて次の街まではそれで移動するという形を取ろうと思いますが、宜しいですね?」
エミリーの質問の体を取った確認に、戸惑いながらも頷いた志朗。
そして、アルメルシアは座る場所を探しながら待機。エミリーは、アルメルシアの護衛を勤め、志朗は屋台で軽食の買出しに行く事になった。




