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不穏な会話


 志朗達は、ダリアに見つかる前に無事その場を離れる事に成功した。


「ここまで来れば恐らく大丈夫でしょう」


 オトモが耳を細かく動かしながら言う。


「先程の探知の速度はかなり早かったですよ!

 この調子で練習していきましょう!」




 引き続き、オトモと一緒に城の中を移動しながら探知魔法の練習をしていく志朗。


 少し前まで人並みの聴力だったものが、探知魔法を使うと100m以上先の音まではっきりと聞こえる他に、先程の様な直感的な感覚も鋭くなっている。


 開始直後はダリアに見つかってばかりだったが、今はダリアに見つかる前に探知し、回避出来るようになった。


 ――まだこの感じは慣れないけど、この調子で練習していけばきちんと使えるようになるはず……。


 不意に、志朗の前を歩いていたオトモが懐をまさぐりながら口を開く。


「ところでシロウ様、


 お腹空いてません?」


 オトモが、おもむろに懐から何かを取り出した。

 現実世界の懐中時計と似たような見た目をしているそれは、2本の針がそれぞれの模様を指している。


「そういえば……」


 元いた世界で、友人の優介と軽く食事をしてから別れたのは午後7時半頃。

 その後すぐに老婆に出会い、こちらの世界に来てからは何も食べていなかった事を志朗は思い出した。


「時間は少々遅いですが、探知魔法の練習もひと段落着きましたし、軽く夕食を取りましょう!

 この時間でしたら、兵士達が使っている食堂がまだ開いている筈です」


 オトモの言葉に頷き、志朗とオトモは食堂へ向かって歩き出した。



 初めは迷子になっていた志朗だが、城を歩き回ったせいか、探知魔法が使えるようになったからか、大分城内の様子が分かるようになった。これなら道に迷う事も無さそうだ。


 オトモが足を止める。壁の向こうには、兵士達が利用する食堂だろうか、人のいる気配がする。


「今、軽食を貰ってきますね。

 シロウ様は、この辺りで待っていてください」


 そういうと、オトモは曲がり角を曲がって駆けて行ってしまった。


 日が沈んでから体感的に2、3時間程。

 恐らく20時を回っている頃合だろう。


 その時、志朗の耳が壁の向こうの話し声を拾い上げた。


「しかし……失踪した魔法使いも陛下達に呪いを掛けた者の行方も未だしれずとは、情けない話だな……」


 志朗は、壁の向こうの話し声に耳を澄ませる。普段なら聞こえる事は無いだろう壁の向こうの物音も、探知魔法を使うと鮮明に聞こえてくる。


 ――……男の人が2人だけ。後はもっと奥の方……厨房かな?


 オトモが走る音も薄ら聞こえている事から間違いないだろう。

 この時間は兵士は見回りに出てしまっているのか、食堂の人気は殆ど無い様だ。


 先程の兵士の声に応える声がする。


「仕方ないさ。俺達の様な普通の人間とは種類が違う。

 人間が魔法使いを見つけるなんて至難の業だろう」


 壁の向こうで聞き耳を立てている者が居る事を兵士達は知る由もなく、兵士2人は話続ける。


「魔法使いか……未だに何を考えているのか分からない連中ではあるがな……昔の人間がやった事を未だに根に持っていると言うじゃないか。

 もしや、今回の事件も……」


「口を慎め。誰が聞いているか分からないんだぞ。

 ……まぁ、否定はしきれないが」


「そもそも、何故先代の王は自身の妻に魔法使いの女を選んだんだ?友好を結ぶだけではだめだったのか?


 しかも今代の王の姫君は、魔法使いからも嫌煙される()()()だと聞く」



 ふと、厨房の正面入口で何かが動く気配がした。


 ――……今の。


 それが、先程の話の渦中の人物である事に気付いた志朗は、すぐに後を追った。




 志朗が辿り着いたのは、城の中央辺り。

 そこは中庭になっているようで、裏庭とは違う観賞用の美しい草花が植えられている。


 風通しも良く、柔らかな風が花の香りと共に志朗の頬を撫でていく。


 そして、花壇に腰掛けた1人の少女の姿。

 毛先に行くに従い金色に変わる美しい水色の髪。

 こちらに背を向けているため、志朗が近づいていても少女は気づかない。

 志朗は、恐る恐る声を掛ける。


「……アルメルシア……姫様」


 細い肩がビクリと震え、彼女はゆっくりとした動作でこちらに振り向いた。





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