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給仕


 中から出てきたのは、淡い茶色の髪の女性だった。


 髪は肩口でバッサリと切り揃えられ、黒い給仕(メイド)服を着ている。手には水の入った桶とタオルを持っていた。


 給仕が出てきた扉の向こうには、白いシーツに横たわる人と、その手を握るアルメルシア姫の姿があった。


「魔法使い様。こんな所まで何の御用でしょうか」


 冷たく言い放った給仕は、後ろ手で扉を閉め志朗の前に立ちはだかった。


「あ……えっと、見回りを……」


「こちらは兵士が常に巡回しております故、わざわざ御足労頂かなくても結構です」


 給仕は背が高く、志朗は見上げる形になる。フレームの無い彼女の眼鏡が照明の灯りに反射して、表情は伺えない。


「ここには何もありません。どうか、お引取りを」


「……えっと、すいませんでした」


 困惑しつつも、志朗は頭を下げて踵を返す。


 その時、廊下の角から軍服を着た男性が歩いてきた。給仕が言っていた巡回兵の1人だろう。

 階級章と思しき飾りが軍服の襟に付いており、年配ではあるがかなり体格が良い。

 兵士が、こちらの様子に気付き早足で駆け寄る。


「何かありましたか?」


「いえ、大丈夫です。道に迷ってしまっただけの様ですので」


 事務的に返す給仕に、兵士は笑みを浮かべながら頷いた。


「そうでしたか。

 では、私がお送りしましょう。こちらです、ダミア様のお弟子殿」


 給仕に向かってもう一度頭を下げ、兵士の後について行く志朗。


 後ろが気になり数度振り返った志朗だが、階段を降り、その姿が見えなくなるまで給仕は志朗をじっと睨みつけていた。




 真っ直ぐ廊下を進みながら、兵士は口を開いた。


「大丈夫ですか?この城は広く、入り組んでおりますから……」


「はい……。お忙しいのにありがとうございます」


「……あの給仕が気になりますか?」


「……いえ、」


 兵士の言葉に、煮え切らない返事の志朗。

 兵士は苦笑した。


「どうかお気を悪くしないでください。

 今、城の者達も気が立っているのです。

 あの一角にいるのは、皆呪いを受けた方々ですから」


「……あの茨の痣ですか?」


 志朗の言葉に、兵士は頷いた。


「えぇ、王族の方々に公爵、大臣のご息女とご子息。今呪いの進行の遅い王と姫を合わせると6名程」


「6人……」


「痣の広がる速度も一定ではない。いつそれが全身に及ぶか……皆気が気ではないのでしょう」


 兵士が廊下の突き当たりを右に曲がる。志朗も後に続いた。

 その先の廊下には、壁に掛けられた巨大な肖像画がずらりと並んでいた。



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