隠れ鬼
――『あれは』の後、なんて言おうとしたんだろう?
そんなに自分は妙な格好をしているだろうか?と思いながら志朗は自身の姿を確認する。
黒地のローブに黒い風呂敷。しかしダリア、ローレンを含めた他の魔法使い達が着ていたローブとは違い、志朗が着ているローブは裾にオレンジと金色の糸で太陽の様な刺繍が施されていた。
大分着古したものなのか、ローブの内側には何ヶ所か繕った後が見える。
それ以外に奇妙なものといえば、志朗が背負っているスクールバッグくらいのものだろう。
そこで志朗は、はたと足を止めた。
――…………まさか俺が糸目だから、変な顔だと思われてる?
この世界に来てから、今の所糸目の人間を見ていない。もしかしたらこの世界に糸目は居ないのかもしれないと、謎の思考に囚われる志朗。
――いや、まさか……。
考え事をしながら廊下を進み、階段を上る。
暫く歩いていると、また階段が見えた。
その時、階下から微かにヒールの音が聞こえた。
志朗は慌てて身を屈める。
階段の柵の間から恐る恐る顔を出すと、階下にダリアがいた。鮮やかなオレンジの髪はとても目立つ。
靴音は、次第に階段から遠ざかっていった。
――良かった。見つかってない……。
「バレバレだよ」
「ひっ……!?」
上擦った悲鳴を上げ振り向くと、そこには先程まで階下にいた筈のダリアがいた。
ダリアは呆れた表情で「情けない声出してんじゃないよ」と言いながら志朗の額を弾いた。俗に言うデコピンである。
「痛った……」
額を抑えて蹲る志朗。
「もう1回だ。出来るようになるまでやるよ」と言い残し、また煙の様に消えたダリア。後には、額を赤くした志朗だけが残された。
「また会ったね」
「もっと感覚研ぎ澄ましてみな」
「頭隠したってバレバレだよ」
ダリアに見つかってから早30分。
志朗はダリアに見つかっては額を弾かれていた。その数は先程ので4回……。
――おでこ痛い……。
額は痛むばかりで気配の探り方は中々上手くならず、以前よりは音の聞こえる範囲が広がった様な気がするが、ダリアから逃げるにはまだ力不足という他無かった。
――もっと感覚研ぎ澄まして……これ以上研ぎ澄ますには、どうしたら……。
志朗は、気配を探りながら考える。
角を曲がり、行き止まりは折り返す。
当てもなく歩いていると、ホテルのように等間隔に扉のある廊下へ出た。
部屋は満室らしく、耳を澄ますと扉の向こうから微かに物音がしている。
その時、左側にあった扉が開いた。




