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百城  作者: LJW(中国)
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第九章 いつでも倒れるかもしれない死人

「わ〜わ〜、近くにいる人マジで異世界の住民みたい」

 ちょこちょこ足を止め、興味津々に周囲を見ている。そんなカイを見てモリも足を止めて言った。

「カイ、買い物済ませたら異種族街道いく?」

「異種族街道?」

「そうよ、そこには高層ビルがなくいろんな種族の機械人に家の暖かさと人と人の間の親切さを感じさせることができるところなのよ。カイが住んでた時代の言葉でいうと異種族街道で栄えてる異世界文化かな。それか……闘具街にでも行ってみようか。闘具が欲しいって言ってたでしょ」

 闘具って一体なんなの?とカイは心の中で疑問を抱いた。

 あの午後からカイはずっと闘具が欲しいと考えていた。何分か前にもまた「闘具の達人見て見たいな、機会があれば」の考えが浮んでいた。

 モリの言葉により、古い考えと新しい考えが脳の中で発酵し、心の中で闘具に対する欲がより増してきた。いますぐに闘具街に行ける転送ドアがあればいいなとも考えている。

「じゃ、いこ……」

 しかし、そうしたらまたモリの嫌な記憶を呼び起こすのだろう。闘具に比べてモリが悲しむ顔を見たくない。だから、カイは心の中で一番期待していることを一旦置いて行くところを決めた。

「やっぱり異種族街道行こうよ」

「私の気持ちはもう気にしないで、大丈夫だから。モコがいない間私たちむしろ−−−」

「いまあまりお金ないから、もし好きな闘具があったら買えないとその場を離れたくなくなるな。そんな俺かわいそうでしょ」

 言葉がこもるカイを見て言い訳だとわかっているモリは小声で笑い出した。

「ふふふ、カイはいい人だね」

 モリの褒め言葉にカイの脳裏で思わずあのセリフが蘇った。

「いい人だから、絶対私よりいい子が見つかるよ。だから、ごめんなさい」

 カイは過去の失敗した告白の陰から逃げ出せないわけではなく、なぜかわからないがただ心の中でモリにいい人だと言われたくない。

「そうやって言わないで」

「だって本当だもん。冗談じゃないわ」

「そうであってもやめて欲しい。もし俺を褒めるのならば、かっこ、かっこいいとかの言葉で褒めてね。だってさあ、イケメンが何をしてもかっこいいからな」

 モリは我慢できずに目線を落として笑った。

「あ!なんで俺がイケメンじゃダメなんだよ。普通のイケメンより肉が多いから?俺知ってるからな、今でもかっこいい。痩せたらもっとかっこいい。想像できないくらいにかっこよくなるからな」と言った後カイも我慢できずに笑い出した。

 楽しいひと時に浸っている二人は後方から食いつくように二人を見ている視線に気づくこともなかった。視線は少し離れている男からであった。

 カイが人間であることがバレてしまった?そうではないようだ。戦闘が終わってからずっと二人との距離を保ちながら尾行していたが情報の提供や仲間に連絡を取るなどの行動はなかった。

 しかも、今のカイの行動や話し方からして自分の正体がバレてしまうなどの可能性はない。他の種族の機械人からしてカイはごく普通の機械人である。男に超能力があり、すなわち、カイの内部構造を見抜くことのできる透視眼がなければカイを人間だとわかるはずがない。逆に考えてみると、もし男が人間を標的として尾行するのであれば何か目的性を表に出すに違いないが、男は何もしなかった。

 もしかしたら男は標的を尾行する痴漢?しかし、そうではないように見える。男は興味津々な表情があらわになっていて、その好奇しんを抱く相手はカイであった。しかも、その表情はいやらしい表情ではなかった。

 唯一わかることは普通の人じゃないということだ。男のくせに女性と同じような長い髪の毛を伸ばし、服装も女性化している。

 男の名はサンタイである。獣人型機械人として、外観はカタツムリの特徴と人間の特徴を同時に持っている。顔に二対の触角がついていて、額にある一対の触角は左右の頬にある触角より長い。視力があまりよくないサンタイは触角を通じて外界の環境や機械人の状況を把握することが彼特有の能力である。サンタイの目は顔になく、長めの触角についている。

 自分の目がない顔にびっくりされないようにサンタイは出かける前にいつもペンで目を書いておく。それに、人とコミュニケーションを取るとき自分の気持ちを正確に表すことができるようにいつもペンを持ち歩いている。そのときに合った表情を修正するのに便利だからだ。絵ゴコロがないサンタイはいつも「⌒⌒」や「╰╯」、「T T」あるいは「≧≦」などの顔文字でしか目を代用することができない。馬鹿馬鹿しさが充満しているがたくさんの子供がサンタイの顔を見てびっくりして泣く子もいる。

 サンタイは『アニマル城』というところで生まれ、そこには大量の動物型機械人と獣人型機械人と一定数量の人間が住んでいる。しかし、その人間たちは非人間的な待遇にあっている。一部の人間は『人間園』と名乗るところに閉じ込められ、動物たちの見物として入れられている。また、一部の人間は『人間サーカス』で演目を上演し、調教師の鞭の下で観客席の動物観客の歓しんを買う。少量の人間は動物医学者や動物科学者の実験マウスとして使われている。

 子供の頃からサンタイは人間に興味を持ち、そのときに人間を好きになり人間のことをもっと理解して友達になりたいと思っていた。アニマル城の残虐な制度に不満を抱き、故居を離れることにした。アニマル城の規定の元で離れる時から自分が見聞きしたことをココロに埋め隠した。機械城に来てから本当の人間を目にすることは滅多になかったが人型機械人がいることによって少しはサンタイのココロの慰めになった。

 今のサンタイは嬉しくなった子供のように飛び跳ねたりして二人の後をついている。街にはいろんな異形の機械人がいて、今の社会も大分開放的になっているが行き交う人は思わず異様な眼差しで彼を見ている。しかし、サンタイはそんな眼差しを気にすることなく、時には、通り過ぎの男性にウィンクまでしていた、無我夢中のレベルまで達している。そんなサンタイであっても行き交う人の中で彼に近づく人は存在する。それはサンタイのそばを離れることのない家族である。

 一人の女の子は行き交う人の中でやっとサンタイの姿を見つけた。

 短くて小さな足で大人の歩く速度についていくことのできない女の子ははぐれそうになった。女の子は現地で何周か回った後、『−8』のようなぜんまいを背負って自分を励ましながら両腕を全力に振り、すばやく走った。

「サンタイお兄ちゃん、やっと追いついたよ。子供みたいに目を離したらすぐいなくなるのやめてよ」

 女の子は大人っぽい口調で話しながらサンタイのお尻を何回も叩いて注意を引いた。

「ドルルちゃん、やめてよ。大人が子供をお仕置きするときにだけこうするんだよ」

 手のひらで叩かれたサンタイは嬉しそうでかつ変態な表情を浮かべた。口でイヤっと言っているが体は抵抗してないようだった。

「だって怒らせたんだから、いまのはすぐどこかへ行ってしまうことに対してのお仕置きだよ。負傷したらどうするんだよ?変な人に連れて行かれたらどうするの?こういったことをあまり考えてないよね?全く、しん配ばっかりかけちゃって」

 女の子の小さな頬に大人が子供をしつけるときにだけ現れる厳しい表情と大人が人をしん配するときの口調で言った。

「僕はもう成人しているよ。歳もココロも。逆にドルルちゃんがしん配される相手でしょ」

「ふん!怒るよ!私も成年者だよ!ココロだけだけど」

 女の子の名前はドルル、サンタイともう一人のお兄ちゃんに名付けられた。

 出生に関しては、女の子は親に捨てられた赤ん坊であるため出生地はわかっていない。ドルルの生まれ変わった場所と時間に関しては明白である。機械城でサンタイに抱え挙げられた時からである。ぜんまい玩具型と人型が混合された混合型機械人として体が小さいドルルはとても弱い玩具の体と天使のような容貌の持ち主である。ロリータ風の服装を身に纏っているドルルはまるでフランス人形のように可愛い。

 大人しくしているときは小学生のように見えるがドルルが言っていたようにココロはもうすでに成人している。

 原因はよくわからないがドルルの11歳の誕生日の日から体の成長は止まった。そしてこのような姿で10年の年月が経った。

 家族の遺伝?誕生日以外、ドルルの親が彼女を捨てるときに何も残していないため親に連絡できず何もわかっていない。なぜ捨てられたのかさえ解けない謎であった。サンタイともう一人のお兄ちゃんがドルルを連れていろんな名医を訪れた。一番技術が優れた医者でも治療方法を見つけられなかった。体の成長が止まる原因だけではなく治療方法やこの症状を持っている人の数すら統計できない。体の成長が止まるのは珍しい病気よりもさらに珍しいのかもしれない。

 今、昔の人の医学文献書の内容で体の成長が止まる原因が二箇所記載されていた。

 一つは、死に神の呪いで、もう一つは神からの祝福だと記載されている。

 自分の体は確実に子供の体であることを把握しているのでこれ以上言い合うと絶対負けてしまう。そう考えたドルルは言った。

「誰が子供か、この問題は一旦おいといて。またどの男の子に興味を引かれたわけ?見せてみ」

 サンタイの好みをよく知っているドルルはしん理師のように彼の思考を正しい方向へと導いたが効果がなかったのを見て彼女は諦めた。

「1、2、3、ほら、大きくなった」とサンタイは手をドルルの脇下に伸ばし、彼女を持ち上げた。

 小さな体は頭上を越し、ドルルが両足を開いた後三体の肩に乗った。そして、サンタイの触角の方向に目を向けた。

「女の子?本当に……ねぇサンタイおにいちゃん頭大丈夫?どこかにぶつけてない?早く病院行こう」

「あの少女じゃないわよ。私が気になってるのは隣にいるあの男❤の❤子❤」

 サンタイは喉を持ち上げ、元の声を変えた。男でも女でもない声で説明した。毎回男性を見て、聞いて、あるいはそれに関してのことを言う時サンタイはいつも異様に興奮している。

「何その声、しかも『私』って言ってるし。今日やっと普通の状態に戻ったと思っていたのに。少しの間離れただけでまた変になってる。もしかして、またなんか変なもの食べて、食中毒でもした!?……ねぇ、地面に落ちてるものを拾って食べてないよね?街道にネズミ薬剤がよく置かれてるから、ほら、早く吐き出して、吐き出して!」

 ドルルは指を三体の口に入れ、口元に引っ掛けて上下に開いた。

 唇がもうすぐ引き裂けそうになり、三体は声をもとに戻し謝る態度で言った。

「ごめん、ごめん。ぼ、僕が悪いよ。でも僕が言ってるのは本当だよ。あの男の子のことが気になってるの。前の気になると違うから」

 そして、ドルルは手を離しサンタイの頬は元の形に跳ね返った。ドルルは自分の指いついた唾液をスカートの裾で拭いて言った。

「だから、なんでそんなに気にするの?」

「周りの人を多少感知することができる、でもあの男の子だけは何も感知できないんだ。多分すっごい達人だと思う」

 命のない電気製品でもサンタイは内部の構造まで感知できる。しかし、例外がある。一つは感知の相手は達人で、もう一つは、感知の相手は人間であること。

 この達人がたくさんいて人間が少ない世界でサンタイはカイが姿を捉えることのできない剣士か神出鬼没の刺客だと信じても人間だということ信じたくない。

「大事なのは、あの少女。ドルルちゃんと同じ状況にあるの」

「あの子の体も10年成長止まってるの?」

「いや、状況が一緒なだけだよ。あの子が止まってる時間はもっと長いんだ。もしかしたら……」

 サンタイは手を開いて、指で数え始めた。親指、人差し指、中指そして薬指を順に曲げた。

「1、10、100、1000……わかった。やっぱり言うのやめよ。人のプライベイトのことだから」

 ドルルは体の成長が止まる苦痛を実感しっているためそれ以上追求しなかった。

「時間の区別だけならこんなに僕の気を惹かないから。気になってるのは他のところだよ。あの少女はもう生きてる徴候がないから」

「それ、どう言う意味!?生きてる徴候がないって、じゃあの子はもう……」

「そう、死んでるの。いつでも倒れる可能性がある人……あと、何があの子を今まで持続させたのか……愛なのかな?」

 前で笑っている二人を見てサンタイも思わず微笑みを浮かべた。

「サンタイお兄ちゃん、あの子一体どうしたの?」

「体の成長は止まっているけど、体内の臓器はずっと働いてるの。一番重要なことは時間の関係でもう全部焼き壊されてる」

 ドルルは左の胸元を掴んだ、まるで炎に燃やされている痛みを感じた。

「私もそうなる運命なのかな?」

 サンタイは注意を自分の方に戻し、触角で肩に乗っている妹を見た。

「そうならないよ!この世で治らない病気はない、男にできないこともないから。きっと良くするからね。約束するよ」

 妹に安しんするようにサンタイは気迫のある雄壮な言葉を言い放った。しかし、言葉を発した後サンタイの触角が垂れ下りココロが動揺した:もしあの少女がこの数百年内に解決できる方法が見つからなかったら、生きられる希望はない。

「でも、ドルルちゃん、成長が止まった日からもう10年も経ってるね。祝福でも、呪いでもどうやったら解消できるのかな?」

「私も知らない……」

 ドルルは突然お兄ちゃんが病気の原因を神鬼のせいにしているのを気づいて、思いっきりサンタイの耳を引っ張り自分がこれから言うことをよく聴けるようにした。

「もう怒った、全く!サンタイお兄ちゃんは迷信だね。呪いでも祝福でもなんでもないよ。ウイルス、ウイルスだよ。男たちは本当にどんなに歳を取っても幼稚だね。サンタイお兄ちゃん、外で話す時と何かをするときはしっかりしないと!」

 −−−痛い!耳が取れそうだよ。

 サンタイが頷くのを見てドルルは動作を止めた。

「もう遅くなったし、ドルルちゃん、せっかく一緒に出かけてるから他の場所も行こうよ」

 カイとモリが百貨店前で姿を消したのを見てサンタイも妹を連れてその場を去った。

 −−−何日かした後、あの男の子が経験することは想像以上に苦痛なものだろうな。あの少女の状況を伝えた方がいいのかな?

 ココロの中でさっき感知したことを考えているときに、サンタイの思考は妹の話に遮られた。

「まだお兄ちゃんと仲直りする気は無いの?」

「大人のことだから、子供に関係ないよ」

「もう怒った!怒った!今度、本当に怒ったからね!」

 ドルルは子供扱いされるのが嫌いで、特に大好きなお兄ちゃんたちに。

 ドルルは手のひらを自分に向け、自分の腑抜けた体をも掻き壊そうとした。もしそうしていたら絶対痛かっただろう。大声を出したいけど周りに人も多いし。我慢するしかないドルルは自分の理性で怒りを抑制した。

「後でドーナツ買ってあげるからもう怒らないで」

「わかった。今日は許してあげるよ。今日だけだよ。前の自分を許して欲しければトラック一台分のドーナツを買ってくれないと。うん……今日はお店にある全てのドーナツだけにするよ」

「そんなに、少しの間失踪しただけなのに」

「今朝のこと覚えてる?迎えにきたらずっとカタツムリの殻に隠れて起床しないこと。やっと引きずり出したのにきちんと歯を磨かないし、顔もよく洗ってないし。それに、朝ごはんの副菜のピーマンも食べきってないからね。これ全部私を怒らせてるからね。加えないと損します!」

「こんなのも入れるんだね」

「そりゃ入れるにきまってるじゃない」

「わかった。僕の一番大切な妹だから仕方ないか。じゃ今日は食べ放題ね。財布が空になるまで。そうだ、ずっと聞きたかったんだけど、なんで今日僕と遊びたいわけ?何かあったでしょ。あの人が今日僕のところに来て遊んでるのを知ったらきっと怒ってると思うよ」

「うん、今日はパペット兄貴が機械学園に戻って学生になることを伝えに来ただけだけど」

 ドルルが言っているお兄ちゃんの年齢(30歳)ははるかに二人と離れている。なぜ再び学園に戻るのか?原因はサンタイと関わっているらしい。また、なぜ再び学園に戻って学生になれるのか?

 昨日、モリは学園の入学はとても簡単だと言っていた。有名な機械学園は一体どんな学園なのだろうか?




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