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百城  作者: LJW(中国)
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第七章 秘められた事実

 夜になり、お風呂から上がったカイは疲れ切ってベッドに倒れこんだ。

 お風呂を上がったモリはパジャマに着替えた。モリは布団に入ろうとした時、寝ようとしたカイはまだしてない大事なことを思い出し、突然上半身を起こした。

「どうしたの急に?もしかして驚かせちゃった?」

「いや、モリ、ここパソコンある?」

 椅子に移動して座った。そしてモリは机にある電気スタンドのようなものをつけた。

 電気スタンドに照らされた下方は液晶画面の虚像が現れ、机の表面にキーボードとマウスが現れた。

「やり方教えるね。これは、こうやって、手をこの上において動かせば大丈夫」

 モリは自分の手をカイの手に重ね、机の上にあるマウスの動かし方などを丁寧に教えた。でも、モリも手慣れてないようだ。

 男子はパソコンでゲームをする時が多いのでパソコンが得意だ。それに比べて、ゲームに興味がない女子にとってはパソコンを使う時間が少ないため得意ではない。モリも例外ではない。

 未来のパソコンは投影形式に変わってしまっているがキーボードとマウスで操作することに変わりない。モリの助けによりカイはすぐ操作に慣れた。

「ありがとうモリ、俺遅くなりそうだから先に寝て。あとは一人でできるから」

 おやすみの挨拶を交わしたあとカイは手をキーボードにおいた。検索しようとした時、面白い考えが浮かんだ。すると自分の名前を検索欄に入れエンターキーを押した。

 ホームページに現れた検索結果は空白だった。

「自分の名前がない。自分が生きてる時代で有名じゃなかったってわけか。え〜悲しい」

 え!?待って。自分に関わる情報を検索できなかったってことはもう自分の時代に戻れなくなるってことかな?そしてカイは自分が知っている全ての人の名前を検索したが結果は全て空白だった。

「ハハ、みんな俺と一緒か。特にウィリアム出てきてないじゃねぇか。へ〜なんか一瞬で気分良くなった」

 少し遊んだあと、カイは真剣に昔に関わる町の情報を検索する。

『ファイナシ町までの行き方』

 検索結果が空白のホームページに現れた。そしてカイは一部のキーワードを消した。

『ファイナシ町』

 エンターキーを押し、検索結果が現れた。

 ファイナシ町は代々受け継がれた先祖に関わる記述で最終の町とも呼ばれている。

 しかし、この名前についての明白な記述はされていない。したがって、後世は人類が消えた多くの仮設に基づき、この町の名前についての仮設を立てた。

 名源:宇宙人が地球を攻撃した仮設

 地球が宇宙人に攻撃された時、人間はロボットと協力して外敵を防がなければいけなかったが、ある人の呼びかけによって人間は世界各地からこの町に集まり我々機械人の先祖であるロボットを裏切った。その結果我々先祖の多くは同じ仲間である人間の減少により必要以上の死者と負傷者を出した。生き残った人間たちは先祖からあまり良くない呼び方を得た。そして、この町も最終の町として名付けられた。

 名源:食べ物の欠如の仮説

 約一万年前急激な人口増加により世界は飢饉状態に陥った。指導者の誘導により町の住民は規則を混乱させた。自己中心な人間はもともと先祖に属する食べ物を奪い取った。飢饉後、偉大なる先祖は混乱を起こした人間を処罰せず、ただ何もない空き地に追放しただけだった。と同時に、後世に規則を守るよう、また同じ混乱が起こらないように先祖はこの町を最終の町と名付けた。

 名源:隕石衝突の仮説

 約一万年前、技術が発達していない時代に宇宙から地球に向かう巨大な隕石に人間はなすすべも無くただされるがままだった。そして、隕石が地球との衝突の余波に影響され死者と負傷者をたくさん出し、人類は絶滅される寸前にあった。しかし、一部の人間は奇跡的に生き残った。話によると神を信じる信者は、神の恵みにより、予言された安全の地に集まったからだとのことであった。我々の先祖が誕生し、その地を記念すべく最終の町と名付けた。

 この三つが今までで言い聞かされた最も信用のできる町の名前に関しての仮説だった。

 また、ほかの人が違った角度から仮説を出した。

 生き残った人類にとって、そこは希望の町と呼ばれた。そして、その人間は希望の光と呼ばれた。約一万年前に人間の後世が彫像まで作ったと言われている。

 しかし、これを証明するために考古学者は彫像の居場所を探したがいまだに見つからなかった。まだ土の中に埋まっているかもしれないし、彫像自体がただの伝説であることもあり得る。

 写真もなく検索結果はただごく簡単な文字で自分が住んでいた町を紹介しただけだった。読み終わったカイは眉間にしわを寄せる。

 そして、カイは素早く自分の知っている有名人やトップスター、地名、学校など全てを検索したがでてきたのは依然として簡略した紹介だけだった。

 ここでカイは疑惑に思った。書籍は年月が経つ中で一番保存しやすいものであると思考する。しかし、人類の文明やそれに関しての書籍は今になって全て検索不可能。

「なんで前のこと検索しても出てこないんだ、ごく簡単な説明しか載ってないじゃねぇか」

 カイは椅子にぐったりともたれ、天井を見てため息を吐いた。

「……何も出てこない、パソコン形式が変わったから?それかあまりにも古いから?そりゃそうか、一万二千年も経てば人間が生きてた形跡も消えるわな」

 一万年前に一体何が起きたのか、自分はどうやってここまで来たのか、そして今どうやって昔に戻れるのか。思ったこと全てを知るよしもないカイは意味のない反抗をあきらめた。

 パソコンを閉じたカイはさっきの眠気はすっかり消え、なぜか元気になってしまった。もう眠っているモリを見てカイは無防備な彼女に布団をかけ、ベランダに向かう。

 透き通っている宝石が暗い空にかかっている。凸凹している月もこんなに綺麗だ。これが距離は美を生むってことか。

 ウィリアムと一緒に帰るとき、向かい側からきた女の子を見たとき彼はいつも「見て、美人だ」という。すれ違った時には「見据えたわ」と失礼なことをいう。

 ……これも距離は美を生む、だね。

「なんでまたあいつのことを考えたのかな」

 苦笑いをした後、楕円形のベランダから見下ろした。

 ビルの端に位置しているためベランダからの風景はやけに広い。同じ道路沿いにある建物と建物の間の空き地と芝生を見ることができるだけではなく、左側で完全な街道と向かい側の下方に重なっているお店たちを見ることができる。

 お店から放たれている電気の光が一軒ずつ暗くなる。残りは閉店しない居酒屋やコンビニ、あるいはネットカフェ。暗くなった環境の中でロープウェイが放つ光は目立った。

 帰宅途中のロープウェイは明日に対する希望を持っている様々な乗客を乗せている。このようにして、移動しているロープウェイは希望とともに空中で漂い天燈のように壮観なる景色を作った。

 昼間に見たネズミ家族、あの異世界から来たような家族がカイの脳裏で蘇った。

 脳裏の映像に羨む眼差しを向けたのは未来に対しての憧れだけではなく、自分の両親への思いを募った。

 寒くもないのに、なぜか寒気を感じた。カイは両手を擦り、息を吹きかけた。

 すると、柔らかくて弾力のある何かが背中に当たった。びっくりしたカイは背中から血がこみ上げてきた。

 目線を下に移したカイは腰からお腹にかけて回された腕に気づく。モリが後ろから優しく自分を抱きしめたのだ。

 頭が真っ白になり、鼓動が高まった。

「ど、ど、ど、どうした?」

「これであったかくなったでしょ。寒そうにしてたから。なんかあったの?」

 カイは背中に目線を落とした。目を閉じているモリの髪の毛は汗に滲んだせいか柔らかい肌にひっついた。モリは悪夢を見たに違いないとカイは思う。カイは何も言わず、モリに抱きしめられるがままでいた。

「何もないよ、ちょっとだけ悩みがあるだけさ」

「帰りたくなったでしょ」

「うん」

 腰に回されている腕が少し縮み、カイをさらに強く抱きしめた。カイが離れるのを惜しむかのように。

「でも、どうやって戻るかわかんねぇから。まだしばらくは未来にいる」

 そして、自分の疑惑に思ったことを言う:

「ねぇ、モリお昼ロープウェイで見たあの家族覚えてる?なんか異世界の本から現実の世界に出てきたみたいんだ。だから、現実にいた人間も、もしかして本の世界に行ったとか?でも人間に関しての書籍は検索してもどうして出てこない。未来のネットワークがこんなにも発達してるのに」

「あのね、これは、昔に暴君がいてね。多くの王国を統一した後人間に関わる書籍をまとめて燃やしたの。わたしこの目で見……歴史の本から見たの。でも、いまになってもなんでその時に暴君がそうしたのかについては説得力のある説明はないわ。その後、近代で生まれた学者も人間に関しての書籍を書いたけど、神話物語のようなものだから本当にあったことを書いたわけではないからネットに載せられないわ」

 モコが中二病は神話物語にあるのを言ったのはこのためだったのかとカイは思う。

「焼き尽くされた、ひっ〜残虐だな。この人が行ったところは草も生えないでしょ」

「うん、自分の自慢な兵士達をつれて王国を次々と征服したわ。反抗する住民達を次々と殺して。でも、唯一花の王国を許したの。城壁の前で『花の王国の民よ、人間に関しての書籍を出した前』と言った後軍隊を連れて去ったわ」

「花の……王国?」

「そうよ。国中に万種類以上のきれいな花が咲いてる王国なの。あのね、わたし胡蝶の花が一番好きなの、花びらが蝶々の羽みたいにきれいだから。花が咲いた後、そのまま散りゆく事が許せない花びらは強い風が吹く時に枝から空中に飛び、蝶々のように舞って遠くへ飛んでゆくの。勇気を持っているお花なんだよ」

 眠気が襲ってきてしまったのか、自分の好きなことを話している時のモリの声は穏やかで、興奮した声を見せなかった。

「花の王国の特有な花の木が好きなの。それがさ、花の王国に生えている木は枝に葉っぱがなく、花だけ生えてるの。地面で見えるお花は木の上ででも見えるわ。見上げる時にはたくさんのお花が天然の着色料みたいで空を彩って、とってもとてもきれいよ」

 ひっついている二人の心とココロの距離は最大限に縮んだ。モリが思っていることがカイに伝わる。

 カイはまるでモリに周囲が色とりどりの花の木に、周りの胡蝶の花が咲いている王国に連れて来られたのように。

 遠くから風が吹いてきた。様々な種類の花の木から色とりどりの花びらが空中に漂い、空で舞っている胡蝶の花の花びらはまだ枝から離れていない胡蝶の花の花びらを待つ。言葉で説明できないような景象を構成した。

「そのあとの花の王国は?栄えたよね?だって暴君でも破壊したくない美しい風景があるから」

「そうじゃないわ、それが、それが、そのあともう一人の……普段民に愛されている君主に壊されたの」

 モリの話を聞いて現実に連れ戻されたカイは想像した周りの美しかった景色が一瞬で消えた。

 きれいだったものが壊されたと聞いただけで、さっきまで心を満たしたことに格差を感じたためどこか切なくなった。心の中で何かがかけているかのように言葉で説明できない辛さに陥る。約一千年前に花の王国の住民が何を経験したのか想像しがたい。

「なんでそうなったの?」

「もしかしたら『手に入れられないものは、壊した方がましだ』という考えを持ったからじゃないかな。意外だったでしょ、信じられないよね」

「最初聞いてて本当に信じられなかった。でも、考えてみれば、最古のロボットでも、いまの機械人でも妖怪でも人間と同じで真剣に善悪を分けてるわけではないんじゃないかな」

 話したあと、カイは背後を意識した。

 −−−なんか背中の服が濡れてる、汗かな?

 と同時に、モリが落ち込んでいることに気づく。眠たくなったのかそれか他の原因なのか。そしてカイは話をそらした。

「ねぇ、モリ浦島太郎の物語って聞いたことある?」

「印象ないね、聞きたい。話してくれる?寝る前のちょっとした物語として。」

「漁師である浦島太郎は海辺でいじめられている亀を助け、恩返しに竜宮城に招待されたって話だよ。亀を助けた後、ある日釣りをしていると助けられた亀が竜宮城に彼を招待した。亀に乗って竜宮城に辿り着き、綺麗なお姫様が彼を迎え入れた。ご馳走や踊りまでした後再び陸地に戻った太郎は周囲が完全に変わっていることに気づく。海の底と陸地の時間が過ぎる速度が違うことにより、海で過ごした短い時間だったが陸地はすっかり三百年も経ってしまった」

「時間が過ぎる速度が違う...サンザシが似たような物語を話していたような気がするわ」

「サンザシ?あ、夕飯に話してたあの服を売ってる店の人だよな」

「うん、そうだよ。小さい時にお世話をしてくれた人なの。サンザシはこう語った、 昔々に神様が勝手に人間の世界に来て、人間と恋愛をした。神様が一旦人間と恋をしてしまうと欲望を持ってしまい、こころが混乱してしまう。だから、神様を管理している一番トップの神は人間との恋愛を防ぐために天の時間と地上の時間を変えたの。天の1日は地上の一年と同じ」

「ひどいな、出会いからそして、知り合い、恋に落ちて別れるまでたった短い数十日しか経ってない。神にとっては罰だろうな」

「この恋は私にとっては何十日という時間だけど、あの人にとっては一生をかけた恋なんだよ、だから罰だとは言えないんじゃない。その人と付き合った時間は短かったけど、十分満足だわ。私はやはり最高神に感謝し、この恋を永遠に覚えていくと神は思うかもしれない」

「そ、そうなのか」

 モリの言ったことは理屈からして説得力があるがカイにとってはなぜか見当がつかなかったので適当に返事した。

 神話物語や他の作品、あるいは暫く自分の故居に戻ってない人に限らず物是にして人非なりのようなことがたくさん起こっている。そう思うとカイは思わず嘆く。

「自分の時代と今の時間がそう変わらないようにと願うわ。もし元の世界に戻った時誰も知らなかったら怖いし。あんな孤独感はめっちゃ怖いんだ。数日前みたいに……」

 未来についたばかりの時を思い出すとなぜか体が自然と震えてきた。体に入った寒流が逃げ回っているみたいに。しかし、次の瞬間、寒流による寒さがモリの体温によって消え去った。

「モリに出会えてよかったよ。ねぇ、モリ、俺のそ、そばに、ずっと、ずっといるよね。は、離れないよね?」

 返事がない、もしかしてモリ怒ってる?はあ、何をぶつぶつ独り言言ってんだ。自分が喋り屋だと憎めながら後ろを振り返った。

 カイの背中にもたれているモリは小動物のような寝息をしている。

 なんだ寝ちゃたんだ、とカイは一息ついた。

「おやすみ、モリ」

 半分開いたモリの目は切なかった。噛み締めた唇は言葉を言おうとしたが言葉を吞み込んでしまったように見えた。



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