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百城  作者: LJW(中国)
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第五章 モバイルのモコ

 こけこっこ〜と鶏の鳴き声に伴って空がだんだん明るくなり、朝になった。小さな体に翼をバタバタさせている女の子がジョウロを持ってまだ寝ているカイの頭上を通った。

 女の子は窓を開けて外へと飛び出し、一階の天井にあるお花に水を注いだ。雨避けのひさしの下で飛び交う女の子はジョウロの重さで握っている手の震えが止まらない。一般的に自分の体より何倍もはるかに大きな物体を持ち上げることは不可能だがご主人の手伝いをしようとするこころ構えがパワーを与えた。

「ちっ、まだ寝てんの」

 部屋から伝わってくるいびきの声に耐えきれない女の子は舌打ちをして花の水やりをやめ、部屋へ戻った。そしてジョウロをカイの頭部に狙い定めてジョウロを傾け、水を出した。

「このアンポンタン、くそブター、死ね」

 昨夜耳元でブンブンの音が聞こえたカイは夢の中で容貌がはっきり見えない約4から5歳の女の子が蝶々に囲まれて楽しく走っているのを見た。それを見て自分もふふふと笑い出し一緒になって走り出した。

 蝶々が飛んできた?女の子を囲んでいる蝶々が飛んできたのではなく蚊が自分に向かって飛んできた事をハッと気付いたカイは眠りから目を覚ました。

「なんでジョウロに入っている雨水がこいつにとって何の効果もないわけ……なるほどね、こいつ私たちと違って人間なんだ!」

 目を開けたカイは一瞬で目の前を飛んでいる昆虫を捕まえ、嬉しくなって上半身を起こした。

「この!蚊、やっと捕まえたよ」

 捕まえられた女の子は腕を大きく振り暴れ、拳でカイの手にパンチを振り下ろした。痛みを感じたカイは捕まえたのは蚊ではないことに気づいた。そして手を目の前へ持ってきて目を大きく見開き、握っている生物を確認し始めた。

「何だこれ、耳尖ってるね。もしかして翼がついてる尖った耳の小人族?」

 精巧で小さな顔にキラキラとした大きな目が鋭い視線でカイを睨んでいてまるで「今すぐ殺すから」とでも言っているようであった。そしてうすぺったい小さな唇からカイを傷つける言葉を発している毒舌な子のようであった。

 必死に暴れて逃れようとしている女の子は頭の両端のポニテールがカタカナの『ハ』の字の形で髪の毛を編み込んでいて、暴れている時に編み込んでいる髪の毛が左右に揺れてカイにはとても可愛く見えた。特に面白いのは女の子の背中には綺麗な翼がついていた。今カイの手に握っているため翼は半分しか見えない。

「離して、離してよ」とカイの手から逃れようと必死に拳を振るい、効果がないと感じたのか足まで使って手の内側を蹴り出した。

「変なの」

 女の子の顔が赤くなって苦しい表情を見せたのを見て手を離した。自由になった女の子は捕まえられないように空中でカイと距離をとった。少し不機嫌になった女の子は素早く羽をバタバタとさせ横目でカイを観察し始めた。

「この私とあんたはどっちが変なのか。絶滅しそうな人間なくせに、自分がおかしいのに人のことをおかしいってよく言うわね。ブタ!よく聞きなさい、この私がおかしいものではなくモバイルなのよ」

 自分の目と耳を信じられないでいたカイは「ごめん、よく聞こえなかった、あなたは何?」と再び聞いた。

「モバイルよ!モバイル!」

 額にしわをよせ、まだ女の子の言ったことを信じられないでいたカイはきょとんとした表情で彼女を見た。

「なるほどね、でもありがとう。さっきはアラーム機能で俺を呼び起こしたんだよね」

「そんなわけないわ、考え過ぎよこのブタ!私はモリのお花の水やりのお手伝いしてたのよ」

 カイは外に置いてある水滴がついているお花と部屋に落ちているジョウロに目を移した。

「花の水やりね、誤解したな。いや、いや、そうじゃなくて」とカイは頭をスッキリとさせるために頭を横に振った。

「モバイルを見たことがないなんて、時代遅れね。石器時代からきた人間かしら。今は機械人の時代なのよ!外に出てよくこの世界を見てごらんなさい」

「機械人?……機械?あ!ロボットのことか、君ロボットなのね」

「このバカ、そうやって呼ばないで」

「え?なんで?」

「猿、原始人、古代人で人間の先祖のことを言う名称で今生きてる人間のことを言いますかって!このアンポンタン」

「私たちには今新しい名前がついたの、機械人よ!昔の人間と同じようにこの地球で生活してるの、厳密に言うと私たちは人間を超えてるわ」と女の子が上から目線で言った。

 カイが生活している時代では、ロボットはまだ開発段階にあるため日常生活ではほとんど目にすることはない。その時のロボットはこどものおもちゃや掃除機、運搬する機会として少数の人に使われていた。ロボットには綺麗な外観がない上、言葉を発する機能や、意識などはそんなに発達していないため、ほとんどの人が注目しなかった。

 そのあと、家庭を支えるロボットが誕生した。高い知能を有するロボットの誕生によって生活が便利になり、ロボットがだんだん多くの人に認識されるようになった。もっと生活をよりよくするはずだったが実際にそう上手くいかなかった。その後、いろんな理由でほとんどの人間が地球から消えてごくわずかな人間しか残らなかった。

 ロボットは人間が携帯に残した情報を閲覧し、SNS、人間に関する書籍などを通して人間の習慣を学んで人間のように地球で生活し始めた。

 一万二千年の年月を経てロボットも発展し、自分たちの文化を持つようになった。そして機械人という新しい名前をつけた。

「もしロボ、機械人なら全てが説明がつくか」

 そしてカイは何日か前のことを思い出し独り言をブツブツ言い始めた。

「あの光ってた川は太陽の反射でキラキラしたのではなく、水自体が色ついてるんや」

「咳ができる狼も狼人間ではなく狼型機械人なんや」

「昨夜見つけた水も汚れ水じゃなかったんや」

「ネバネバした食感とお風呂のドロドロした水」

「機械人が食べる機械オイルなんや」と一連のことを思い出したカイは言った。

「鬱陶しいな、何をブツブツ言ってるわけ、機械オイルじゃないし!」

「違う……の?」

 高速に頭を回転させた結果が女の子の否定の声をいただいてしまった。頭から煙が出て、過度思考したカイはベッドに倒れこんだ。

「どしたの、衝撃すぎて死んじゃった?」

 そして女の子は再びジョウロで枯れ果てた花のような顔に水をふりかけた。

「水?」

 意識が朦朧としたカイは顔に水の感触を感じた。

「神に失礼よ、水はあんたが言えるもんじゃないわ。天からの恵なのよ。貴重な物なの、あ!」と自分が貴重な物を乱用していることに気づいた。動作を止めた女の子はまるで自分は何もしていないかの様に口笛を吹いた。

「なんだ、夢のまた夢か、これ水じゃん。よくねれなかったから変な夢見たやん。もう昨日夜の蚊は」と顔についている水を拭きながら上半身を起こしたカイは再び同じ風景と『モバイル』と名乗る女の子が目に入った。

「蚊っていうな」と女の子の両目から怒りの炎が見えた。

「昨日の夜幸いにもこの私が見張ってなかったからこそ純潔無垢なモリが痛い目に遭わなかったのよ」

 カイは眉間にしわを寄せ頭からたくさんの『?』が浮かんだ。

 女の子もカイを見て疑惑に思い小さな頭からも『?』が浮かび上がった。目の前のやつは起きてから何も知らないみたいだ。

 −−−女の子が言った幸いにも彼女の見張りがあったの幸い……の意味はモリが誰かに傷つけられるところだった?

 −−−また寝ぼけてモリに何かをして女の子に止められたのかな?そんなのありえないよ、きっと寝ぼけてないよね。

 昨日の夜はなにがあったの?疑惑を解くためにモリにことの成り行きを聞こうと決めたカイは布団から出て、スリッパを履いて急いで狭い廊下を通った。角の物置の部屋を通った後別の部屋の前までやってきた。簡単に挨拶をして障子を開いた時に目に入ってきた光景に驚いた。中には家具一つなくモリが言っていた「自分の部屋」には見えない。板と板の間の隙間は広く、隙間から外の景色がはっきりと見えている。開いたままの本が地面に伏せてあって昨夜読み終えてないようだった。部屋の中で唯一暖かいと感じるものは本の横に置いてある薄い布団であった。障子を開いたため風通しが良くなって冷たい風が隙間から入ってきた。

「寒っ、昨日モリここで寝てたの」

 そして昨日夜物音がしたのを思い出した。

「自分の部屋を俺に貸したか」

 すると朝ごはんを机に運んだモリが二階にいるカイに気づいた。

「私ここにいるよ、どうしたの?」

「お……おはよう」

 昨日モリと一緒に寝たことを思うだけで恥ずかしくなったカイは視線をそらし、少女の顔を直視出来なかった。

「おはよう、朝ごはんできたから早く降りてきて」

「モコ、まだ?ご飯よ」とモリは体を傾けて反対側に話しかけた。

 さっき、ずっとカイと会話を交わしていた女の子はモリのモバイルであり、モコと言う。モバイルでありながらもモリはモコを妹だとみなし、いつもいろんな出来事を彼女に話している。長く過ごした二人はとても仲良しになった。

「すぐ行く」

 モコは水やりを終えてジョウロを持って部屋から飛び出てきた。

 下を見ているカイは降りることが登ることより困難であることに気づいた。足を震わせながらも動く階段を慎重に一歩ずつ踏み、一階へとやってきた。

「やれやれ、こんな高ささえ怖いなんて、ビビり屋さんだね。まさか、高所恐怖症でもあるの?高所恐怖症の豚だね。それとも、ただ単に死ぬのが怖いのかな、超怖いやつ」とモコはカイの臆病な動作を見て、嘲笑った。

「俺は高所恐怖症なんてない!」

「へ~そう。じゃあ死ぬのが怖いんだ?」

 モコにそう聞かれ、カイの動きが止まった。カイはこの疑問に対しての回答は「怖い」と「怖くない」の二択で簡単だとわかっているが、疑問自身の重みに対し、モコが冗談を言っているとも知っているが、自分はこの疑問に正直に答えられなかった。

「早く答えなさいよ!逃げるんじゃないわ」

「俺はただ梯子が壊れるのが怖かったんだよ」

 カイは再び歩き出し、食卓の前まで行って、座って静かに机に置いてある食事を注視した。全ての食べ物が黄色ぽっくて、中では白ご飯が一番目立つ。

「黄白いお米もあの液体で作ったんだよね」

 近日カイが見た淡く黄色っぽい液体が『仿水』という。外観は油のような液体であるが機械人でも使用できる特殊の水である。

 機械人の体は精密な構造で成り立っているため皮膚で保護されていても日常生活では少量の水にしか触れることができない(例えば空気中の水分)。もし機械人が過量の水に触れた場合、水は体に入ってしまい、体内の内臓がショートや電離漏れ、損害などの深刻な問題を起こし、ひどい場合には死に至ることもある。このように機械人は人間のように直接水を吸収したりすることができない。機械人のために川の普通の水に物質を入れ、普通の水を安全に使用できる仿水に変えることができる。今まで仿水を見た事がないカイにとっては川が強い光を出している時や水を探している時、お風呂と食べ物を食べている時に変な感触を覚える。

 机から軽いものを置く音がして、モリは一杯の仿水をカイの前に置いた。コップに入ってる氷まで淡い黄色をしていることに気づいた。

「昨日夕飯食べてないけど、今日も食べないの?それとも口にあってないのかしら」

「そんなことないよ。きっと美味しいと思う。美味しそうな匂いで胃が体から飛び出しそうだよ、ほら」とカイは服を巻いてお腹を出した。食卓を目にしているカイでさえ落ち着いて待っているのに胃は一時も早く食事をしたいと待ちきれないでいた。まるで男子が可愛い女の子を見た時に心臓が飛び出しそうになるのと同じである。服のさえぎりがない胃は一番前まで突き進んできた。

「なにこれ、面白い」

 今までに見たことのないモリは好奇しん旺盛に前に突き出してもうすぐ体と離れそうな胃を突っ突いた。

「これは俺のユニークなスキルだぜ、鼓動してる心臓みたいだ。これは『鼓動してる胃』とでも名づけようか。」

 我慢ができないカイはお茶碗と箸を持って美味しそうに食べ始めた。

 調理している時に全て食べ物には仿水が使われているためネバネバの食感が舌から伝わってきた。慣れたら変な感覚だというより特色だと言った方がふさわしいのかもしれない。

「うまい」と感激した。

「ごめんね、家になにも備えてないもので」

 −−−慰めるために言ったことだと勘違いしているのかな?

 カイはガツガツ食べる動作を止めた。

「本当にうまいよ。モリが言っているようにはちっとも思ってないよ。精神的な豊も富の一種なんだよ。だからモリは十分豊かだよ」

 カイをたくさん助けてきたことからモリの寛容さは精神的な豊かさを証明するのに十分である。カイは心の底から彼女を敬い、尊敬している。

「本当に?初めて言われた」

 モリはホッとした微笑みを見せた時に笑窪も一緒に現れ心が惹かれそうだった。

 ジョウロを置いて食卓へ向かう途中、二人の会話が聞こえたモコはカイをチラっと見た後「口先がうまいブタ」と不満そうに言った。

「本当だよ、モリはお金持ちだよ。俺がビンボウなんだよ、ほら服も他人のでしょう。ハハ」と頭を掻きながら何も残ってないカイが爽やかな笑顔を見せた。

「そうだ、モコは食べないの?それとも、これモコの分?」

 すると、モコは食卓へとたどり着き、下から長い充電ケーブルを取り出して「いただきます」をしたあと背中の翼の真ん中にさした。

「ご飯を食べるモバイルを見たことある?わたしはもちろん充!電!」

 自慢げに表情を見せたモコは話しながらカイに背を向けよく見えるように飛んで見せた。「わたしは充電できるけど、あんたは無理でしょ」と見せつけているるようだった。

 カイは大きく息を吸い込み、ハッと頭が悟った。

「そうだな、その通りだよ」

 好奇心が旺盛になったカイは無意識的にトイレを見てからモリの方に目を向けた。

「ねぇ、モリ、ひとつ聞いていい?ご飯中にふさわしいくない質問だけど」

「ダメに決まってるでしょ」とそばにいるモコがきつくモリの代わりに断った。

「聞いていいよ」とモコとは裏腹にモリはフレンドリーに答えた。

「知らないことがたくさんあるけど、でもロボッ、いや、機械人は食べる必要はあるの?もしかして……」

 いろんな疑問を心に抱えている。例えば、自分が仿水を飲んだり食べたりした時になぜお腹を壊していないのかなど。しかし、いま一番知りたいのは機械人もウンチをするのかということだ。

 カイが直接口にしていないあの行為は確かに食べ物には関係しているが誰もご飯中にはこのことを話したくはないでしょ。モコは一番早くカイの聞きたいことを察したため、舌を出して吐きそうな表情を作って見せた。

「気持ち悪いな、もしかしてあんたご飯中に話すなんて、あれを食べたいわけじゃないでしょうね」

 モコが話しているのを聞いてモリはカイの聞きたいことを瞬時理解した。

 咳き込む声を伴い、モリは自分の優しい声を必死に隠して背筋を伸ばし、教師口調で先生のようにカイに知識を授け始めた。そしてモリは人差し指を唇に当て、体のラインに沿って下に滑らした。

「食べ物を飲み込んだ後、食べ物は喉、そして食道を通り……ずっとここまで。ここに燃焼炉があって食べ物を焼き付けて体に熱を運び、それがエネルギーになるから」と人差し指で喉、襟元、そして最後に胸の下方にあるところへと滑らしてリアルに食べ物が消化される場所までたどり着く過程を説明した。食べ物が消化場へと到達した後、形や機能、場所が人間の胃と同じ位置ある燃焼炉を通して消化する方法で食べ物を燃焼して機械人の生活に必須なエネルギーや熱を提供する。

「食べ物は燃焼された後残りのカスが腸を通って最後に体から排出されるの。カイは違うの?」

 カイはモリの言ったことを理解した。要するに機械人は燃焼された後に残されたカスを排出する必要があってウンチをする必要があるということだ。

「きょとんとした顔を見るだけで人間だとわかるでしょ」

 そしてカイはモコの言っていることを認めたかのようにバカみたいにゲラゲラと笑いだした。

 すると突然座っているモリが立ち上がり、体を前に傾けて片手で机を支え真剣な表情を見せた。

「やばいことになっちゃう。カイこれだけは覚えておいて、知らない人には自分が人間だということを言っちゃダメだよ。特に機械人が多いところでは、例えば機械城みたいなところで」

「機械城?」

「うん、学校があるところなの、ほかのたくさんの機械人も行っているから。そこに住んでる機械人もいるの。とにかく、機械人がたくさんいるから。でも、しん配しないで私がついているから」

「世界は結構変わったな……今はファイナシというところはもうないの?」

「昨日聞き違いしたと思ったよ。あそこは一万年くらい前に存在した場所なの、なんでそこに行きたいの?もうなくなってるよ」

「じゃ2020年はもう……」

「2020年?えーっと、2024年からロボットの時代に入って、その後の2000は旧暦で、その2000年間は、先祖たちが色々と問題を解決し、その後から新暦ね。うん……そうすると、計算して見ると、えっと……一万二千百十九年前だね。今年は新9999年」

 モリは再びカイを肯定して、カイがタイムスリップしてきたことを認識させた。

「もう人間はいないの?」

「かなり少ないと思う。見分けはモコの方がすごいわ、私は見分けがつかないの。でも前ニュースで人間が出たことがあるのを見た」

 まだ人間が存在していることを聞いたカイは恐怖感のある心が少し和らいだ。

「迷子ではなく、タイムスリップをしただなんて……」

 カイは頭痛に襲われたように下を向いた。そしてまた頭を上げて話そうとしたが喉が詰まったかのように複雑な気持ちを言葉に出すことができなかった。カイが悲しんでいるのを見てモリも悲しくなってきた。

「カイ、絶対戻れる方法はあるから、そんなに悲しまないで」

 再び下を向いた時は脳裏のひらめきを表す小さな電球はまるで主人の悲しむ姿を見てられまいかのように、勝手にキラキラと光出した。暗黒にいるカイは明かりに照らされ、タイムスリップをした後の世界での攻略が次々と浮かび上がった。

「このままでもいいよね」

 さっきまで苦しんだ表情を見せたカイは、いまはすっかり開き直っていた。まるでさっき苦痛が存在していなかったかのように、あるいは心の底にしまいこんでしまった。苦しんでいるのか悲しんでいるのか、今のカイを見ても誰も判断できない。あるいは両方の感情が存在している。

 モリは呆然とカイを見ていた。モコはモリのそばまで飛び、カイを横目で見ながらモリに言い聞かせた。

「あいつ絶対何かを企んでるから、気をつけないと」

 突然頭に電流が走ったかのように、何かを思いついたモコはカイがいる方向へと飛び去った。するとまるで空中に見えないソファーが置いてあるかのようにモコは奴隷を販売している商人のように両手を伸ばして座ったと同時に下で足を組んだ。

「ハハハ、ただの人間ではない、しかもタイムスリップしてきた人間だ。これはいい値段で売れそうだ」

「モコ、やめなさい……あの、カイ、あまり気にしないで、普段はこんなんじゃないのに」とモリは気まずい表情を浮かべてカイに説明した。

「まったく、失礼なことを言っちゃダメよ。昨日したことはまだ終わってないからね。あなた今日また−−−」と再びモコを見て説教する口調で言った。

「気づかれちゃった。帰ってくる前にテレビを消したのに」

「そうだよ、家にいない間にまたずっとテレビ見てたでしょ、テレビの後ろの熱がまだ冷めてないから」

 昨日モリが家に留守している間にモコはずっと遊んでいた。足音が聞こえてすぐにテレビを消したが起動された後の余熱がモコの行為をバラしてしまった。ずっと遊んでいたせいで電池を消耗したため、昨日ドアを開けた後モコはモリを迎えたがすぐに廊下から消えてしまった。知らないカイを避けるのと同時に充電して体力を満たさなければいけなかったからである。

「え!?モリなんで突然賢くなったの」

 自分の行為がバレた後も反省する様子もなく、逆に驚いた表情を見せた。怒ったモリは口から「ウー」の音を発し、顔を風船みたいに膨らませた。

「ごめんなさい、もうしません」とモコはおとなしく謝った。

 朝ごはんのあとモリはキッチンを片付けていてカイとモコはソファーに座ってテレビを見ていた。二人は言葉を交わすことはなかった。カイは横目でモコをチラチラと見ていた。テレビを見るより隣に座っているモバイルとしての小型機械人に興味を持っている。そしてカイは気まずい雰囲気を破るように話をかけようと試みた。

 携帯ならきっと携帯番号を持っているだろう。

 −−−モコ、携帯番号をもらってもいい?

 もしこんなふうに話しかけたら、知らない人にナンパされているみたいで絶対いやがられるだろうと考えるカイは頭を横に振り携帯番号を聞き出す考えをやめた。

 お父さんとお母さんに連絡繋がる可能性はあるかな?とカイは携帯を取り出し試してみようとした。

「ね、モコ、電話番号入れられる?ほら、俺の携帯電池切れちゃってさ」

「嫌……だね!なにこれ」

 モコは自分の小さな体が黒い画面に映しているのを見てなぜか知らないが見知らぬ形の機械を見て恐怖を感じた。原始的な本能からの恐怖だった。

「スクリーンに映ってる自分にびっくりしたでしょ」

 カイもモコと同じ経験をしたことがあり、自撮りをした後カメラの向きを設定し忘れてしまってしばらく時間がたった後再びカメラを開いて自分の顔が写っていることによく驚いていた。だからモコの異常な反応にカイは驚かず逆に画面を近づけてからかっていた。

「妖怪鏡に映る妖怪だ」

「わかったよ、かけてあげるからそいつを離して」涙声で不本意で言いながらカイの頼みを受け入れた。

 カイは母親の番号をモコに教えた。そしてモコの目の瞳孔からカイの言った番号が現れた。

「この時代になっても数字式の電話番号があるんだなんて、懐かしいな〜で続けて」

 モコのようなモバイルは二つの方法で電話をかけることができる。相手が知人であれば体の中に記録されている指紋で電話をかけることができる。知らない人である時に数字式の番号で電話をかける。しかし、迷惑電話を防止するため数字式の電話番号ははるか昔に取り消されている。現在では全てが指紋を採取して携帯番号として使っている。

 モコは番号間違いがないことを確認した後カイの耳元へとやってきた。そして全力でカイの耳に向かって叫んだ。

「おかけになった電話は電波の届かない場所にいます」と耳が聞こえなくなるぐらい女性の凶暴を伝えた。

 モコのいたずらだと思ったカイは不思議そうに彼女を見た。

「何見てんだよ、信じられないかもしれないけど、この私はたっくさんの機能があるからね!世間知らずの井戸の中のブタ」

「なんで井戸の中のブタなわけ?かわずでしょ?ブタじゃなくてカエルだよ!豚が井に落ちることないだろ」

「あるよ、あんたが落ちる可能性は十分あるわ!アホだから」

「そんな大きい井戸ないから」

「あるよ、巨人の国の井戸だよ」

「「……」」

 激しい言い合いをしている二人は突然空気が凍りつけ、気まずい雰囲気になってしまった。沈黙した二人はそれぞれ相手を見て誰か先に話し出すのかを待っていた。何秒かして二人は同時に「ふん」を発し、そしてそれぞれ体を反対方向に向けた。

 しかし自分の好奇心を抑えきれないカイは妥協し、体をモコの方へ向け自分から話しかけた。

「ね、モコ、ゲーム機能ある?」

 モコの体はビクッとしたがカイをそのまま無視した。古式のモバイルとしてのモコはゲームをすることができない。もし無理やりゲームプログラムをモコの体に組みこみし、目から投影してゲームすると操作している最中にフリーズするほか全身が熱くなってしまう。ひどい場合には高熱を出して頭が故障してしまう可能性がある。

 モコは少し考えた後、もし無視して、回答しなかったら、きっとカイに問い詰められて、弱点を掴まれてしまうと思い、「も、もちろんよ。わ、私いつもモリとグー、チョキ、パーやってるから」とモコはゲームの概念をわざと変えて話をそらした。

「ふん、ゲームはつまらなさすぎて見せるのも面倒臭いわ。こんなに興味があるのならもっと面白い機能を見せてあげるわ。うーんと例えばミュージックだとか」

 そしてモコは喉を整え女性のソプラノの声に変え歌い出した。

「♬あ〜あ〜あ〜あ♪」

 モバイルとしてのモコはこの時カイに見せているのは音楽を入れる機能で、脳の中に入っている音楽を、喉を通して歌い出すのである。もしイヤフォンをつけたいとしたらモコのおへそに差し込むだけだ。しかし今のモコとの関係ではそんなことをさせる筋もないとカイは思った。

「例えばカメラ機能」

 モコは右手の人差し指と親指を90度になるように伸ばし、左手も同じように長方形になるように置いた。そして長方形を目の前へ持って行き、左右へ移動する動作に伴い口からもカシャカシャの音を模倣し、カイに目がカメラだと気づいてもらえるようにした。カイは目と口が大きく開き、驚いた表情でモコを見た。モコは話そうとしたカイを遮った。

「すごい、モコ俺を撮って見せてって言おうとしたでしょ」と小さく咳き込んだ後カイを模倣して言った。

 カイの真似をしているとき口が大きく開いた驚きの表情だけではなく、体に録音機能があるためカイの声までそっくりだった。モコは人の真似をする才能があることを認めなければいけない。

「カメラ機能に関してはあんたに見せることはお断りよ。だって、あんたをとったら目が失明しちゃうじゃない。写真を脳に保存するだけで爆発してしまうわ」と空中で飛んでいるモコは撮ることを言うときに目を閉じ、失明したかのように両手をむやみ動かした。保存することを言うときに頭をもがきながら頭が今にも爆発するように苦痛な表情を見せた。

「爆発しなくても脳に入れるだけで−−−」

 想像するだけで気持ち悪くなったモコはゲロを吐く動作をして胸を叩き吐くのを我慢した。

「ケチ」

「モリ以外、誰であれとらないからね」

 そして、モコは冷たくカイに言い放った。

「あと、静かにテレビでも見てて、もう私の邪魔をしないでよね。どうせこの私と仲良くなってからモリに手を出すんでしょ!あんたの女神だよね」とモコは嫌な表情を浮かべてまるで自分と話しているカイに『黙れ』と示しているかのように話している。

「そんなじゃないし、簡単に誰かを女神にして、犬みたいに追いかけていくのは免だね」とモコに言い返すときは少し上から目線で言った。誰かを敬う点と恋愛する点ではカイはいつも高ぶっている態度をとっている。自分を低くして相手を高くすることはなく、誰かのために媚びを売ることもない。

「あ、しまった」とカイは自分の言動がモリを傷つけてしまったかもしれないと気づいてキッチンの方を見た。

 二人の会話を聞き、モリは家事をしている手を止めた。そして自分の襟元を指で水平に体と反対方向へと引っ掛けて服の中を見た。自分の体を観察しているようだった。

「カイはもっと大きいのが好きかな」とカイの視線に気づき、指を離して服は跳ね返った。

「二人は仲良しね」とモリは苦笑いを浮かべながら言った。カイの言ったことを少し気にしている様子だった。

「よくないわよ!」とモコは否定したあとモリの方へと飛び、内緒話をし始めた。

「モリ、なんであんな悪い奴を家に入れたの?もしかして威嚇された?ね、早く教えて、あいつを滅ぼしてあげるから」

「ダメだよ、私がここに留めさせたから。大丈夫よ、信じて、カイは悪い人じゃないから。ここにいてくれた方が家の中もにぎやかでしょ」

「ここに留めるの……もし他の人だったらどうする?留めさせるの?」

「させないよ。違うの……カイは他の人と違う感じがするの、特別な存在なの」

「なんで?」

「……説、説明できないよ、大きくなったらわかるよ」とモリは顔を赤くして言った。恋愛も片想いもしたことのないモリは今感じたことをうまく表すことができない。

「ほら、モコ早くテレビ見てきて、すぐ掃除終わるから」

 モリの赤くなった頬を見てモコは何かを察したようで、それ以上モリの邪魔をせずソファーに戻った。そして、モリは家事の続きに集中し、蛇口から出る仿水で食器を洗い始めた。

「コホッ、確認したいことがあるわ……本当にいい人なの?」

 カイは何が起きたのか全く掴めなかったがモリと話した後のモコのキツイ態度は明らかに良くなったことに気づいた。

「いい人」このセリフはどこかで聞いたことがあるような気がする。カイはモコの変わった質問にどう答えればいいのかわからず、ただ天井を見上げて過去の出来事が蘇った。

 カラッと晴れた日に二人しかいない教室で

「その、すっ、好きです」

 あれから長い年月が経っているためカイはもうはや少女の容貌すら覚えていない。ただ、少女が軽蔑するような口調でカイの告白に答えた。

「いい人だから、絶対私よりいい子が見つかるよ。だから、ごめんなさい」

 少女はカイの告白を断ったと同時に『いい人』のあだ名をもらった。

「そうだな、おそらく……多分……いい人かもしれないな、少なくとも前いわれたことあるから。へへへ」と迷った末、カイは失敗の過去の経験でモコの質問を肯定した。

「自分の種類を迷わせてごめんね、あっすいません、ついさっきは私の言い方が悪かったわ。人じゃなくて、体が変異した後の……そう!大きい豚よ!大きい豚っていえばよかったわ」

 モコとの関係が和らいでいると思ったがまた一貫した毒舌な態度に戻ってしまった。

「じゃお前は排泄されたカスより小さい機械人だね」と機械人の排斥物で話した『カス』の一言が頭からはなれなかったカイは何も考えずモコに反撃した。カイの言葉に傷つけられたモコは悲しくなってカイに背中を向けた。

「ひどい、本当ひどいわ。こんなにひどい言葉で言われるの、初めてだわ」とモコは頭を垂らし、翼まで元気なく垂れた。両手で目から出る淡く黄色い涙を拭いた。

「ごめん、ごめん。わざとじゃないよ。さっきのは冗談だよ。友達にだけする冗談だから」とモコを泣かせたのを見て慌てて謝った。

『友達』の一言を聞いて体がビクッと反応し、そしてカイの方を見た。

「本当?私たち友達なの?」涙目のモコは期待に満ちた目でカイを見た。

 仲のいい友達同士のからかいはモバイルのモコにとっては初めてのことである。ずっとモリのそばにいるモコはモリ以外の友達はいない。

「うん、本当だよ。俺が生まれた時代では、殴ることは親しい関係の印で叱ることは愛されている印だとよく言うけど。ほら、テレビのシーンでよくあるじゃん。喧嘩して仲良くなった人とか、罵られて逆にウキウキしてる人とかいるじゃん。こいつらは自分が愛されてるってことをよく知っている証拠だよ」

 この変な理屈でモコを説得できるかどうか不安なカイは冷や汗をかきながらモコの反応を伺った。

「変な説明だわ。古墳時代みたいな古い考え方を未来で使わないでよね。いまのあなたはもう人類の時代から完全離脱してるからね、ここではあなたのような人間はもういないから、このブダ小屋に閉じ込められてないブタ!」

 毒舌なモコは口ではカイが言ったことを認めていないが興奮した子犬のように翼をバタバタさせていることから彼女の確かなしん境があらわになっている。

「確かに、俺はもう昔の人間たちとは離脱してしまったから」

「もういいわ、電話もかけてあげたし、もう遅いから、ここを出てってもらうわ」

「モコ!」

「モリはだまってて」

「そうだね、もう行く時間になったね。ここに泊めてくれてありがとう。これで失礼します」

 立ち去ろうとしたカイは少し歩いた後これから一人で歩んで行くことを考えると先が見えないことに対しての不安がいっぱいで突き進む勇気を失ってしまった。迷った末カイは背後に振り返った。

「モコ、俺……」

「何か?荷物はもうまとめたはずよ、他に何か用?」

「しばらくここに居てもいい?家事も手伝うから。もし仕事が見つかったら家賃も払うよ」

「そう言われたら……ダメなことはないけど」

 貧困な生活にはもうすっかり慣れたがお金についての話を聞くと関しんを隠せなかった。

「いいわ、可哀想だからここに泊めてもいいわ。家賃の支払いを忘れないでね。たっくさん支払うんだよ。こ、この私がお金を好きだって勘違いしないで、あんたの体積が大きいからその分お金かかるでしょ」と困ったふりをしたあと言った。

 胸の前で両手を組んでいるモコはお金を気にしてないふりをしてココロの動揺を隠していることがとても可愛かった。そしてカイはモリの方に目を向け、自分のお願いを受け入れたモリも頷いた。

「やったー」

 住む問題を解決したあと、ウキウキしているカイはモリが言った機械城に深く関心を持っている。休みの間で少し遊んでも構わないと思ったカイは家に帰りたい気持ちを一旦しまい込んだ。二人を見ているモリは嬉しい気持ちを隠せずに口をすぼめて微笑んだ。気をとられていたせいか手に持っているお皿が滑り、地面落ちた。

 パリン……キッチンから食器が割れる音が聞こえたカイは昨夜と違い、慌ててキッチンへ向かった。モコもカイの後についてキッチンへと向かった。そしてカイはしゃがんで割れたかけらを拾っているモリを起こした。

 立ち上がったモリは額の冷や汗を拭いた。

「ごめんなさい、少しクラクラする。風邪引いたかな」と自分を助けるカイを見て謝った。

 機械人も風邪引くの?もし心で思った疑問をそのまま言ったら自分は相当空気を読めない人だ。そして自分の好奇心を抑え、地面に残ったかけらの掃除を始めた。

「まだ風邪治ってないの」とモコはしん配そうに言った。

「大丈夫だよ、もう治りそうだよ」

 モリは、モコにしん配させないようにまるで何かを隠しているかのように必死に笑顔を作った。

「あ、そうだ!モコ今何時?もうちょっとしたらおばあさんのところに行ってお手伝いしなきゃ。終わったらスーパーにも行かなくちゃいけない」

「8時よ」

 壁には時計がかかってないためモコは自分の時計機能を使って素早く正確な時間を伝えた。

「準備して行かなきゃ」

「あの、モリ、俺に行かせて。前はどうやって風邪を引いたかわからないけど、今回の風邪は昨日の夜気温が下がったからだと思うよ」

 割れた皿を片付けたカイはモリを梯子の横まで推し進めた。

「今日は朝早くからご飯を準備してたからあまり寝れなかったでしょ。風邪を引いたらよく休まないと。これからの仕事は安心して俺に任せて。」

「本当にいいの……」

「ちょうどすることがないから、モリへの恩返しだと思って」

「じゃあとのことはお願いねカイ、モコ」

 二人に助けてもらったモリは梯子を登って二階へ行った。


 玄関で靴を履き替えたカイは自分の泥だらけだった靴が夜の間に綺麗に掃除されていたことに気づかなかった。まだ着替えているモコを待っているカイは下駄箱の上に置いてある写真立てに目をつけた。

「かわいいな、これモリの小さい頃?」

 写真に写っているモリは両親と手をつないで花畑の中に立っている。かわいい服を身にまとい、少し赤い頬をしているモリは花のような笑顔を見せている。全ての嫌なことを癒すことができる純粋な笑顔だった。

「行こう」

 着替えたモコはカイの目の前に現れた。

「すげぇ、モバイルが服を着替えられるんや」

「どう?これ、モリが買ってくれたんだ、似合う?」

 カイの視線を察したモコは自慢げに両手で裾を持って大きく揺らして綺麗なスカートを見せつけた。しかし、モコは勘違いしているようで、片手で自分の胸元を掴み隠し、もう片手でカイを指した。

「な、な、何見てんだよ。このエロ豚!服を着替えることは当然よ、あんたの携帯もケースを変えられるでしょ」

 目を大きく見開いたカイはモコが言ったことを理解したようであった。モコと木小屋を出るとき昨日自分が倒れたところに置いてある木鉢に目を向けた。壊した花木鉢は修理されており、お花も夜の雨の潤いにより元気に咲いていた。

「もうぐずぐずしないで、早く行こう」

「う、うん、わかった……モリの家族はいなかったようだけど、他の場所に住んでるの?」

「モリの家族は大分前に亡くなったわよ。なんで?あんたはモリと家族になんかなれないからね、諦めなさい」

「あ、そういう意味じゃないから。ごめん、余計なことを聞いてしまったね」

 カイは自分の不注意に対して謝ったと同時に自分が疑問に思ったことをそのまま聞いてしまったことがとても愚かな行動だったということに気づいた。もしモリの両親が生きているのならば絶対彼女をこのボロい木小屋に残して他のところに住むことなどしないだろう。

「辛かっただろうな」と写真の笑顔を思い出し、悲しくなった。

 −−−なんでも知らないのにいろんなことを予想するんだね。本当にあんたのこと好きになれないわとカイの前で道を案内するモコは彼をちらっと見たあと前方へ飛んでいった。


 モコに案内されたカイは村の牧場についた。そして牧場で待っていた機械人のおばあさんは二人に向かって手を振った。モコの助けにより体が悪いおばあさんは安しんしてカイに牧場の仕事を任せ、その場を去った。

 モコはカイに仕事のやり方を教えるとき、自分が彼を嫌っていることにより彼の欠点が無限に拡大された。動作の一つ一つに対してモコはカイを説教する口調で言い、仕事をしている数時間はとてもきつかった。柴刈りをするときにもう指導は必要ないと思ったモコは「弁当を取ってくるから大いに期待するのよ」と一言残し、一人で家へ戻った。モコと仕事をするのはきつかったがもうすぐご飯が食べられると思い、少し辛くても我慢できた。

 お昼になり、太陽は雲の隙間から暖かい光を大地に注いだ。

「213個目の魔獣」

 斧を高く上げ、薪へと振り下ろした。想像力が豊富なカイは自分がしていることは魔獣をやっつけていると想像している。自分の趣味を仕事に紛らわしながするのは意外と効率が高い。

 モリがおばあさんのところでお手伝いしていた時は比較的に軽い仕事をこなしていた。例えば、家畜に餌をやったり、生えてきた雑草を取ったりする仕事が中心であった。しかし、これらの仕事に対しての収入は少なく、モコと生活を維持することが精一杯だった。

 しばらくしてモコは弁当を持ってカイの前に現れた。

「モリは大丈夫?少しは良くなった?」

「まだ寝てる。はい、これ。私が作ったおにぎりが入ってるのよ、味見はしたことないけど、でも美味しいと思うよ。自信あるから」

「ご飯作れるんだ、意外だね」

 モコは自分に対しての褒め言葉を聞いて自慢げに目を軽くとじ、頭を45度に上げた。そしてモコは称賛の続きを待っているかのように片手を背中に当て、腰を支え、もう片手は襟元に当て胸を張った。

 カイは今モコを称賛すると彼女は「え?なんて?聞こえない」または「口うまいね、続けて、気持ちいいの」というだろう。

 なぜなら、女の子はある時には満足できないからである。だからカイは弁当を受け取ったあと自慢そうにしているモコを無視し一言なく違うところに移動した。

 しかし、モコは一人で想像し始めた。

「モコ様、モコ様は全宇宙で一番堪能な人だよ。あなたの知恵でなんでもできると思うんだ」

「当然よ、なんでもできるって言葉はこの私にぴったりな言葉よ」

「うん?まだ私を褒め称える言葉が出てきてないの?スマートで繊細でなんでもできるは全部私を形容できる言葉よ」

 待ってもカイの褒め言葉が聞こえていないモコは目に少し隙間を開けカイを覗いた。しかし、カイは自分を無視したことに気づいたモコは瞼を開いた。

「おい!早く褒めてよ、褒めるんだ」

 食べ物に集中しているカイはモコを相手にしなかった。そして短気なモコはカイの方に向かった。

 仕事で疲れた時に食べるごはんはいつもより香りが増していると感じたカイは止めることなく口に運んだ。そして口の中で少しずつ溶けていく幸福感をゆっくりと味わった。

 弁当箱に入っているお米と胡麻は砂かの如く海苔の上にちらがっていて形はひどいが味は美味しいことに変わりない。

 しかし、まだモリの手料理とは比べ物にならない。なぜなら、一人はレシピに沿って作っていてもう一人は生活の経験を生かして料理をしているからである。

「本当ブタだよね、こんなに早く未来の食べ物になれるなんて。少し食べるのをやめて私の話を聞いて」

「ブタ、私が食べ物の中に毒を入れたとは思わないのかい?」

 きついことを言っているがカイは食べる動作を止める気配はなかった。呆れたモコは頭上が黒線まみれになった。

「また無視?失礼なブタだな、話を聞くんだ」

 もう限界に達したモコはカイの弁当箱に入り食べる動作を止めようと両手を広げた。

「あっハエ?」とカイは招かれざる客を箸ではさんで忙しかったお口がやっと言葉を発した。

「……モコだったんや、なんかようですか」


 ご飯を食べた後カイは小さくした柴の上に雨避けの布をかぶせた。すると蝶々と遊んでいるモコはカイに向かって飛んできた。

「早いね、もう終わったの」

「まだ、もうすぐ雨が降りそうだから。水に濡れたら火を起こしにくいから事前に濡れないようにかぶせた」

「もう雨降るの?」

「うん、向こう見てみ。暗くなってきたでしょ」とカイはモコに方向を示した。雨雲は肉眼ででも確認できる速度で牧場の方へ漂ってきた。

「本当に降りそうだね……あ!!傘忘れてきちゃった、しまった」

 雨がポツポツと降り始めた、モコは両手で自分の頭を覆い、恐ろしそうな表情を見せた。

 モコを見たカイは手を伸ばしモコを掴み取り、そして襟元の内側に入れた。

「や、やめて、何すんだよ。私を傷つけないで」

 この時のモコは弱い女の子になったかのようにお願いする口調で言った。そして、モコはカイの襟元から上半身を出し、自分はちょうど襟元と顎の三角地帯にいるため雨にはほとんど濡れないことに気づいた。自分はカイに守られていることを理解した。ついさっきカイが自分を傷つけようと勘違いしたことに恥ずかしくなった。するとモコは話題を変えるようにカイの弾力ある顎を突っついた。

「二重顎あるよ」

「そんなに太ってないから、モバイルだからわかるでしょ、これは角度の問題、角度!真正面とか上から見たら二重顎ないから……もう服の中でおとなしく雨除けして」

 雨がだんだんひどくなってきたのでカイは大またで倉庫へ入った。

 安全になったことを確認した後、モコは水が体に入らないように倉庫においてあるタオルで体を拭いた後カイに渡した。

「雨水が怖いんだ」

「当たり前でしょ!もし保護措置をしなければ雨にぬられた時、最初は頭が鈍くなってそのあとは手足が麻痺するの。そのあとは全身が痙攣して体が動けなくなる苦痛を味わうの。最後は死んでしまう。私もほとんどの機械人と同じだから仿水にしか触れられないの。雨水に触れたら大変よ」

 田舎に住んでいる機械人は傘を肌はなさずに持ち歩かなければいけない。もし雨が降り出したら傘で身を守ることができるからである。ほとんどの都市で発展した雨よけの施設が備えられている。

「この世界にはもちろん雨水を恐れない怪物みたいなやつがいるわ。例えばドラゴン型機械人とドラゴン型モバイル。ドラゴン型は皮膚が厚くて頭皮も厚いから。だから脳の容量も小さい、そんなに入れないからあんた見たいに頭悪いよ。」

 モコが言っているドラゴン型の機械人は異世界をテーマとしている作品に興味を持っているカイにとっては想像つきやすいものである。外観は伝説の中の生物である『龍』と同じで、獅子の体の背中に巨大な翼が付いていて二本足か4本あし、馬に似た頭があって機械人の一種であるだろう。

 でも−−−

「ドラゴン型のモバイルはどんなん?そんなに好きじゃないみたいだけど」

「ドラゴンの見た目と特徴があるモバイルだよ。ドラゴン型は私たち妖精型の天敵なの、犬と猫みたいな関係よ。ドラゴン型だけじゃないわ、動物型もあるから。考えることはできるけど生まれつき口がきけないの。話せないわけではないが生まれつき自分で話すことはできなくて他の人が話すのを真似て話せるようになるの」

「いろんな種類があるね、他にも人間みたいに思考を持つモバイルがあるんだ」

「いや、逆よ。あんたたち人間が機械人の意識があるんだよ。古典には人間は私たちの先祖みたいに勉強したり、ロボットのように働くことができる。違うの?」

「そうだね、勉強したり仕事したりすることは仕方のないことだよ。そうしないと生きていけないから」

 カイはタオルで頭を拭いた後水を絞って元の場所へ戻す時モコもついてきた。

「ねぇ、何日かしたらモリは機械城に行ってしまうからあんたもついて行ったら」

「うん、最初は町に行って帰り道を探そうとしたけど今の状況からしたらしばらくは見つからないね。でも行って見たいんだ、この世界を見て見たい。未来まで来てしまった原因が見つかったらいいのに、未来にきてしまった理由は絶対に存在するよ。今唯一確信できるのは、俺はこの世界を助けるために選ばれたのではない、だってそんな力持ってないから。ハハハ」とカイは自分をからかって笑った。

「行くのなら気を、気をつけてね、自分が人間だとバレないように。しん配してるわけじゃないからね!モリに迷惑をかけないように言ってるんだよ」

「安心して、気をつけるから、モリに迷惑をかけるようなことはしないから。でも、なんか二人真面目すぎない?モリも今朝同じようなこと言ってたし、本当にそんなに怖いの?」

「冗談じゃないわ、いまの世界をまだわかってないね。今はもう一万人中、一人の人間も見つけられないぐらいな時代だから。いま見た目が人間に近い人型機械人がいるんだけど、でも本質的に違うから。数も違うわ。人型機械人を自分の仲間だと簡単に信じ込んじゃダメよ。もしもバレたら奴隷として捕まえられるから。実験のマウスにされたり、そのまま機械人に殺される可能性もあるのよ。もしモリを巻き込んだら一生恨んでやる」

「万分の一の確率もないんだ、なんでこうなってしまったんだろ」

「はあ、仕方ないわね」

 カイがこれから情報を探すのに機械人の法律を犯さないようにため息を漏らしたモコは目をこすり、イヤイヤと倉庫の壁に画面を投影した。

 目から出た光が壁に三つの地域を『品』の形で表した。三つの地域はそれぞれ異なる景色の画面を見せ、すると画面に映像が流れた。

「人類は隕石が地球と衝突して消えてしまったと言っている本もあれば食べ物が少ない、宇宙人に攻撃されて消えてしまったと言っている本もある。とにかくこの点については深く追求しないほうがいいわ。そうしてしまったら機械人の法律を犯してしまうからね。牢獄には興味ないと思うけど」

「牢屋のご飯は美味しくないからね」と瞬きをして画面を閉じたモコはカイに言った。

 にわか雨の後太陽はまるで照れている女の子のように赤い頬を出して空に綺麗な虹橋を描いた。

 午後になってカイは柴刈りの仕事を続けた。何時間か経過したあと最後の柴を束ねて倉庫に運び一日の仕事を終えた。そしてモコは静かな場所へ飛び、体に保存されているおばあさんの携帯番号を探って電話をかけようとした。瞳孔に指紋のような模様が現れ、するとおばあさんの指紋を見つけたモコはおばあさんに電話をかけた。

「もしもし、おばあさん、私よ、モコよ」

 カイは通話中のモコを邪魔せずにそばで見守った。

「あ〜モコちゃん、どうしたの?」

 自分の声がはっきりとおばあさんに伝わるようにモコは両耳を塞ぎ、口を閉じた。

「仕事はもう終わったから、倉庫の方に来ていいよ、ゆっくりでいいよ」

 しばらくしたあと、倉庫まで来たおばあさんは仕事の出来具合を確認したあとカイに一日分の給料を支払った。給料を受け取ったカイはそのままモコに渡した。

「おやおや、もう自分のお給料を預けるの、モリちゃんの彼氏はきっといい旦那さんになるよ」とおばあさんは微笑みながら言った。

「い、いや、あの俺は……俺は……」

 おばあさんは信頼できる人だが自分は「一万二千年前の人間」だという秘密を言ったら驚かしてしまうため自分のことをどのように言えばいいかわからなくなったカイはモコに目を向け、助けを求めた。しかし、モコは持っているお金に妄想をしているためカイのことをすっかり忘れている。手に抱えているお金をじっと見つめゲラゲラ笑っているモコの口からよだれが止まらなかった。そしてカイは視線をおばあさんの方へ戻し、知人と関わりのある言葉を頭の中で探り始めた。友達、同級生、部活の部員、メル友、弟!

「そうだ!!遠い親戚なんです」

「親戚?親戚か、そうか。モリちゃんから聞いたことないね。もう歳だから忘れてしまったかもしれんな」

 カイの説明を聞いたおばあさんは驚きを隠せなかったが微笑みを見せて暴きださなかった。

 一息をついたカイは足元に視線を落として蜜を舐めたかのような笑顔を浮かべた。誤解されたが生まれてからずっと恋愛したことのないカイは心から嬉しくなった。しかし、自分は可愛くて単純で優しいモリと釣り合わないことを思うと笑顔が消えた。そしてカイと財布を持っているモコはおばあさんとあいさつを交わした後倉庫を後にした。

 アルバイト先に向かっているモリは少し離れた場所で家に帰る二人の姿を見つけた。モリは出かける前にモコが自分の小さな傘を家に忘れていることに気づき、今ピンピンしているモコの姿を見てやっと安しんした。

「具合はどう?」

「大したことないよ、今日はバーゲンの最後の日よ。スーパー行こうか」


 この村で経営されているスーパーの規模は隣の村のコンビニの2から3倍の大きさしかない小さなスーパーであるが住民の生活を満足するのには十分である。周りの住民は自分たちで育てた野菜をスーパーで売っている。見た目があまり良くないだけで品質には問題ない野菜を販売することで得た収入は自分たちの生活を補うことができる。このため経済的に良くない住民にも新鮮な野菜と果物を食べることができるようにスーパーで売っているの大半は値段が安い、隣の村の住民もここで購入することが多い。

 帰り道で片はしは田んぼに囲まれ、もう片方は川が流れていてその先にはまたも田んぼになっている。静かな道で田舎生活の癒しを大いに感じた。家までの道のりにまだ半分にもたどり着いていないのにカイは足をとめ、休みを取った。

「ごめん、まだそんなに歩いてないのに」

「うんうん、ありがとう、ここまで荷物を運んでくれて」

 石の階段のそばの道に立っているカイは両手に持っているビニール袋を置いて腰を下ろした。荷物をおろしたカイはビニール袋に締められた手の痛みも柔いた。たくさん食べ物が入っているビニール袋は今日の分だけではなく来週の分まで一緒に買った。自分の男らしい一面を見せようとしたカイは全ての荷物を自分に持たせたが、今になって自分の能力を高くみすぎてしまったことに気づいた。

 そしてモリは二人の間においてある荷物を動かし、カイの近くまで移動して座った。

 涼しい風が広い田んぼを飛びわり、川の方から吹いてきた。麦の香りが空気の中に漂い、とても心地が良かった。田んぼに挟まれた狭い道には農民がドローンに手を振っている。ドローンは仕切られたそれぞれの田んぼを飛び渡り、そして田んぼに向かって黄色い粉を巻き付けた。

 あれは農薬かな?とカイは思った疑問をモリに聞いたがモリは首を横に振った。あれが水を仿水に変えることが出来るマジックの粉で『仿水粉』と呼ばれている。一般的に田んぼの水やりは仿水を使わなくてはいけないが午前中に雨が降ったため粉をふりかけるだけで、仿水で耕したのと同じ効果を発揮できる。

「どんなところで仿水或いは仿水粉を使うんだ?」

 天然の植物と栽培用の植物は水と仿水の両方を使用することが出来る。しかし、食用の果物や植物を育てる時には必ず仿水を使わなくてはいけない。例えばリンゴの木は仿水で水やりをしなくてはならない。動物も同じ理屈で、食用の動物は必ず仿水で育てなくてはならないとモリはカイに説明した。

 そして、大分前に冒険隊が野外で迷子になり、あまりに餓えていたため野生のリンゴの木から取ったリンゴを食べてしまって全員亡くなってしまった事件があったことを話した。

 川の中にも仿水の粉が必須で、水の色を変えてしまうけど水質には影響なく逆に水質を改善する効果がある。学校の教科書には人類時代の末期に地球にはもう飲める水はなくロボットの生物科学者とロボット化学者がともに仿水粉を発明したことで水質が改善されロボットの後世が生き延びる事が出来たとモリは続けて話した。

 モリの言葉を聞き終えたあと、カイは「本当に不思議だな」と思ったとともに、未来で待っている未知の物事に期待していた。

 すると、モリの肩に座っているモコが突然話し出した。

「ねぇ、モリこれで十分足りるから、もうこれ以上買わないで。少しお金を残して生活していかなくてはならないから。あの豚の気持ちを考える必要はないわ、お腹が空いたら安い豚の飼料をやればいいんだから」とモコはモリの髪の毛で体のバランスを取り、眠気が襲ってきたモコは頭を必死にあげようとしたがやがて下を向いてしまった。ウトウトしているモコはまだスーパーにいると勘違いしている。そんなモコを見て二人は顔を合わせて笑った。

「そうだ、モリ、さっき使ったのはお金?」とカイは声を低くしてモリにスーパーで疑問に思ってことを聞いた。

「うん、鉄っていうんだよ。銅鉄、銀鉄、金鉄と七種の色で出来てる彩鉄なの」そして買い物で残った銅鉄を財布から取り出し、一枚をカイに渡した。この硬貨は鉄と銅を混合させて作られたもので、外観は少し暗めの赤紫色になっていて以前のコインと似ている。硬貨の表面には価値を示す数字を刻んでいなく、普通のロボット像になっている。ロボットは球体のような頭をしていて上半身は砂時計のような形をしている。手足は二節しかない蓮子のようになっていてまるで美術用の人形のようであった。おそらく機械人は一番原始的な姿のロボットを記念するためにその模様をコインに刻んだ。そしてカイはポケットに入っているコインを取り出し未来のコインと比較し始めた。

「俺が持ってるお金はもう使えない見たいね」

 いま自分が持っているコインを古い貨幣としてとっておくこともできると思うと自分を慰めるように考えた。

 するとお金に関する話題が聞こえて来たモコは眠気がすっかり消え、目を開けた。

「あれ何?お金なの?見せて、見せて」

「これは俺が生活してた時代のお金だよ」

 コインを受け取ってモコは確認した後、自分のものかのように抱きしめカイに返す気を見せなかった。そして甘えるように「これもらってもいい?」と言った。カイは子犬のような目でお願いをしているモコを見て頷いた。

「まったく、モコだめよ!早くカイに返しなさい、貴重なものなんだから。カイの1日分のお給料をとったでしょ」

「大丈夫だよ、これあまり価値がないやつだから。持っていってもどうせ使えないから。気に入ってくれたのなら記念に持ってて。後、今日の給料は家賃に使って」

 カイが話しているときは、モコは確かめるためにコインに噛みついた。すると硬いコインで歯が痛くなったモコは慌てて口を押さえた。

「モリ、これ保管して。家に着いたら自分の部屋に置いておくんだ」

 コインをモリに渡したモコは彼女の髪の毛を引っぱりブランコに乗っているように足をブラブラさせた。これが素朴な幸せなのでしょう。

「もう体力戻ったから帰ろうか」とモコの翼は電量の低下によってだんだん小さくなったのを見たカイは立ちあがって言った。

「うん、そうしようか」

「ねぇ、モリ、その荷物も持つよ。体力戻ったし」

「うん、ありがとう」

 ビニール袋を受け取ったカイはその場をさろうとしたとき川辺に古くなった殻を抜こうとしているカニが目に入った。成長期のカニは足を体の内側にひそめて体の成長を妨げる殻から抜け出した。するとカイはロボットが自分の体を車や武器に形変えるのをテレビで見たことがあるのを思い出し、未来でも同じようなことが存在するのかと疑問に思った。もし、モリが突然姿を変えてしまったら自分はきっと失神してしまう。

「モリは変身することできる?」と自分が失神するのを妨げるためにカイはモリに聞いた。

「できないよ、ほとんどの機械人と同じで変身できないの。姿を変えることもできないの」

 そのようなことが起こらない事を聞いてカイはホッとした。

「闘具ならできるよ。姿を変えられて、それを使ってる人を変身させることもできるよ」と二人の会話を聞いたモコはなんとなくこのことを言った。

「闘具?」

「うん、機械道具の一種だよ。たくさん種類があっていろんな形や形態に変えられるんだよ」

「はあ、まったく。道具は戦うときに使う道具の総称よ。幻想的な物語によくある魔法道具と似たようなもんよ、火を噴いたり、レーザーを出したりするわ…」

 とまだ理解してないカイを見て飽きれた表情をみせ、うんざりしながら説明をした。

「…でも、二者には本質的な違いが−−−」

 話を終えていないが、モコは突然止まった、遠い昔の夜の出来事を思い出していた。

 残月と星の光で照らされた小部屋、涙で濡れた枕、庭で無言に花を見ていた孤独な姿、悲しそうな顔、そしてモリのそばに飛んで行き、彼女がモコに悲しい出来事を言う。とぎれとぎれの記憶が脳内に蘇った。モコはモリをちらっと見た後、思い出させてしまうと思い、何も言わなかった。

「マジ!?未来で戦う時でも道具を使うんだ……見て見たいな、いや、欲しい!ねぇ、モコ、どこで手に入る?」

 魔法道具と闘具の二者の違いよりはどのようにそれを手に入れるかに興味を持っている。また、カイの心の中では二者に違いがない方がよりいいと考えているだろう。

「教えても無駄だわ、だって頭悪いし。機械人と戦うなんて夢見ないで!」

「強い闘具があったら体の欠点を補えることができるよね」

「ダメよ、強い闘具があってもそれを使う経験がないから、好奇しんがあたなを殺してしまうわ」

「早く教えて、じゃ、もし俺が闘具を持ったら戦うことに使わずに、うん……」

「……自分を守ることに使う。それを使って二人を守るってのはどう?」と闘具を使って戦うことに使わずに何に使えばいいかと考えたカイが言った。

「いらないわ、私たちは強いからあんたになんか守らなくてもいいわ」

「ねぇ、お願い」

「もう聞かないでよね、ダメなことはダメ!そんなに変身したいわけ?後さあ、神話物語の中の中二病にそっくりだよね、いや、あいつらは自分が変身するのを妄想してるだけで、あんたは違うわ、ほかの人が変身するのを期待してる」とモコは頭を傾けてカイを見た。

「中二病にかかってしまった中二ブタ!本当バカみたい」

「あ〜なるほど、今俺の目に映った自分のことを見て言ったでしょ」

「はあ〜知りたいこと得られなかったからすぐ顔を変えるのね」とモコはため息をつき、ガラリと態度を変えてしまったカイに対してがっかりした表情を見せた。そばで二人の会話を聞いているモリは自分とモコを守ってくれるココロが温まる言葉に抵抗をなくしてしまった。

「えっと、カイ、闘具を見たいのなら機械城で見れるよ。街ででも学校ででも」

 モコはモリの髪の毛を強く引っ張り、こう注意した。

「もうやめてモリ。もしさっき、私が闘具を言わなければ済んだのに。私のせいだから」

「え!?本当?そこに行って見てみたいなー。どうやったら闘具を手に入れられるんだろう?」

「機械城のある街で売ってるらしいよ、闘具街って呼ばれてるんだって……」

「ねぇ、もうこれ以上言わないで、自分を辛くさせるだけだから」

 モリがカイの疑問に回答しているとき、モコは下を向き、顔色が悪くなっていた。

「……あそこで闘具が——」

「モリ!!前のことはもう忘れたの!」と大きな声で叫んだモコはモリの言葉を遮った。

 今までは人を冗談気味に怒っていたのだが今回はカイが見たことのない真剣なものだった。

 そしてカイはまた余計なことを言ってしまったことに対して謝った後、モコは電池切れで眠りについた。

 あれからカイとモリは当分話さなかった。ただ無言で肩を並べて静かに歩いた。

 カイに見られたくないのか、モリは顔をそむけ涙が頬を伝わった。

 カイは鼻をすする音を聞いてモリが泣いていることに気づいた。何を言えばいいかわからないカイは100回、1000回、一万回の「ごめんなさい」を言っても意味がないと思った。そして、申し訳ない気持ちでいっぱいなったカイは目線を足下に落とし、強く唇を噛み締め自分を責めた。


 モリには闘具に対してよくない記憶があるようだ。昔、何かあったのかもしれない。


 夕飯の時間になり、横になって机の上で充電しているモコは意識が回復し、自分の体を支えて上半身を起こした。起きたモコは驚いた表情で机に置いてある美味しい食べ物を見て、その周りを飛び回り始めた。大きな塊のお肉、焼き魚、加齢、お寿司、ジャガイモのお好み焼き、卵焼きが置いてあった。普段食べられない食べ物を見てモコはキッチンで料理をしているモリの方に向かった。

「ねぇ、モリ、今日の夕飯豊富だね、なんか大事な日なの?」

「今日はカイを正式に歓迎するからお祝いしないとね」

 そしてシチュウを作っているモリは煮込んだ牛乳のスープを鍋に加えた。

「モコ、今朝お礼を言うの忘れてた。ありがとう、私のためにカイを受け入れてくれて」

「モ、モリのためじゃないから、カイを見て悪い人じゃやないから。私もココロからここにいてほしいと思ってるの、モリみたいにつよく思ってないけど」と自分の本音がカイに聞こえないようにモコは体を捻りリビングの方を見て、そして二階にいるカイに気づいた。

 −−−起きてからあいつを見てないなと思ったら、疲れてモリのベッドを借りて寝てたんだ。

 そしてモコは今朝モリの部屋にいた時の会話が脳裏を蘇った。

「そうだ、モリ、今朝のことなんだけど。朝着替えてたときにカイの時間を無駄にしないで、帰ってきたら話すって言ってたけど。なんでまた機械学園に戻ろうとしたの、もう長い間行ってないじゃない?学園、機械城のどちらにも」

「カイを機械学園まで連れて行こうと思ってるの。乱れた世の中だから学園にいた方が少なくでも安全を保証できるからと思って」

「保証できないと思う、だって前いつもいじっ、あっ、ごめん」

「でも学園に守られたじゃない。ほら、いまになっても元気じゃない……あくしゅん」とモリは話した後くしゃみをした。鼻をこする動作も可愛かった。

「ほら、体に異常が出たんじゃない。風邪は機械人にとって軽い病気ではないからね」

「大丈夫よ」

「いつもそうなんだから、大丈夫っていうの。話さなきゃ助けてあげられないから」

「ありがとう。妹としてモコはいつもおねぇちゃんである私をしん配してくれた。そうしてくれるだけで嬉しいよ」

「モバイルだけど、感情はちゃんとあるから。もしモリに会えなくなったら悲しくなるから。超悲しくなるから。だから、帰ってくるって約束して」

 モコのことを妹としてみなしているがそれでもモコは感情を持っていることを強調した。

「約束するよ。絶対帰ってくるから」

「指切り」

 そしてモリは濡れた手をエプロンで拭いた後モコの小さな小指と結び、二人は同時に「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます」と言った。

 しばらくした後、モリは鍋に塩コショウを振りかけて、固まらないように混ぜた後味見をした。そして火を消し、出来上がり。

 キッチンから出てきたモリは出来上がった鍋を食卓に運んだ。

「カイ、ご飯よ」

「は〜い、今行く、一秒で着くから……」

 ご飯が出来上がったのを聞いたカイは深い眠りから一気に目を覚ました。

「……わ〜!すごい」

「手洗ってきてね、今日はたくさん食べてね」

「うん、うん。うほほほ〜」と食べ物を見て嬉しくなったカイは狼のように頭を45度に上げ木小屋の外にも聞こえるぐらいの声で歓声をあげた。

 夜中になり、モコは釘で固定された粗末な小屋に入った。この大きさが鳥の巣と同じぐらいで長方形な小屋はモコのプライベートな場所である。

 モコは消しゴムで作られた硬めのベッドで横になり、枯れた花びらで作った布団を被った。昼間にカイから貰ったコインをぬいぐるみのように抱き寄せ、目をゆっくりと閉じた。

 ソファーで横になっているカイは木製の天井から漏れた月の光を見つめ未来にいた数日間のことを考えている時にモリは口をとがめさせてカイの視線に現れた。

「早く上がって寝なさい」とモリは上半身を低くしてカイをじっと見つめた。

「い、いや、大丈夫だよ今夜ここで寝るから」

「ダメよ、ここで寝ちゃ病気になっちゃうよ」

 そして、モリはカイをソファーから引っ張り起こし、力尽くして背中を押し、二階へと上がらせた。背中向き合って横になった二人は純粋に世間話をしていた。カイがいる時代の話や未来の話をしているうちに二人は眠りについた。

 機械城へのバスを待っている間は、男である強みを生かし、モリの生活負担を減らすためにおばあさんの牧場でお手伝いを続けていたと同時にモコとの関係もだんだん親しくなった。

 この数日では−−−

 風邪が治ったモリも仕事を始めた。家畜に餌をやるときにいつも斧で柴刈りをしているカイと顔を合わせて微笑んだ。

 モコはカイがこの家に来てからモリの笑顔が増えたことに気づき、カイをここに居させることもいいことであると考えながらカイの存在を完全に受け入れた。しかし、受け入れたとしてもモコはいつもカイに向かって暴言を言い放つことは日常的であった。そして、カイのことを安しんしたモコは牧場へと行かず一人で、家で遊ぶようになった。モコがそばにいないため仕事を終えた二人は恥ずかしくなって空気が気まずくなることもあった。

 カイはおばあさんの牧場から安く手に入れた木材で木小屋を整え、残った材料でモコにぴったりな別荘を作った。そして、モコもカイと協力して別荘にペンキを塗った。カイは木工の経験がなく、別荘もその後何回か倒れ長くもたなかったがモコは別荘を気に入っているため倒れるたび涙ながらカイに修理するようにお願いをした。

 機械城へ出発する前の夜、モコは充電器をカイに貸し、携帯は充電されたが依然として使えなかった。

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