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その4/日帰りバスツアー

■その4/日帰りバスツアー

 冒頭にも記したが、私は札幌旅行の1日を日帰りバスツアーに当てていることが多い。

 私は免許を持っていないので観光先はどうしてもバスか電車で行けるところになる。正直、行くだけだったらたいていの場所に行ける。しかし、それだけと行ける場所が1日1ヶ所、せいぜい2ヶ所だ。ほとんど移動手段待ちで終わってしまう。

 その点、バスツアーは便利だ。適当な名所を効率よく回ってくれる。電車やバスの発車時刻をいちいち調べる必要も無い。値段も手頃だ。旭山動物園などは、明らかにツアーの方が安い。

 湖に行けば遊覧船がセットになっていたり、おまけでその場所で使えるクーポン券やら何やらがつくこともある。

 目当ての場所の他に、ついでに寄る場所が意外に楽しかったり、思いもがけない遭遇があったりする。


 青い池に言った時のこと。青い池、2012年にAppleの壁紙に使われたとかで一気にメジャーになったらしいこの池。その名の通り青い。見た目のインパクトは抜群で、まるで溶けたブルーハワイのようだが、食欲はそそらない。

 池沿いを散策し、バスの発車時刻が近づいたので戻ろうとした時だった。

 池に続く道を花嫁が歩いてきた。

 いや、比喩でも何でも無い。文字通り、純白のウェディングドレスに身を包んだ花嫁がこちらに歩いてきたのだ。

 呆然と見ていると、その後を今度は黒いタキシード(だったと思う)を来た花婿が。

 さらにカメラをかついだ男が数人の男女とともに続いてきた。

 ここで私は理解した。おそらく新婚旅行に来て、この青い池をバックに記念撮影しようというのだろう。なかなか豪勢じゃないか。できれば撮影の様子を見たかったが、バスの発車時刻まで10分を切っている。ここから駐車場までの時間を考えるとその余裕は無い。

 ちょっと残念だと思いつつ、新郎とすれ違う。新郎の話す言葉は日本語ではなかった。なるほど、海外からの新婚カップルか。一緒にいる人数から見ても結構な金持ちのようだ。羨ましい限りである。

 とはいえ、私は心配になった。というのも、この青い池はどうして青いかというと、アルミニウムだかの成分が溶け込んでいるせいで、そのために生き物が住めない。言い方はなんだが、要は「死の池」である。

 確かに見た目はきれいだか、新婚の記念撮影の背景としては不適切だと思うのだが……。

 あの新婚さん。子供に恵まれると良いが。


 姿見の池では遊歩道を歩いていると、キタキツネと遭遇した。あちらにしてみれば、人間など見慣れた存在なのだろう。襲ってくるでもなし、遊歩道という動くコースが決まっているから怖くもなんともないのかもしれない。

 優雅に姿見の池まで下りていくと、池の水で喉を潤し、どこへともなく去って行った。

 この様子を私は動画に収めているが、残念なことにこの時、私はデジカメ(スマホではない)での動画撮影になれておらず、キタキツネが去った後もなかなか動画が終わらず、やたら画面がぶれたりしている。というのも、撮ったは良いが録画終了の仕方がわからず、

「あれ、どうするんだ?」

 とカメラをこねくり回したのだ。これがラストの手ブレの正体である。

 人に見せるには見苦しすぎる動画である。

 映っているのも、ただキタキツネが湖の水を飲んで立ち去る。それだけだ。変わった仕草のかの字もない。

 だが、たまに見返すとなんだかほのぼのするのだ。


 こんな調子でなかなか楽しんでいるバスツアーだが、不満もある。

 それは、ツアーに点いてくる食事が物足りないことだ。どのツアーでも品数こそ多いが残らず食べても腹6分目といったところ。私ですらこうなのだ。育ち盛りの若者にはしょぼくてしようが無いと思うだろう。

 これはまぁ、企画会社の戦略みたいなものだ。ツアーである以上、いろいろなところに行くし、そこには当然、店がある。この手の店で売っているものの多くは食べ物飲み物である。

 ちなみに、新千歳空港でちょっと触れた伊藤園のとうきび茶もツアーの休憩時間、飲み物が欲しくて寄った自動販売機で見つけたものだ。

 参加者にはできるだけお金を落としてもらいたい。人間、満腹だと欲も満足して財布を開かないものだ。

 金出す阿呆に渋る阿呆。観光客とすれば、金踊りも楽しいものである。



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