その1/新千歳空港
■その1/新千歳空港
おそらく道外から札幌を訪れる人のほとんどが利用するであろう新千歳空港。私も例外ではなく、空港と言ったらここと羽田空港ぐらいしか記憶にない。
そんな新千歳空港。かなり遊び所として充実しているのはないかと思う。
おなじみの土産物売り場やグルメコーナーは充分すぎるほどあるし、温泉施設(宿泊も可)もある。北海道新幹線が開通したとは言え、道外からの観光客のほとんどは新千歳空港にまずおりるのではなかろうか。つまりここは観光客が最初に訪れる北海道、良くも悪くも北海道のイメージに大きな影響を与えるだろう。
私は観光地で土産物店を見るのが好きだ。ちょっとした時間つぶしにこんなもってこいの場所はない。何しろ旅の思い出に、近所へのご挨拶にどうですかとばかりにアピールしてくる商品が店一杯に並んでいるのだ。ただ同じようなものばかりという欠点もあるが。
やはり土産物屋の主役は食べ物である。地元の果物を使ったクッキー、バームクーヘン、あと何というのだろうか、フルーツ餡をカステラ風の皮で包んだ洋風まんじゅうとでも言うべきアレ。
北海道ならやはり白い恋人を代表とするチョコクッキー、一時のブームは去ったがまだまだ根強い人気の生キャラメル、メロンを使った各種洋菓子。忘れて良いような気もするジンギスカンキャラメル。
個人的に好きなのがYOSHIMIの「札幌おかき Oh! 焼きとうきび」札幌に来る度、3~4箱買って帰る。東京でもあちこちで北海道フェアなるものが催されているが、これが売られているのを見たことがない。通販か札幌に来たときに買うしかないのだ。
……と思っていたら2019年、ついに東京のフェアでもこれを見つけるようになった。万歳である。
伊藤園が北海道限定で売っているとうきび茶も好きだ。そう、私はとうもろこし系が好きなのだ。
となれば外せないのが、新千歳空港限定で販売されている美瑛のコーンパン。ただ、このパンは5個入りの箱単位でしか買えないのが欠点である。
ちなみに、私はこのコーンパンで焼きたてが一番というわけでもないのを知った。初めて買ったときに少し時間が経ってからお召し上がりくださいと言われたのだが、やはりパンは焼きたてが良いという信条から、私は買ってすぐ口にした。
途端、焼きたてを勧めない理由を知った。焼きたてだと、コーンの水分がまだ残って水っぽく感じるのだ。1時間ほどすると良い具合に水分が抜けるので、私は空港で買ってホテルに着いてから食べることにしている。でもやっぱり箱買いだと少し持て余す。一人旅の人のためにもバラ売りを強く希望する。
土産物売り場で楽しみなのがソフトクリームである。何でも今や新千歳空港は北海道最大のソフトクリーム激戦区だとか。実際、テナントのかなりの数がソフトクリームを出しており、各店舗の食べ比べがここの楽しみの一つになっている。
ちなみに私のお気に入りはきのとやのソフトクリーム。ここのソフトは直接かぶりついても良いが、ついてくるプラスチックのスプーンで食べるのもいい。
初めて食べたとき、その「手ごたえ」におおっとなった。味の濃厚さを語る人は多いが、それだけならここにも負けないソフトは空港内にいくつもある。手ごたえだってある。しかし、ここまでの手ごたえはなかなかない。
スプーンを差し込んだときの抵抗はかなりくる。くると言ってもソフトクリームの抵抗である。有名な新幹線社内販売アイス並の固さはもちん、井村屋あずきバー並の固さもない。しかし、その抵抗感は「心して食せ」とばかりに食べる者に緊張感を与えてくれる。
もちろん、味もそれに相応しいものだ。これひとつで豪華なランチセットに匹敵する満足感がある。気軽な立ち食いを許さない。休憩所の椅子に座り、腰を据えて食べることを要求する何かがある。
そして何口か食べる内に、ソフトの中に世界が開かれる。ここのソフトは中までみっしり詰まっているのではない。コーンの外壁に合わせてとぐろを巻くようにそびえ、頂点で1つになっている。つまり中が空洞になっているのだ。
「底上げかよ!」
なんだか色っぽい巨乳アイドルが実は偽乳だったかのような衝撃。騙された。失意と絶望の中、それでもうまいのだからと食べ進むうち、私はそれに気がついた。
食べるためにスプーンを差し込んでもソフトが崩れない。傾きもしない。
町中でよく売られているソフトクリームは、舌で押すと簡単にクリームが中に引っ込んでしまう。コーンの中に押し込まれてしまう。それだけ外からの力に弱い。よく言えばなめらか、悪く言えば貧弱。芯の入っていない壁のように簡単に崩れてしまう。
だがこれは違う。崩れることはおろか傾くことすらなく舌やスプーンを受け止める。まるで「そんじょそこらのソフトクリームと一緒にすんじゃねえよ」とドヤ顔を見せているかのようだ。もしかして、台風の中、外に出してもこのソフトは崩れることなく立ち続けるのではないか。そんな気もする。さすがに実際はそんなことはないだろうが。
他にも何店か食べて気がついたが、空洞ソフトはここに限ったものではない。中の空洞ぐらいで崩れるようなソフトは、そもそもここでの競争について行けない。健全な競争は、全体のレベルアップに不可欠なのだとつくづく思う。
食べ物関係ばかり書いたが、私はそれとは別に気になるものがある。最初にちょっと触れた空港内にある温泉である。一度そこでのんびりしてみたいと思っているが、到着時はスーツケースが気になり、出発時は飛行機のフライト時間に合わせて空港に行くため時間が合わない。
結局、今もって私はこの温泉を利用したことがない。
来年こそは利用したいと思っている。