第34眠:なんでそうなる
翌朝
「朝じゃないですからね、師匠」
心を読むな、弟子。
「それよりも、あの二人をどうにかしましょうよ。もう、止めるのも嫌なんですよ」
「そう。それをしないといけない」
その言葉に
「し、ししょー! 良かった! いつも寝てるから状況分かってないのかと心配していました! 私はもう限界ですからね! あのキャットファイト見るの!」
「いえ、それはどうでもいいのですが~」
「ししょー!」
「ミガサ、棍棒を二人分用意してください。女性が振り回せる程度の大きなのやつを」
「棍棒?」
そう棍棒。
「口で言って分からないなら、身体で憶えさせます」
二人の前に、大きな巻物を並べる
「いいですか~。発動は成功した。後は威力だけです。そして、この威力の問題が分かりました。魔法構成のやり方ですね」
私は、巻物を指差しながら
「基本的に、魔法威力は、瞬発力と呼ばれる要素に左右されるんです。だから気にしていませんでした。ところが、魔法構成においても、それがコントロールできるんです。それがこの記載ですね」
魔法構成の一部分を示す。
「これの記載が大切になります。ただ、ここを書くのって難しいんですよね」
うんうん。と頷く二人。
そう。そこは
「二人の手が交差するんです。だから、いつも構成はおざなりになっていた。それでも発動は出来るから気にしなかった。今回はこの交差する部分の精度を上げましょう~」
ミガサが手を上げる。
「どうぞ」
「師匠。ここに、これだけ精密に書けって、位置をよく考えないと」
「はい。抱き付く勢いじゃないと書けないでしょうね。現に氷の壁の魔法構成を書いた時には、私はフェイルに抱き付く感じでしたし、アニータが失敗したときにフォローしたときも、私はフェイルと接触していました」
つまり、この仲の悪い二人が、抱き付いて書かないといけない。
「さて、ここで聞きます。私にはまだまだ高次元魔術、合成魔術のノウハウがある。炎の壁以外にも、知られている極炎魔法よりも強烈なもの、そして、土の高次元魔術である大地魔法でも、フェイルに合わせた構成なども教えられる」
二人の目がキラキラする。
「フェイルは、ミガサとの訓練で大分マシになってきました。私のアレンジした魔法構成なら、あなたは簡単に大地魔法を扱える」
「う! 嬉しいです! 本当ですか!」
「アニータ。あなたは歴史に名を残したいですか? 極炎の魔法の更に上、イフリートすら焼き尽くす炎の魔法も出来るかも知れない」
「使いたいです! 私は! 歴史に名を残したい!!!」
なので
「で、あれば、手段は問いませんよね? 嫌いだから、手も触れたくない。とか、ありませんよね?」
二人は嫌そうな顔で、見合わせる。
「少しでも動きが鈍ったら、この棍棒で指摘します。ミガサ、手加減しないように」
「はい!」
「じゃあ、始めましょう」
棍棒は単なる威嚇用の武器ですから。
これで殴られると思えば、ちゃんとやるでしょう。
しかも、これが出来れば、自分達の願っていることが叶う!
それは仲違いとか、そういうの横においておける。
そう思っていた時期が私にもありました。
「だから! 魔法構成書くのを優先するの!」
ミガサから棍棒が飛ぶ。
「アニータ! そこで躊躇わない!」
私も棍棒で、肩を叩く。
この二人。
『だって! この馬鹿が!!!』
全然ダメだった。
とにかく、手が触れたら嫌悪感丸出しで蹴ったりするのだ。
魔法構成の途中にである。
「分かりました。魔法構成の失敗は恐ろしい。とにかく、二人が息を合わせる訓練を明日やりましょう」
うーむ。長く時間かかるなぁ。
そう考えると、私とミガサって凄かったんだな。
それでも
「師匠、禁忌とされた合成魔術を、学園生に使わせるんです。時間かかるのは勘弁してあげてください」
ミガサ。
「そうでした。焦ってしまって。ごめんなさいね」
その言葉に
「師匠、そういう素直なところ、凄いと思います」
「年上ですから~」
「あ! 私を年上と認識してるんですよね! なのに、普段の対応酷くないですか!?」
また泣きそうなミガサ。
「おやすみなさーい」
「ししょー!」
寝よう、寝よう。
ご飯食べて寝よう。
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最近、宿が豪華になった。
なんと、水浴び出来る専用ルームができて、しかも暖かいお湯!
お湯を大きな箱に満たして、そこに浸かれるのだ!
なんという極楽。
「ミラーにお買い上げ頂いてもいいぐらい、お金貰ってるから」
だそうです。
この宿本当に心地いいなぁ。
ご飯はいつでも食べれるし。
そうやって、お湯に浸かって浮かんでいると
『とにかく、私は、超魔術を使いたい』
『私もです。大地魔法を容易く扱えるようになりたい』
アニータとフェイル。
そっか、ここは、フェイル達の部屋の下か。
声が響いて聞こえる。
『であれば、分かるよな』
『……ええ。分かります』
仲直りするのか。ああ、良かった。
と思っていると
『んん♡』
『はう♡』
ん?
『ちょ、ちょっと、そこまで、しなくても♡』
『だって、触れ合いに、なれないと』
ああん?
なにしてんの?上で。
『ひ、ひう♡ そ、そこ、ダメだから♡』
『仕方ないでしょ! 肌の触れ合いに慣れないと』
つまりだ、あいつら
「肌が触れても平気になれるようにセッ○スしてんの?」
なにそれ。どんだけ思考飛んでるの?
変な気分になるので、お湯から上がり、部屋から出ると、フェイルの部屋の前で、ミガサが顔を真っ赤にしていた。
「ミガサ」
小声で言う
「し、師匠、あの」
「お湯に浸かっていたら聞こえました」
「な、なんで、こうなるのか」
「私には分かりませんが」
ドアを見ながら
「あの二人が全てを投げ打ってでも、成功したいのは間違い無いですよ。その気持ちがあるのが分かっただけ嬉しいです」
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「えへへ。男って弱いなぁ」
笑顔で笑う少女。
目の前には血塗れになった娼館。
少女の妹が入れられた娼館を、客と護衛毎ぶち殺した。
「ああ♡ この身体は幸せ♡ ああ、もっと殺したい。男を殺したい。八つ裂きにした時の悲鳴を聞きたい♡」
少女は、血塗れのまま歩く。
「殺したい、殺したい、殺したい、殺す、殺す、殺す、殺す」
目の前に知らない男性がいた。
今までは、仇討ちだった。
親を迫害した者。
兄弟を迫害した者。
でも、それも殺し尽くした。
まだ殺したりない。
だから
「お前、なんだ、その血は? 誰かに襲われたのか? 衛兵を呼ぼうか?」
親切な男性。
見知らぬ女性を、気遣う男性。
「ごめんなさい」
「え?」
その男性を掴み
「ぐ、グギャアアアアア!!!」
悲鳴
その男性の足を、素手で破壊する。
「ああ! 素敵な悲鳴! 私を楽しませて! 私! 悲鳴大好き! 傲慢な男が! 泣き叫んで哀願する悲鳴が大好きなの!!!」
その少女は絶頂しながら、その男を破壊していった。




