第27眠:妖精にも穴はある
『ぶち殺す』
私とメイルがハモった。
妖精が持ってきたその財宝
まず、多すぎて荷台が壊れた。
あの馬鹿妖精、荷台はいっぱいあるのに、なぜか、2つの荷台にドカドカ乗せたのだ。
なので、荷台が壊れるわ、それの移動で苦労するわで、メイルは泣きそうな顔で対応していた。
一方で私にだが、この馬鹿妖精共、一回帰ったかと思ったら、私の前に飛び回り
『お前は強いが、私達を殺せない』
『氷と風のお前には無理』
『私は水は無敵』
『私は風は無敵』
『ギャハハハハハハハ!!!!』
『ギャハハハハハハハ!!!!』
延々と挑発され続けた。
「メイル、もうゴールドドラゴンとかどうでも良いでしょう?あの馬鹿妖精を倒すための魔法開発に全力を尽くします」
「そうしてください。私は帝国に行き、この財宝を見せて説得します」
そう、魔法の開発。
その為には
「ミガサ、学園に戻って協力を仰いでください。私では難しいが、あなたならば話を聞いてくれる」
「それは構いませんが、どういう話をすれば良いのでしょうか?」
「禁断の魔術書を手に入れたと言いなさい」
「分かりました」
「魔法ギルドには私から伝えます。奴らを消滅させるには、私達では無理なのです。私達は知識を提供する。やるのは他の魔術師です」
そう、氷と風の私達では無理。
だが
「妖精の実体化も可能ですよ、メイル。妖精を犯したいなんて、逝かれた趣味の皆さんが、どれぐらいいるかは知りませんが、探せますか?」
「大丈夫です。人の性的趣向は無限です。必ずや探し当てます。人型ですし、穴もありそうですし、後は些事でしょう。必ず見つけだします」
=====================
メイルキャラバンはブラックドラゴンを撃破した。
そして、その財宝をすべて帝国本国に提出した。
そう、すべて。
「信じられん!? これは!!!」
皇帝を始め、その財宝の数々には、皆驚愕した。
伝説扱いされていた、財宝、武具、秘宝が、いくらでもあった。
価値を金貨で現すのは不可能だった。
「皇帝陛下。これらは、私達に扱える代物ではありません。全てご提出致します」
「そうか。大儀である。無論褒美は出す。キャラバンの恩賞に困らない額は保証しよう」
「ありがとうございます。それで、ゴールドドラゴンの討伐も御命令受けましたが、今回の討伐で限界を感じました。キャラバンとしては、これ以上の運用は厳しいと判断しております」
「そうなのか? これだけの成果をだしたのにか?」
「はい。もう、キャラバンが扱える規模ではありません」
「それは残念だが、理解もしよう。なにしろ、帝国軍でも、ブラックドラゴン撃破は難しいと予想されていたのだ。よくやったメイル。恩賞は、この儂の権限において、保障しよう。不満があれば遠慮なく申せ」
「かしこまりました。それと、これがブラックドラゴンの角と目です」
「うむ。飾っておくかの。本当によくやった」
「失礼致します」
メイルは、謁見を終わらせると
「次は貴様等だ、大妖精。私を娼婦扱いした侮辱、必ず倍にして返してやる」
=====================
その夜、メイルは夢で呼びかけられた。
『起きろ、メイル』
「……なにものですか?」
『お主等がゴールドドラゴンと呼ぶものだ』
「ああ、仇討ちですか? すみません、私達は別の敵を見つけました。あなたに構うつもりはありません」
『いや、黒きモノ、お主等の言うブラックドラゴンは蘇った』
メイルは驚き、目を見開く。
「ミラーさんが言っていました。人間には不可能だが、蘇りの魔術があると」
『条件が多いがな。今までは、お主等は、死体をバラバラにするから治しようが無かったのだ。今回の奴は、角と目だけだったからな。可能だった』
「馬鹿妖精が、加減抜きで財宝を運んだからです」
『それも知っている。あいつらの馬鹿さ加減に救われるあたり、やつの悪運も大したものだ。そこでだ、話合いを持ちたい』
「なんでしょうか?」
『シルフィードとウインディーネ。奴らこそが仇だ。ドラゴンにとって、もはや見逃せる存在ではない』
「ケットシーを、ブラックドラゴンが退治したと聞きましたが」
『そのケットシーに、何体もドラゴンは殺された。また今回もな。お主等もドラゴンを殺して回る厄介な存在だ。だがな、あの大妖精共は、あまりにも厄介すぎる』
「敵の敵は味方ですか」
『そうだ』
「私達の身の安全の問題があります」
『保障しよう』
「口だけでは」
『ドラゴンの契約だ。破れば死に至るよ』
「……分かりました」
『奴らは殺せそうか』
その問いかけに
「殺す? そんな手緩い話にはしません」
メイルは、怒りを爆発し
「実体化の魔術で! 実体化をさせて! 能力を封じ! 徹底的に陵辱します! 生まれたことを後悔し、殺してくれと頼まれるまで陵辱する!」
『凄まじいな。なにがお前をそこまで怒らせた』
「娼婦扱いもそうなんですが、あいつら、旅の私を馬鹿にし続けた貴族そっくりです」
メイルは、幼い頃に村を出てキャラバンにいた。
10の時にはキャラバンを率いる立場になった。
キャラバンで成功し、大金を得たメイルに、嫉妬混じりの罵詈雑言はよく浴びせられていたのだ。
『あんな年でリーダー? 身体を売ってるだけでしょう? 名前だけよ、あんなの』
『汚らわしい顔ね。どれだけ男に身体を売っているやら』
『キャラバンにいる下民に身体を捧げているのでしょう? 低俗な女にはお似合いね』
メイルは無視していたが、その度に怒りをためていた。
その怒りが、規格外の成功を産んだと言ってもいい。
メイルはめったに怒りを見せない。
その怒りは、行動への原動力になるからだ。
だが
「あの大妖精は殺す。私の存在理由を否定した、大妖精は、屈辱の中で殺す」
怒りに燃えたメイルを見ながら
『ならば手を貸そう』
ゴールドドラゴンは、メイルの手のひらになにかを刻み込む。
『ドラゴンの誓いだ。必ずや大妖精を滅ぼそうぞ』




