第26眠:馬鹿はお前だ、馬鹿妖精
私達は山で待機をしていた。
「元々妖精と魔法使いは仲が悪かったのですが、今回の件で、大嫌いになりました。今後の目標は、あの馬鹿妖精を退治する魔法の開発です」
「そうですね。私の人生の目標が決まりました。あの馬鹿妖精は娼館にぶち込みます。そのために、金に糸目は付けません」
私とメイルは意気投合していた。
「あの二人相当ムカついているのね」
エノームさん。
「ウィンディーネとシルフィードに会うなんて未だに信じられないわ。よく無事だったものね」ネクリさん。
「そんなヤバいのですか」
ミガサ。
「ヤバいなんてレベルじゃない。大妖精イフリートなんて雑魚よ。ウィンディーネと、シルフィードは、過去に国を滅ぼしている」
「く、国?」
「風のシルフィード。水のウィンディーネ。狡猾で残虐。少なくとも人間はゴミだと思ってるわ」
人間はゴミ。
その言葉に天を見上げたミガサは、目が天になった。
ドラゴンが来た。
漆黒のドラゴンが。
「メイル、次の討伐はゴールドドラゴンをパスして、あの馬鹿妖精共だから」
「はい。あの馬鹿妖精共、産まれたことを後悔するまで陵辱してもらいます」
天からドラゴンが来た。
五体も。
『ドラゴンは馬鹿だ』
『あっさり釣れた』
『五体も釣れた』
『全部殺せ』
天の上から響く声。
大妖精ウィンディーネとシルフィードは、クルクルと天を回っていた。
「馬鹿はお前らだ。馬鹿妖精。必ず娼館にぶち込んでやる」
メイルは吐き捨てると
「エノームさん! ネクリさん! ミラーさんに魔力を最大限送り込んでください! 素材は諦めます! ミガサさん! 五体がブレス攻撃するかもしれない! 祝福の壁が頼り! ブレスをよく見て、発動してください! ミラーさん! どんな獣も! リーダーを失えば乱れる! ブラックドラゴンから狙ってください!」
各メンバーに指令を出す。
私達は一斉に詠唱を始める。
私は
『絶対零度!!!』
ブラックドラゴンに向けて放つ超魔術。
氷耐性なんて関係ない。
すべてを氷漬けさせる。
『DYUUUUGYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!』
ブラックドラゴンが咆哮する。
四体のドラゴンは乱れ、バラバラにブレスを吐こうとする。
だが、ミガサが
『祝福の壁!!!』
そのブレスは防護。
そして
『DYYYYYYY!!!GUUUUOOOOOOOO!!!!!!!』
断末魔。
ブラックドラゴンは、墜落した。
「ミラーさん! 次です!」
メイルの声で、私はすぐ別のドラゴンに向き合う。
しかし
『ギャハハハハハハハハハ!!!!』
『ギャハハハハハハハハハ!!!!』
『死んだ!死んだ!死んだ!』
『バカドラゴン死んだ!!!バカドラゴン死んだ!!!』
『人間如きに殺された!!!』
『人間如きに殺された!!!』
『あとのドラゴンは雑魚だ』
『私達が殺してやる』
『ギャハハハハハハハハハ!!!!』
『ギャハハハハハハハハハ!!!!』
下品に笑うウィンディーネとシルフィード。
そして
『雑魚は死ね』
『ケットシーの仇』
四体のドラゴンは、ズタズタになり墜落した。
瞬殺。
「な!?」
「こ、こんなに強いの!?」
この大妖精。異常に強い。
『ブラックドラゴンは無駄に強かった』
『雑魚とは比べ物にならない』
『よくやった。ご褒美だ人間共』
『今運んで来てやる』
なにが?と思ったが
「戻りましょう。あの馬鹿妖精には関わりたくありません。ブラックドラゴン撃破の証に、
角と目ぐらいは取らないといけませんが」
だが、山を降りようとした時点で、妖精達はもう戻ってきた。
私も、メイルも、みんな呆然としていた。
そこには
『ブラックドラゴンの財宝だ』
『運んでやった』
『好きに使え』
『私達には不要』
『こんなもので人間は喜ぶ』
『人間は馬鹿だから』
『ギャハハハハハハハハハ!!!!』
『ギャハハハハハハハハハ!!!!』
下品に笑い、シルフィードとウィンディーネは去った。
荷台には、フレイムドラゴンどころではないぐらいの財宝が山と積まれていた。
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メイル達がいなくなったあと、この山に黄金色に輝くドラゴンが現れた。
『だから、忠告したのだが』
ブラックドラゴンの遺体を見ていた。
メイル達は、角と目と、鱗の一部しか回収しなかった。
『馬鹿妖精共に関わってはならぬ。当然の結末だ。だがな、妖精が馬鹿で良かったな』
ゴールドドラゴンはブラックドラゴンの前で呪文を唱えると
『蘇り』
ブラックドラゴンは、息を吹き返した。
『敗れたのか?』
『ああ。他の四体はウィンディーネとシルフィードに葬られた』
『やっと分かったぞ。心臓を凍らせるのだ、奴らは』
『そうか。だが、あの魔法は厄介だな。単なる凍結魔術ではない。対策のしようもない』
ゴールドドラゴンは溜め息をつくと
『人間は妖精と仲は良くない。敵意剥き出しだ。だから、それに付け込もう』
『つまり?』
『奴らに大妖精を討伐させる』




