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第24眠:大妖精達は性格が悪い

「大妖精イフリート。ミリアムさんの仇」

私はミガサに改めて言う。


「そう言えば、ミリアムさんってどういう方だったんです?」

私はメイルを見ると


「一度だけでした。初めての討伐に来ていただけたのです。ミリアムさんと、エノームさんが最初の依頼」


「そう。そして、メイルは素材を売るのに結構時間がかかってね。その間に有名になったミリアムは、オーガーバスターになり、そして、イフリート討伐に行った」

エノームさん。


「オーガーは分かりますよ?でもなんで急にイフリート?」

ミガサの疑問。


「勘違いしちゃったんだよ。自分は凄いって。まあ実際ミリアムは凄かったんだけど、ニールの知識がなければ勝てない」


「……なるほど」

「大妖精イフリートは強い。ミガサ、なぜブリザードが必要か。それはブレス攻撃をされるからです。遠距離での、広範囲氷魔法が必要だった」


「それは分かります。ところで、先にブレス攻撃をされる時は?」


「そうならないように先手必勝。ブレス防護は不要です。イフリートは、ブリザード以外では殺せない」


「え?でもブリザードって、過去にも使用例があまり無いのでは?」

「はい」

「じゃあ、どうやって倒せていたのですか?」

「倒せてません」


「は?」


「大妖精イフリートの討伐記録はゼロです」 




イフリートのいる山に着く。

緊張するミガサを支えながら山を歩く。


「あれね」

大妖精イフリート。


遠くから分かるあの大きさ。

ドラゴンとは言わないが、相当デカい。


「ネクリさん、エノームさん。魔力供給の合成魔術、お願いします」

「ええ」「いくわよ」

旅の途中で構築した、魔力供給の合成魔術。


これが、驚くほどの効果をもたらした。

まだ研究段階だが、合成魔術は通常の魔術よりも、遥かに高い効果をもたらす。


「ミガサ。いきますよ。この距離で仕留める。大妖精イフリートは、ここで仕留める」

「分かりました」


ミガサとの詠唱。

大きな魔法構築。


後ろの二人からの魔力供給がなだれ込んでくる。

これならば


『強き風よ!!!』

ミガサの詠唱。


『吹雪となり! 全てを凍てつかせよ!!!』

私の詠唱。


そして二人合わせて


『ブリザード!!!!』



魔法は発動した。

前が見えない程の吹雪。


どうなった?

分からない。

全ては凍りついた。

白くなった。


ここで、私は有り得ない声を聞いた。


『イフリートを殺したの?』


美しい声


『すごいのね、貴女。びっくりだわ』


もう一人来る。


私の頭上からの声。


見上げる。


その姿を見て、エノームさんは座り込んだ。

ネクリさんは祈り始めた。


メイルは目を見開いていた。


ミガサはよく分かっていなかった。


この二人、いや、この2つは


「だ、大妖精ウィンディーネと、大妖精シルフィード?」


魔法使いの敵である妖精。


その中でも大妖精と呼ばれる7神は別格だった。

イフリートもそう、ウィンディーネもそう、シルフィードもそう。



魔力は空だ。

そもそも氷魔術と風魔術が主体のこのパーティーと、水と風の妖精など、相性が悪いにも程がある。


シルフィードは、意地悪そうに笑った。


『随分疲れてるのね、今なら殺せるかな?』

逃げないと。

でも、風の大妖精シルフィードから逃げられる?難しい。


『怯えないで、殺さない』

ウィンディーネは、綺麗な声で言う。

『殺すつもりならもう殺してるからね』

『キャハハハハハハ』


妖精は性格が悪い。


『イフリートは死んだ』

『お前らが殺した』

大妖精は歌うように言う。


そして

『その人間に頼みがある』

『頼みなんかじゃない。命令だ』

『キャハハハハハハ』


頼み?命令?


『ドラゴンが騒いでいる』

『迷惑だ』

『殺してこい』

『殺せ』


「ドラゴン?ブラックドラゴンの事ですか?」

メイルが言うと


『お前、エロい』

『ドラゴンが好きそう』


ドラゴンに好かれそうって、どんなエロさ?


『黒いドラゴンが荒らしている』

『妖精達も死んでいる』

『目的はお前たちだ』

『早く殺せ』


「言われなくとも、殺します。場所は遠いですが」


『私達が誘き出してやる』

『そして殺せ』

大妖精は淡々と答えたあと。


『ドラゴン倒すには方向が違うと思ったらイフリートだった』

『ビックリした。でもイフリートは馬鹿で粗雑で早漏で短小だから別にいい』

『大妖精を殺したことは不問にする。だからドラゴンを殺せ』

『その代わり褒美をやる』


褒美?


『妖精の魔術書だ』

『人間には不可能な魔術もあるが』

『あの合成魔術が出来るなら、それも分かる』


魔術書。

『死者も蘇る』

『人間は馬鹿だから大騒ぎになる』

『キャハハハハハハ』

『キャハハハハハハ』


魔術書は目の前に置かれた。

その内容。


古代魔法語だった。


そして、魔法構成が図で書いていた。

整頓されていて、一目でわかるその魔法構成。


「……うそ」

有り得ない。この魔法構成は有り得ない。


『試してみろ』

言われた通りに、たまたま開いた、空中浮遊の魔術を使う。


あっさりと、発動した。


フワッと身体が持ち上がり、思うように空で動ける。


こんな真似が可能なのだ。


「み、ミラー!?」

みんながビックリするが、私は魔術書に目を奪われていた。


「でも、こうやって見ると、ジェラハグドーム様の天才加減が逆に分かる」


妖精の魔術書は、魔法構成の無駄が完全に省かれていた。


ジェラハグドーム様の魔術は、それに近い形で、無駄を省いていた。


「不老の魔術ですら、大騒ぎになったのです。蘇りの魔術など」


『騒ぎになるだろう』

『人間は馬鹿だから』

『お前が黙っても広めてやる』

『イフリートを討伐した奴が蘇りの魔術を手に入れたと』

性格悪い。


「なぜ、こんなものを」

『ドラゴンを殺せ』

『私達の親友、ケットシーが死んだ』

『ドラゴンに殺された』

『あいつは殺す』

『お前らが殺せ』

『あいつは強い』

『私達では殺せない』

『だから殺せ』

『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ』


妖精達は呪詛を撒き散らしたあと


『殺さなければ殺す』

そう言って消えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ………超越種の中でいかにゴールドドラゴンとペンギンが善良だったかよく分かるわ…… 厄ネタふやすんじゃねー
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