第23眠:大妖精イフリート討伐へ
準備は出来た。
大妖精イフリート討伐にいよいよ出発する。
今回は素材凍結はないのだが、エノームさんとネクリさんも来る。
「魔力供給なんだけど、旅の間に色々実験するからね。ミガサ」
「はーい」
エノームさんとネクリさんは、魔力供給をしてくれるのだ。
この魔力供給の実験はまだ不確定な面が多いので、まだ調整が必要。
でも
「まあ、上手くいかなかったら、ミガサが太ればいいだけだから」
「エノームさん!わたしがんばりますから!」
ミガサが張り切る。
「ミラーさん」
「どうしたの~メイル?」
メイルに呼ばれる。
「この旅の間に、少し相談しないといけないことがありまして」
「なんでしょう~?」
「馬車でお話しましょう」
メイルの馬車は豪華だった。
「また、素敵な馬車ですね~」
「あるうちに贅沢しようかと思いまして」
良い考え方ですね。
「ミラーさん。私達は今は少しヤバい連中に絡まれています。ジャブローって知っていますか?」
「……世界最高峰の殺し屋」
「それに殺されそうになりました」
「私とミガサにも、ガル&ベリーという殺し屋が付きまとっているわ」
メイルの眉が跳ねる。
「ガル&ベリー。また有名な暗殺者ですね」
「メイルはどうされるのですか?」
「ええ。私は決めました」
メイルは両手を広げ
「大妖精イフリートと、ブラックドラゴン、ゴールドドラゴン。この撃破で、私は引退します」
引退。
「誰かと結婚するんです~?」
女性の引退と言えば結婚だ。
「いえ。全然。私は旅が好きです。世界を巡る旅でもしようかと」
「旅ねぇ」
それも楽しそう。
「ミラーさんはどうされます?」
じっとこっちを見るメイル。
「どう?ですか?」
「不老の魔術はどうされるのですか?」
そうか、ニールはメイルに伝えたのか。
「メイルは興味無いでしょう?巻き込みたくありません」
「ええ。全く。私はしわしわの、可愛いお婆ちゃんを目指していますから」
可愛いお婆ちゃんか。
いいなぁ。そういうの
「今回の件で思い知りました。不相応の金は不幸を招きます。私はドラゴン殺しで十分だった。フレイムドラゴンの財宝は、足を引っ張る存在です」
「もうブラックドラゴンとゴールドドラゴンも止めちゃえばどうです?」
「それは無理です。帝国の本国からの依頼ですから」
なるほど。
「でも、もうこれ以上の金は不要です。分配したら、全部帝国に収めて終わり。私はそれでいい。ミラーさんは?不老の魔術に終わりはありませんよ。希望者はつきない」
「そうですね~」
私は少し考えて
「どちらにせよ。不老の魔術は私には使えない。光と闇の合成魔術ですから。私はどちらも使えない。知識だけ提供するだけです。本でも書いて引退しますよ。後は寝て暮らします」
「聞きたいことがありました。不老の魔術は、なにか欠点はないのですか?」
「ああ、ありますよ」
読み解いた限りでは
「性格が激変するそうです。闘争本能が収まりがつかなるそうで。結果早死にするみたいです。本末転倒も良いところですね」
馬車から出ると、ミガサとエノームさんは、一生懸命練習をしていた。
魔力供給。
エノームさんの狙いは、魔法量の底上げなのだが
「どう?」
「実感が湧かないです」
うまくいかない。
魔力供給は、失った魔法量を、流し込むことなのだが。
「ブリザードの魔法構成も工夫したほうがいいかもしれません。要は、構成完了から一気に魔法量が吸い取られるのが問題なわけで。構成している先から消費するようにすればいいとかですかね?」
「そんなの可能なの?」
「今からじゃ無理です」
研究しないと無理です。
「でも合成魔術って凄いよね。ミラーとミガサだから使えるんだろうけど」
「いえ?合成魔術自体はそんな難しくないですよ?」
『え?』
「ジェラハグドーム様は、魔法の革命をされたのです。禁忌とされた合成魔術。禁忌にする理由は正当でした。合成魔術は失敗しやすい。そして、その跳ね返りが恐ろしい。通常の魔法失敗は、不発なだけですが、合成魔術の失敗は、魔力の暴走に繋がる」
「恐ろしいわね」
「それを革命したのがシェラハグドーム様。そもそも暴走する要素を取り除いた。合成魔術には、専用の構成が必要だったのです。個別の魔法構成を重ねるから暴走していた。初めから、合成用に構成を作ればいい」
「それって、私とエノームさんも使えるの?」
「そうですね、氷と氷の合成魔法構成は比較的楽です。魔力供給では試してませんが、やってみますか?」
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皇帝は困っていた。
「ブラックドラゴンが領土を荒らし回っているだと?」
「はい。今まではこんな事は無かったのですが」
「メイルキャラバンはなにをしている?」
「出撃しているようです」
「ふむ。彼女らに任せろ」
メイル達はイフリート討伐に向かっているのだが、皇帝達は知らない。
「しかし、軍隊の派遣などは?」
「無駄だ。死人が出るだけだ」
「分かりました。それと、これは噂話なのですが」
「噂?なにがだ?」
皇帝に噂話など聞かせることなど殆ど無いのだが。
「ミラーという、メイルキャラバンの魔術師が、禁断の魔術に手を出したと」
「ふむ。その禁断の魔術のおかげでドラゴンを殺せているのか?今度宮廷魔術師達も参考に……」
「不老の魔術です」
皇帝の顔が凍る。
「ミラーは、不老の魔術を、復活させるそうです」
皇帝は呆然としていた。




