表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

第22眠:お持ち帰りされそうになった弟子

「おや?」

いつもの修行が終わって、寝に帰る途中、ミガサを見かける。


何故か服が変わっている。

(わざわざ着替えたの?)


なんだろう?と思って見ていると

「あ!お待たせしてしまいましたか?」

「いや、全然。さっき来たところだよ」


「デートかよ」

おのれ!弟子め!モテやがって!

そらスタイルいいもんね!羨ましい!


でも、ふと思うが

(そーいえば、私もモテてはいるんだな。うん)


そう。男性からの告白の数は多いのだ。

問題は

「喋ったこともない男に告白されても、困るだけです!」


そう。

それも見え見えなのだ。

金目当てなのが。


私は気がついたら、有名になっていた。

コイツならドラゴンを狩れると


引き抜けば金儲けが出来ると。

それで、男性的魅力で、引き抜こうとする男が相継いだのだ。


ミガサは、学園主席とはいえ、まだ弟子の立場だ。そういうのではないだろう。

純粋に気があっているだけだ。


「あーあ……私も、まともに恋したい……」

そこで、唐突に気付いた。

男性の顔。あれは


「前、ナンパしてきた人じゃない」



二人が入ったお店に、隠れて入店。そして店主に金貨を何十枚と押し付けて

「隠れさせてくれ」

とお願いし、今にいたる。


ここは料理のカウンターの裏。


ミガサ達の声はよく聞こえる。


ミガサは騙されているのか?と心配して来てみたのだが

(女性に対して積極的な男性なだけね、これ)

安心した。


私にもナンパしたが、女性と見れば、ああいう言葉をかけてくる人なのだろう。

ちゃんと自分が女性関係に緩いということも、話の中でしていた。


それを知って付き合うなら、全然自由だ。

私が口を挟む事じゃない。


(この人話面白いなぁ)

ミガサも楽しそうにしている。


段々とミガサも酔っ払ってきた。

すると

「そもそも!師匠は!私に厳しすぎるんです!」

ミガサが叫ぶ


「まあまあ、師匠と弟子ってそんなもんだよ。俺の師匠もおっかなかったなぁ」

そうそう。話が分かる人ですね。


「でもぉ!でもぉ!太れって酷くないですか!わたしが!どんな思いで体格を維持していたんだと思ってるんですか!」

知らんがな


「太れって?なんで?」

「stとmeがどうたらこうたらって!」

おい、それは秘密の話だ。


「st?俺には分からない難しい話かな?」

「要は太れば魔法量が上がるんです!」

「そうなの?」

そうなんです。


「普通はそんなに魔法量あげなくて、良いのに、ししょーは、滅茶苦茶な魔法使わせるから……」


「でも、凄いね。ちゃんとそれに応えてるんだ」

「ううう……恥ずかしいから見ないでください……」


「これはこれで可愛いよ」

「……ほ、本当に?」


む、会話の成り行きが怪しい。

このままではお持ち帰りコースではないか。

ニルスさんに続いて、ミガサまで結婚!妊娠!


でも、なにか違和感が取れない。

(なんだろう?なんというか、会話が、気になる)

男性の物分かりが良すぎる。

ミガサの愚痴に、ちゃんと相槌あいづちをうてている。


(適当に返事しているわけじゃない。あの、ミガサの専門的な用語が混じる愚痴を、的確に判断して返してる)


何者?


「ガルさーん。本当に、こんなわたしでも、良いんですか~」

ガル、ガル。

あの時、女性がいた。


ガル。

なにか、引っかかる。


そして

(が、ガル!ガル&ベリーのガル!!!???)


知っている。ガル&ベリー。


二人組の殺し屋。


ある国で、有名な貴族が殺された。

その犯人がガル&ベリー。


その貴族の娘が、私を学園で苛めたやつなのです。


それで知っていた。顔は知らなかったが、聞き及んでいた、二人組の容姿には合う。


(殺し屋が、ミガサになんの用?)

単なるナンパならいい。

しかし、ミガサを殺す意味も分からない。


メイルキャラバンに対する攻撃というならば、まず私を狙うべきだ。


現に一度接触している。


(どうする?このままだと、ミガサとガルはここを離れ、二人きりになる。やるなら今)

そう。決意して、ちょいちょいと店主を呼ぶ。


(どうしました?)

小声

(一回ここからでて、入口から入り直します)

(分かりました)


店主の誘導に従い、一度裏口から出て、正面口から入り直す。


そして

「あら~。ミガサ、彼氏ですか~?」

「し、ししょー!?なんでここに!?というか、まだ起きてるの!?」

びっくりされる。

「あの後そのまま寝てしまいまして」

「ししょー」

呆れた顔をする。


「初めまして、ではないですね。一度助けて頂いたことがあります。ミラーです」


「ええ。ガルです。憶えていて頂き光栄ですな」


「ミガサの彼氏ですか?」

「そこまでではありませんが、良き飲み友達でして」

うんうんと頷くミガサ。


嘘付け、お前もたれかかっていたろ。


「ガルさん、内緒話があるのですが~」

「?なんですか?」

「なんですか!ししょー!内緒って!」


「はい。耳を塞いで、端に行ってください。師匠命令です」

「ししょー!?」


そして、ガルの耳元でささや

『ガル&ベリーがなんの用だ』


少し驚いた顔をすると

『良い女を見れば声をかける習性でね』

『本音を喋れ』

『人殺しなど金にならん。時代遅れだ』

『分かった。なにを求めている?引き抜きなら応じない』

『ドラゴン殺しなど、もはやどうでもいい。不老だ』

驚く。そこまで知られているの?


『……暗殺者は恐ろしいのね』

『暗殺成功の秘訣の九割は情報収集だからな』

なるほど。ならば


『私にとっても、メイルにとっても、不老の魔術に価値など見出さない』

『なんだと?』


『だから、不老の魔術の復活は協力してもいい。ただし、ミガサを傷つけるな。私から離れるような真似はするな』


ミガサには、イフリート、ブラックドラゴン、ゴールドドラゴン討伐まではいてもらう必要がある。


『交渉成立だ』


ガルは立ち上がり、端っこに座って耳を塞いでいたミガサに話しかける。


「話は終わった」

「な、なんだったんですか!?」

「それを本人の前で喋ったら、内緒話にならないじゃないか」


「ううう……」

「全然変な話じゃない。当たり前の話さ。良い師匠を持ったよ。俺も師匠に似たことは言われたからさ」


「似たこと?」

「そうそう、修行中だからね」

なるほど。ガルは私から「修行の最中だから気を使ってくれと頼まれた」みたいな話にしようとしているのか。

頭の回転が早いなぁ。


「ガルが、そう言うなら……」

「まあ、今日はここまでにしよう。繰り返しになるけど、その服とても似合ってる。自分を卑下ひげしないで。外観だけが全てじゃない」


そう言って出て行った。


「ししょー!?なにを言ったんですか!?」

「孕ませるな」

「……は?」


私も乗ることにした。


「弟子を孕まされると色々困る。お付き合いは計画的にと」


「な、そ、そんな!すぐそんな関係になるわけ」

「ニルスさんは~、旦那の元カノが亡くなった翌日にセッ○スしてます」


吹き出すミガサ。


「計算すると、その日か翌日ぐらいには、もう妊娠してますね~」

「に、ニルスさんは、だって、元々は彼女だったんじゃ?」

「いえ?片思いの関係ですよ。だから、旦那の元カノがアプローチしたらあっさり転んだんです」


「ニルスさん、すごくね?」


「ああいうのを見てるので心配になったのです。ミガサ、貴女には恋愛の自由はありますが、弟子の間、子作りは自重してください」


「そ、それは。まあ。分かりますよ。妊娠したら討伐とか行けませんからね」


「恋愛までは止めません」

「そ、そうですか!」

嬉しそうなミガサ。


とは言え、これでミガサは弱みになった。

私も色々考えなきゃなぁ。


でもどちらにせよ、不老の魔術なんて、私もメイルも興味はない。関わらせる気もなかった。

ガル&ベリーのような連中と協力したほうがいい。


色々考えていたや眠くなってきた。


「今日は夜更かししました。お休みなさい」

「は?ししょー!?ここ、お店!!!おきてくださーい!」

ミガサが騒ぐが、わたしはもう限界だった。

=====================



ガルが部屋に帰ると、全裸のジャブローと、半裸のベリーがいた。


ガルは動じることなく

「よお、ジャブロー、久しぶり」

「ああ、元気そうだな」


二人は親しげに話すが、隙は全く無かった。


「部屋に入ろうとしたら、全裸でないと入れないとベリーに言われてな」

楽しそうに話すジャブロー。


「当たり前でしょ。あんたみたいな、暗器のプロ、服着て対応出来るか」


ベリーの格好も、必要最低限の布地のみ。最も動きを阻害しないものだった。


「ベリー。ミラーと直接話せた。やはりミガサは張られてたな」

「そう、それで?」


「例の件、協力してもいいそうだ」

「本当かい!?凄いじゃないか!?」

「雇い主も、ミラーも、例のものは興味ないとのことだ」


「条件は!?」

「ミガサを引きがさないことだ」

「随分甘い条件だね」


「予想だが、奴らの討伐にはミガサの魔術が必須なんだ。それを恐れている」

「じゃあ、今後の交渉はしやすいと」


「ああ。あの分じゃ妊娠でも困るのだろう。ミガサと性交渉するだけで揺れるさ」


「流石はガルだ!」ベリーが抱き付く。


「例の件、例の件、ってなんだ」

「まあ、私達で話もまとまったからいいよ。不老の魔術だ。ミラーはイフリート討伐を目指す中で、その魔術の復活が可能だと気付いた」


「不老だと!!!???」

「ああ、不老だ。これを手に入れれば、黙っても金は転がり込んでくる。それこそ、国が買えるぐらいね」


「スケールがデカいな、お前ら」

ジャブローは感心したように言う。


「もう小銭稼ぎはヤメだよジャブロー。私達は、実力に相応しい金を掴もう。メイルは自力で1000万金を掴んだ。私達ならば、もっと掴める」


「そうだな。そのためにも協力しよう。ガル、実はお前の力を借りたい奴がいる」 


「俺の力?」

「そうだ。お前は女の心を支配するテクニックの持ち主を何人も知っている筈だ。メイルキャラバンのネクリは今後邪魔になる。今のうちに言いなりにしておきたい」


「分かった。紹介するよ」

「頼んだぞ。しかし、不老か。いいな。俺達はきっと、時代の変わり目にいるんだ。きっと楽しいことがいっぱい起こるぞ」 

ジャブローは、目を輝かせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ん?……うん。まぁ見た目だけでも引く手あまたではあるんだが……こいつら不死と混同しとらんかな?というか私が貴族なら混同しそう。 妙なところで名前が繋がったw 身軽でも人生楽しめる人はいるけ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ