第21眠:合成魔術ブリザード完成
stの筋肉とme魔法効率の関係は仮説にすぎなかった。
ニールにも調べてもらったが、そのあたりは諸論あるらしい。
しかし、結果はすぐに出た。
『ブリザード!!!!』
合成魔術ブリザード。
氷と風の全力魔術を合成した吹雪を起こす魔法。
これならば、大妖精イフリートを倒せる。
ミガサは気絶しなかった。
へたり込んではいたが。
これが完成系のブリザードだ。
そして
「師匠、やせていいですか?」
「なんで、こんなに分かりすい結果が出たのに、目を背けるの?」
「だって!!!服が着れなくなってきたんですよ!!!わかりますか!?今までの服が!入らなくなってきたんです!!!一気に太りすぎですよ!!!!!」
「成長期でしょ」
「私は師匠より年上ですよ!!!!」
ああ言えばこう言う。
「弟子、私あなたの人体実験、もとい、研究成果を取りまとめて論文で発表するので痩せないように」
「ししょーーーー!!!」
「では~ねむくなったので、かえりま~す」
「急にいつものノリに戻らないでくださいよー!はなしをきいてー!!!」
私は振り向いて言った。
「イフリート討伐と、ブラックドラゴン、ゴールドドラゴンを撃破したら、あなたは弟子卒業。そのころには10万なんてケチくさい金貨どころじゃない金をつかんでいるわ」
「……お金」
「ましてや、合成魔術の使い手、大妖精撃破。あなたの価値はいかほどか?あなたがいくら欲しいか、しらないけれど」
ミガサの顔を見て
「1000万金はつかめるわよ。このままいけばね」
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魔法ギルドとグリモアの学園は、話し合いをしていた。
「ミラーさんの所属は、基本魔法ギルド。ただし、グリモアの学園が講師等に招くことは一切妨害しない」
「まあ、こんなものでしょうな」
二つの勢力は、ミラーの奪い合いを避けたのだ。
協力をしようということで、その内容を詰めていた。
ミラー本人は預かり知らぬところでなのだが。
そんな中
「大変です!ミラーさんの担当ギルドから連絡があり!ミラーさんが合成魔術に手を染めていると!!!」
『なんだと!!!???』学園、ギルド、全員が驚愕していた。
合成魔術は禁忌。
過去に手を染めた人間はいたが、死者が多く禁止としていたのだ。
そもそも上手く使える人間など存在しなかったのだが。
「それで、あの、ミラーさんと、ミガサ氏の会話を聞くに『ジェラハグドーム』の魔術書を解読したそうです」
その人物名に、会議室はパニックになった。
「ジェラハグドームだと!?読めたのか?あれを?」
「そもそも、本当に魔術書だったのか、あれ……」
ジェラハグドーム。80年間に存在した、奇人変人。
その魔術は常識を破壊したが、誰にもその魔術構成が分からなかった。
晩年、一冊の本を書き上げたが、さっぱり意味がわからない代物だったのだ。
冗談か、嫌がらせで、それっぽく書いただけ。
そんな噂もあった。
その魔術書を解読した。その結果合成魔術が発動した。
「ブリザードと呼んでいるようです。その魔術は森を氷漬けにします。イフリート対策だと思うのですが」
「そのブリザードは、ちゃんと発動しているのか?」
「はい。氷漬けは何回か確認されています」
「……天才だ。まさしく天才」
誰かがつぶやく。
「ジェラハグドームも天才でしたが、あまりにも偏屈でした」
「ミラーさんはそうならないよう、ちゃんと話をしましょう」
二つの勢力はうなづき合っていた。
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「今夜落とす」ガルが言った。
「頼んだよ、ガル」ベリーがほほ笑む。
「ベリーはジャブローに会うんだろ?大丈夫か?一人で?」
「内容はなんとなくわかるよ」
「?なんだ?」
「あいつ、メイルに雇われたんだ。それも一つの道さ。その立場でもバカバカしいほどのマネーをつかめる」
「なるほどなぁ」
「私たちはミガサだ。今日の会話聞いてたまげたよ。ミガサは1000万金貨つかめるそうだ」
「すげえな、あいつら」
「空想話じゃない。それぐらい稼げる。いいかい、ガル、これは内緒話だ。耳貸しな。
ガルは大人しく耳を寄せると
「ミラーは、不老の魔術を発掘した。使える目途がたちそうだ」
ガルは、呆然とした目でベリーを見る。
「100万金貨目指してたけど取りやめだ。国家を買い取るよ。国家を金貨で埋め尽くす。さあ、頼んだよガル。ミガサの籠絡にはあんたが頼りだ」
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その城は血まみれだった。
ジャブローにメイル暗殺を依頼した女性も、その上司の貴族も、首を斬られ絶命していた。
「これで10万金と」
ジャブローは含み笑いをしていた。
「護衛など退屈だが、まあ金が多ければ許せるものだな。つまるところは、対価が釣り合わなかっただけだ」
死体を見下し。
「明日は誰が死ぬか分らぬこの世界だが、メイルは多分生き残るだろうな。ああいうタイプはなにしても死なない。神に愛された娘だ」
ジャブローは天を仰ぎ
「偉大なる神よ、罪深き私をお赦しください」
人殺しをした暗殺者は、ひたすらに祈っていた。




