第13眠:結婚式
ニルスの結婚式。
メイルのキャラバンは全員呼ばれていた。
様々な国に呼び出され、転移で飛び回ったメイルとオルグナも、これには出席していた。
こういうものを小馬鹿にしているニールもだ。
他にも魔法ギルド関係者、冒険者など、呼ばれた人数は300人を超えた。
そして、その会場。大広間と呼ばれる巨大な広場は、花と宝石、食べ物、酒、飲み物、それらがひしめき合っていた。
もうこれだけで、驚く規模だが、皆が驚いたのは、そのイベントの演者。
識都でも、有名なアーティストが呼ばれていたのだ。
彼らが一堂に集まるなど前代未聞であった。
それだけの金を使ったのだ。
当初は金貨1000枚の予定だったが、どんどん予算が膨らんで、最終的には金貨3000枚にまでなった。
これに対して「一生に一度なのですから」とメイルが支援を申し出て、全額メイルが支払ったのだ。
その結果が、これ。
また、街のあちこちでは、ニルスの名前で、お菓子や酒、食べ物が配られていた。
入れない人も祝えるようにと。
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「す、凄いですね!」
ミガサ。
結婚式なので、ドレスを買って着せたのだが、似合っていた。
「正直、ビックリします~」
これはなんなのだ。
王侯貴族の結婚式だってこんなに豪華じゃない。
「お酒に!お菓子に!果実まで!」
高級な食材、お酒が食べ放題、飲み放題。
なんか凄いとビックリしていると
「あ!ニルス!」
「ニルスーー!!!」
奥から、笑顔のニルスが、旦那さんと歩いてきた。
そして
『それでは皆様!大変にお待たせ致しました!これより、カルテナ様とニルス様の結婚式をとりおこないます!』
音声を大きく伝える魔法。
こんなものまで使うんだ。
司会の人の軽快な紹介の後に、二人の口付け
『おめでとー!!!』
その後は皆で楽しくガヤガヤ、なのだが。
「失礼、ドラゴンスレイヤーのミラーさんですよね?」
物凄い美男子が話しかけてくる。
「はい。どなたでしょ~か~?」
「失礼、私はベイファクト公国という国の貴族、アルディルと申します」
「それはそれは~。貴族様ですか」
ニルスさんとどんな関係なんだろう?
「ニルスさんは、我が領土出身なのですよ」
なるほど
「一度ご挨拶したかったのです。是非我が国にもおいでくださいと」
「分かりました~」
ベイファクト公国かぁ。どこだっけ?
そうこうしているうちに、ニルスさんが近くに来た。
「ニルス!おめでと~!」
「ミラー!ありがとうね!」
凄い嬉しそうなミラー。
旦那さんは、男たちに囲まれながら
「よくやった!」と騒がれていた。
「まだまだこの後いっぱいイベントあるからね。ああ、ミラーは眠くなったら、あそこにベッド用意してるから」
「さすがです~」
助かります。
その後は歩く度に挨拶された。
ドラゴンスレイヤー、ミラー。
私はどれだけ変な扱いされているのだろう。
「師匠、凄い結婚式ですね。わたしこんなの初めて見ました」ミガサ
「私もです~」
音楽から、大道芸、演劇
全く飽きない。
でも
「流石に眠くなりました。私は寝ます」
「……どこにですか?」
「ベッドが用意されていますので」
「……すごい待遇」
「お休みなさ~い」
寝よう。寝る。
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「……ドラゴンスレイヤーとはこれほどか」
苦虫を噛み潰したような顔をする男。
「金貨3000枚ぐらいですかね、大体」
その男のお付きのような女性が答える。
「結婚式にこれだけ使う。いくら稼いだんだ。ニルスは」
「フレイムドラゴン討伐の財宝の噂は本物でしょうね」
「金貨一千万枚か」
「まだブラックドラゴン、ゴールドドラゴンがいますねー」
「ニルスは結婚と出産でいなくなる。となればミラーだけだ。あいつを消せばメイルキャラバンは崩壊する」
「そうですね。しかしメイルは用心深いガキです。ここまで一流の暗殺者を雇っても殺せないとは」
「ガル&ベリーに頼んだらどうだ?」
「断られました」
「なんでまた」
「隙がないと」
「厄介な連中だ。本当に」
その男は冷静に、だが憎々しげにメイルを見ていた。
「メイルキャラバンは滅ぼす。必ずな」
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「それ、絶対赤ちゃん出来てるから。だって月のもの来てないんでしょ?」
「えへへ」
「えへへ。じゃない。もう、凄いなぁニルスは」
ニルス、ネクリ、エノーム、メイルは、ニルスと談笑していた。
「ニルスさん、しばらく討伐も出来そうにありません。出産に集中されてください」
「そんな、今から出産の準備なんて」
「いやぁ、流産って多いからね。うちら魔法使いは特にだよ。魔法構成とかでお腹の子に負担をかけるって話も聞くし。仕事は緩やかにしたほうがいいよ」
「うん、そうしようかな」
にこにこしているニルス。
「あれ?メイル。仕事しばらく無いの?」
「はい。後でご連絡しますが、しばらくは国を回りますので」
「そっかー」
「なので、待機料払いますよという話です」
メイルは魔法使いたちに、余分にお金はみているから、いつでも声をかけてくれと言っていたのだ。
「まあ、それは今後ということで。なにしよっかなー」
ネクリが腕を伸ばす。
「私は、いつものように素材凍結のバイトしてるわ。動かないと落ち着かないからね」
エノーム。
「本当は旅に出たいです。国回りなんて面倒なだけですね」
憂鬱気にメイルは言った。




