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第11眠:フレイムドラゴン討伐

ミガサの訓練をしているうちに、メイルは帰って来た。

そして、ブレス防護の魔法に目処がたってきたと報告すると

「ニール、安全に試せるドラゴンはいますか?ドラゴンにこだわりませんが」


「まず、ブレス攻撃をするものは、ドラゴンか妖精ぐらいだ。どちらも強力。特に妖精はマズい。動力攻撃が効かないからな」

ニールが答える。


「ではドラゴン」

「メイル、安全なブレス攻撃などあり得ない。食らえば死ぬ。それだけだ」

「……賭ですね」

「俺たちの動力攻撃も賭けだった。知識の積み上げを限界までやっても、最後の決断は賭けだ。その上で、ブレスの時間が短いドラゴンならばいる」


「短ければ、ミガサの魔術は確実にもつ」

「ああ。ただな、メイル。さすがの俺も怯える。お前が帰る前に様々検討を行ったが、該当するドラゴンはコイツなんだよ」


持参してきた本を皆に見せるニール。

それは

「ふ、フレイム、ドラゴン」


「数多くの財宝を抱えているという噂のドラゴンだ。討伐隊は数え切れないほど出された。今回、俺達の真似をして、真っ先に突撃されたのが、このフレイムドラゴンだ。だか、全滅した」


「ええ。私達の間でも、ゴールドドラゴン、ブラックドラゴン、フレイムドラゴンは絶対に無理だと」


「ブレス攻撃が無理だからな。ところが、ミガサの風の魔術は、風の壁を作り出し熱も含め防護する。連続で作り出すから、耐久性の問題も気にしなくていい。範囲も広い」


熱の防護も試してみたのだ。

役所に許可をとって、森の一部を焼いたのだが、熱は風の壁にはばまれた。


「……このブレス攻撃の防護は今後の戦略に大きな変化をもたらします。私としては試したい」

メイルはこちらを見て


「どう思われますか?みなさん?」

「私は構いませんよ~」

ミガサの話だし

「私も賛成だけど、ニルスを……」ネクリさん

「そうね。素材凍結担当でもなんでもいいわ。賭けに近い仕事なら、相性がよくて、気心のしれたニルスを呼び戻して」エノームさん


「そうしましょう。最低でもフレイムドラゴン討伐には同行してもらいます」


ホッとした顔をするエノームさんと、ネクリさん。


そこで会議は終わった。



メイルはそのままオルグナの元に行く。

私はメイルに用事があったので、そのまま着いていったら


「メイル、遠距離会話で交渉したが、教会の仕事だろう、お前らに払う義理はないとの事だ」

オルグナ。

メイルは背中しか見えないのだが


『ガスッ!!!ドンッ!』

メイルが机を蹴り倒した。なにごと?


「あのバカ共が!!!!教会との連携は報告済みでしょうが!!!!!地獄に落ちろ!!!神に裁かれろ!!!」

荒れるメイル。

うわぁ、なんか知らなくていいメイルを知ってしまった気分。


素材凍結時も口調は荒れるけど、それは精々丁寧語じゃ無くなる程度。

こんなに暴れるメイルは初めて見た。


「俺はすぐにでも交渉しにいく」

「オルグナ、今回は素材売却もありません。お任せしていいですか?」

「それは構わんが、すぐ狩りに行くのか?まだ貯金はかなりある。焦らずに無理に稼ぐ必要はないぞ?」


「フレイムドラゴン討伐の目処がつきました」

オルグナは目を見開く。


「な、なんだと」

「ミラーさんの紹介で加入したミガサさんはブレス防護ができる」


「フレイムドラゴン討伐!!!ならば金貨5000枚などどうでもいい!少なく見積もっても、あのドラゴンには30000枚の懸賞金があるのだぞ!?」


「オルグナ、懸賞金の話はトラブルの最中ですから乗り気ではありません。それよりも、フレイムドラゴンが抱えている財宝です。あれは懸賞金関係なく討伐すれば、我々の物ですか?」


「メイル、そこは難しいな。確実に返さなければならない物も出てくる。だから、事前の申請は避けられない。だが、そうだな。そこは上手く交渉してみよう」


「交渉が終わり次第すぐに行きます」

「分かった。距離的にはそんなに離れていないからな。フレイムドラゴンは」


「ええ。ブラックドラゴンや、ゴールドドラゴンは離れ過ぎていて、往復で一年ぐらいかかりそうですが」


そこで、ようやく気付かれる。


「ミラーさん」

「あのね~メイル。申し訳ないけれど、ミガサの分の荷台も用意してもらえな~い?」

今回のミガサはかなりの魔法を使う。


荷台はあったほうがいい。

多分帰りは歩けない。


「もちろんです。ミガサさんには報酬もお支払いしますから」

ふと気になる。

「成功したらおいくらぐらい?」

「今回はフレイムドラゴンの財宝が読めません。それを抜きでしたら、そうですね、400枚は……」


「ネクリさんとエノームさんよりも下にしてください」

「……それで納得されますか?」

「納得させます」


「分かりました。ではそのように」

あの二人はそういうのこだわるのだ。


ミガサは修行中。お金が出るだけいいのです。



準備はあっという間に進んだ。

ミガサも大分魔術構成が巧くなった。


そして

「ニルスさん、お帰りなさ~い」

「にゃははは」

ニルスさんが照れながら戻ってきた。


「めっちゃ幸せそうね」

エノームさん

「まあね~」

「オーガバスターになったのでしょう?」

「うん!オーガーは動力攻撃楽だからね」


ニルスさん達のパーティーは、すぐオーガバスターとなった。

その後も依頼は成功したらしいのだが


「そ、それで、みんなに報告があって」

顔真っ赤。まさか


「け、結婚、しようかな、って」

「本当に!」

「ニルス!凄い!」

「カルテナさんと?」


「そう。パーティーとも相談してね。それが良いんじゃないかって」

「じゃあ、うち抜けるの?」


「メイルとも相談したの。そうしたら『呼んだら来てくれればそれで良い』って。一応所属は変わらないのよ。ただ、結婚すると、どうしてもね」


「うわぁ、ママだ。ママになる気だ、この人」

「えへへ」

「これはもう、戻ってヤリマクリですな、ニルスさん」

みんなでワキャワキャ話す。

楽しいな。こういうの。


そんな中、ミガサは一生懸命、風の魔術を練習していた。



フレイムドラゴン討伐。

ドラゴンゾンビ討伐の揉め事は放置して、こっちに全力となった。


過去最大の規模のキャラバン。

荷物運びの人たちが倍以上になっていた。


「財宝持ち帰りがあるからな」

成る程ねぇ。


とは言えやることは変わらない。


私は荷台のベッドでいつものように寝ようとするが、ミガサは青い顔をして震えていた。


「ミガサ、緊張しているの?」

「はい。私の魔術が失敗したら、皆死にます。そう思うと」

成る程ね


「絶対に成功するわ」

目を見開くミガサ

「師匠の私が言うのよ。自分ではなく、師匠の私を信じなさい」

「は!はい!」

顔が明るくなる。

「寝ましょう。いい。体力を温存するのも仕事。私達はドラゴンを殺すのが仕事。他はどうでもいいのよ」

「分かりました。寝ます」


ミガサは安心したように横になった。



起こされた。

ここはフレイムドラゴンの洞窟の入口。


「ミガサさん、ニルスさん、ネクリさん、そしてミラーさん。行きますよ。」

特攻するのは、メイル含めて5人。


敗れればそのままみんな帰る手筈だ。


「特攻!!!」

5人は固まって移動。

フレイムドラゴンは目視で確認できた。

暑い。

間違いない。巨大なドラゴン。


私は速攻で凍結の魔術構成。ニルスさんとネクリさんは、私とミガサに魔力を送り込んでくれる。


「HYUUUUUGYYYYYYYYY!!!!!!」

フレイムドラゴンの咆哮ほうこう

こちらを認識して、ブレスの準備をする。


「ミガサさん!」

メイルの指令。

ミガサは既に魔法構成は終わっていた。


『風の壁よ!!!』

風のバリア


そして、周りを粉砕する、焼け付くブレスが洞窟内を蹂躙じゅうりんするが


「生きてる!!!」

見事に防いだ。


これを見たフレイムドラゴンはこちらに特攻してくる。速い!!!


風の壁はドラゴンの直接攻撃を防げない。

まだ私の魔術はフレイムドラゴンを殺しきれない。

間に合うか?


そのドラゴンの鍵爪が、私達に振り下ろされそうになる。思わず目をつむる。

間に合わない。

死ぬ?

しかし


『ザシュッ!!!!』

有り得ない光景。

風の壁は、ドラゴンの直接攻撃をも防いだ。


そして

『HYYYYYGYYYYYYYYYYYYY!!!!!』

フレイムドラゴンは、絶命した。



ミガサは気絶していた。

限界までの魔術。

あれはニルスさんの魔力を送り込んでもらえたからあんな長時間できたのだろう。


しかしだ

「無敵じゃない。風の壁」

ネクリさんが呆れたように言う。

「消耗が激しいのは困りますが~」


今回は眠いのを我慢して、素材凍結も手伝っていた。

ネクリさんとニルスさんの魔力が空に近くなっていたからだ。


エノームさん1人ではいくらなんでも無理。


「ミラー、助かるわ」

「いえいえ~」


一方で、財宝を確認していたメイルは、青ざめた顔をしていた。



街に戻る。

魔法使い達は全員帰り道寝ていた。

魔力を使い切ったからだ。


財宝はどうだったんだろう?

メイルが青い顔してたから、そうでもなかったのかな?キンキラ金がいっぱいあったけど。


メイルはすぐオルグナを呼び出し、財宝を見せた。

するとオルグナも青ざめる。

なに?


ニールも何故かいた。ここは拠点の識都じゃない。

識都以外から出るってあんまりないのに。

あと知らないおじさんもいて、その財宝を確認していた。



それから一週間。

いつも翌日には行われる報酬配分がまだない。


オルグナとメイルは青い顔をして飛び回っていた。


「不払い?」

「それは無いと思いますが~?」

少なくとも素材分の報酬はあるはずだ。


すると

「ネクリさん。ミラーさん。大変にお待たせしました。報酬をお支払いします」



そこにはいつものメンバーが揃っていた。

なのだが、ニールですら顔を青ざめさせていた。

その報酬。


「結論だけ言います。今回のフレイムドラゴンの財宝は、金貨の価値でなおせば、1千万枚分です」

きんか、いっせんまんまい。なにそれ?


「フレイムドラゴンが生息する領主に、いくらか返還しました。また、売りようがない、国家的な財宝は、その領主から各国に戻します。それでもなお、この財宝です」


メイルの後ろには、山のような金貨、財宝。


「没収のリスクもあります。配れるうちに配りたいのです。

そこで、みなさんに一堂に集まって頂いたのは、これだけの金だと、不公平感が生まれない訳がないからです。私は全部見せました。あとは率直に話し合いたい」


すると真っ先にエノームさんが手をあげる

「私は金貨3000枚。それ以上もらうと頭が狂う」


ネクリさんも

「エノームさんと同じく!3000枚でも貰いすぎだけど!それ以上貰ったら仕事が出来なくなる!」


「私もそうしてください。金貨3000枚。カルテナとの結婚資金と子供育てるのにそれ以上いらない」

ニルスさん。


魔法使い3人はあっさり決めた。


そして

「強欲でもうじわげねえ。1万枚もらえねえが。もぢろん、おれだぢ全員でだが」

グリー兄弟とその仲間達。

素材解体担当だ。


10人以上いるのだから、全然強欲じゃないのだが


言ってるそばからドンドン運ばれてくる。


「俺は1万枚だ。それだけの仕事はしたぞ」

ニールが胸を張る。


どんどんみんなが決まるなら

「後はミラーさんとミガサさんだけです」

その積み重ねられた金貨の山。

譫言うわごとのようにつぶやくミガサ


「……み、みんなおかしい、こんなお金、あるのに、わたしは、欲しい。十万枚は」


なるほど

「メイル、私とミガサは二人で三十万枚」

メイルは顔色ひとつ変えずに三十万枚の金貨を仕分けた。

金貨一枚10万円程度の価値なので、今回のフレイムドラゴン討伐は一兆円ぐらい。


国家予算を超える金を手に入れてしまい、みんなの顔が青くなっていたのです。


これをそのまま市場に放出すると、貨幣価値が暴落するので、国家とも話し合いをしているうちに一週間たった流れです。


ミガサ加入から、「娼婦が嫌なので~」と歴史が変わっていますが、このフレイムドラゴン討伐で、大きく未来が変わります。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやぁ……月百万で働いててもホクホクだったのに、 突然5000恒河沙円入った! とか言われたら怖いわ。ここで貰えるならいくらでも! って言えるのは、 欲が物凄く強いか 逆に頓着しない あと…
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