第10眠:ブレス防護という能力
パープルドラゴン討伐の出発直前、メイルは、ニールの所に向かっていた。
私たちも一緒。
メイルに、ミガサは風魔法使いで、範囲攻撃が得意。
氷魔法による動力攻撃との相性は最悪だと伝えたら、立ち上がり
「ニールと話をしましょう。使えるかもしれません」
となったのだ。
「ニール。ブレス防御の件ですが」
「ああ、どうしたんだ?パープルドラゴンはブレスは無いぞ?」
「優秀な風魔法使いが加入したのです」
「なに!?」
ニールは立ち上がる。
「ニール、以前ブレス攻撃の防護手段で、風魔法による防護という想定があったはずです」
「ああ!あるぞ!文献に残っている!」
「ミラーさんのお話を聞くと、動力攻撃には向いていない代わりに、凄まじい程の風を生み出す。それも範囲はかなり広い」
「検討できる情報だ。その後ろにいるのが風魔法使いか?」
「はい。ミガサと申します」
ミガサは戸惑っている。
ニールは変わり者だからなぁ。
「表に出よう。実地を見せてくれ」
街の外。森の近く。
「ミガサ、とにかく、幅広く魔法を構成して」
「はい!」
ミガサの魔法構成。
相当粗い。こんなに粗くてよく魔法が発動できるなと、感心する。
そして、
『風よ!!!』
短い詠唱。
途端に吹く突風。
「ふむ。範囲は完璧ではないか。パーティー全員分守れる」
「問題は。風でブレスから守れるのですか?」
「そこは調べよう。単なる突風では無理だろうな。なんかしらの秘密があるはずだ」
メイルはミガサに振り向き
「予定通り帯同してください。あなたの才能は、このキャラバンで活かせるかもしれません」
「はい!」
年下のメイルに思いっきり頭を下げるミガサ。
そしてメイルは私に向かい頭を下げ
「ミラーさん。ミガサさんの才能は凄いです。紹介して頂きありがとうございます」
「いえいえ~」
雇い主なのに真面目なメイル。
そして、私達はパープルドラゴン討伐に向かった。
パープルドラゴンは簡単だった。
遠くから動力攻撃。あっさり討伐完了。
私は直後に寝たので、解体の記憶はない。
起きたらミガサが、死にそうな顔で歩いていた。
やっぱり山道は辛いらしい。
他の3魔法使いは荷台なのに、ミガサだけ徒歩。
理由は
「ミガサ、魔力使ってないし」
「歩きに慣れた方がいいわよ」
だそうです。
素材売却などの為、いつものように休みが入るのだが
「ミラーさん。ミガサさん。ニールのところで、ブレス防護の相談をしていてください。私は準備が出来ましたので、ドラゴンゾンビの討伐に行ってきます」
「ドラゴンゾンビには行かなくていいの?」
「はい。神教の皆様だけで行きます。私も立会人程度ですから」
ドラゴンゾンビ。
イエロードラゴン討伐時に、何故か付け加えられた依頼。
動力攻撃が無理なので、先延ばしにしていたのだが、討伐の目処がたったらしい。
私とミガサはニールの元に行った。
「ミガサ、ブレス防護の魔法が分かった。これが読めるか」
分厚い本。これは
「え?古代語ですか?これ?」
戸惑うミガサ。
おい、主席。大丈夫か
「古代魔術語ですよ~。古代語と呼ばれているハレル語とは別物」
「ミラー、お前は読めるのだな」
感心したように言うニール。
「これを読むのですか」
戸惑うミガサに
「文字が読める必要はないです。これは魔法構成が書いてあるだけ。この図があるでしょう?これは構成の形」
「ふむ。話が早くて助かるな。俺は古代魔術語は分かるが、魔法構成が分からんのだ」
「ええっと……これが、こうだから……」
「ニール、これは竜巻を生み出し、そこにブレスを吸収する魔術のようです」
「ああ、素晴らしい。このように展開の早い会話は好みだ。メイルもそうでな。理解力のあるやつとの話は良いものだ」
上機嫌になるニール。
そう言えば、あの二人仲良いな。
「その通りだ。ミラー。これはブレスを吸収する魔術。風魔法使いだと使い手が多いとある」
「正直、精密さが必要です。ミガサには難しいかもしれません」
「そうなのか?」
「はい。まだ該当する魔術ありませんか?」
「待て。では、これはどうだ?使い手は少ないらしいが、ブレス無効の魔術だ。風を多重に生み出し、ブレスを弾き飛ばす」
「多重に生み出すだけならともかく、展開を続けるのは精密な構成が必要です」
「うむ。あとはだな……」
ニールは魔術書を次から次へと引っ張り出す。
このあたりで気付いた。
メイルがニールを頼りにする理由。
なぜメイルはこんなに成功したのかの理由。
「これはどうだ?」
風魔法の魔術。
それを見たときに、痺れた。
「これです」
「出来そうか!?」
「ミガサの為に作られたような魔術です」
「ほ!本当ですか!?」
ミガサも食いつく。
「多段の風魔法は構成が複雑なのに対して、これは風の壁を連続で生み出し続ける魔術。構成は単純。単に連続でやるだけ。ミガサは構成が粗い分早いです。範囲も広い。これならばいけます。試してみますか?」
「うむ。やってみよう」
森。
「上から物を落とし続けるから、防いでくれ」
ニールが言う。
木の上ではネクリさんが構えていた。
そして
「いきますよー!」
構成は単純。詠唱なしで、すぐ風の壁は出来た。
そして、それは連続して生み出される。
石を落としても、木の実を落としても全てはじく。
そして
「これを弾けば、ブレスもいけるよ!」
ネクリさんの氷球。それも
「弾いた!」
「ブレス防護いけるな!これなら!」
しかし
「ミガサ!?」
「……す、凄い、つかれます、これ」
倒れ込んだ。
相当な魔力が必要なようだ。
「ふむ。一撃が限界か」
「一撃でも防げれば凄いけどね」
でもとりあえず
「訓練は後々やりましょう。ミガサは限界なので、解散で~」
私も眠いのです。
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ガル&ベリーは、遺体を片付けていた。
「ジェルニモ弟も強烈だねぇ」
兄を殺したのはガル&ベリー。
それを悟った弟は、復讐の為に暗殺しようとしたが、返り討ちにあった。
「弟は毒だけでなく、暗器も使えたのか」
「なかなか良いコンビだったと思うけど。相手が悪かったわね」
ベリーは返り血を拭き取ると
「んで、予定通りファティマの代わりにニルスが行ったと」
「ああ。依頼人の思惑通りにすすむかね?」
「さあ?私達はその先は知らないよ。うちらはうちらで、ミラーと関係を作ろう。あれはあれ。これはこれ」
「そうだな」
二人は、遺体を処理しその場を離れた。




