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01

「ルカ!お帰りなさい!」


自宅へと戻ってきたルカをリリーは満面の笑顔で出迎えた。


「まあルカ…。少し会わない間にすっかり大人びたわね」

母や姉と抱擁を交わすと、ルカは父親へ向いた。


「ただいま戻りました」

「ああ、無事で何よりだ」

そう言ってルイスは目を細めた。



魔王討伐後、一行は往路が一週間だった行程の、倍以上の時間をかけて王都へと戻ってきた。

途中の街や領地で熱烈な歓迎を受けたのだ。

———魔王との戦いよりも連日の接待の方がキツかったとルカはため息をついた。


魔王により強制的に魔王城へと飛ばされたフランツとリリーは、あの場へはいなかったものとし、先に帝国へと戻っていた。

ルカの帰還に合わせてリリーは侯爵家へと帰ってきたのだ。


久しぶりの家族団欒だった。




「ルカ、戻ったばかりで済まないが……お前達の今後について話さないとならなくてな」

夜、ルイスは二人を書斎へ呼んだ。


「はい」

「シュヴァルツ皇帝陛下から、二人を皇族として正式に迎えると勅命を受けている」


ヴィオレット家再興には、もっと時間を掛ける予定であった。

だが今回、紫の姫の力をローズランドの王子に使った事で———リリーとルカがヴィオレットの血を引いている事が内外に知られるのも時間の問題であると、早める事にしたのだ。


「ヴィオレットを名乗れば帝国の人間となる。エバンズ家に戻る事は二度とないだろうし、この国にも滅多な事では来られなくなる」


「既に覚悟しています」

父親の目を正視して、ルカは答えた。


「そうか」

「ただ…エバンズ侯爵家は今後どうなるのです?」

「それは心配しなくていい。分家の中で後継となりそうな年頃の者が何人かいるから、最適な者を選んで養子を取る」


そうすればエバンズとヴィオレットの血も別れる事になる。

———七十年かかったが、やっとあるべき場所へ戻す事が出来るのだ。



「リリーは今回の祝賀会が終わったら直ぐに帝国へ戻る。ルカも一緒にとの事だ」

「分かりました」


「…まったく、ルカはリリーの事になると物分かりが良すぎるな」

迷いなく返事をする息子に、ルイスは苦笑した。

「せめて成人するまでは手元で育てたかったが…仕方あるまい」

「お父様……」


「———二人の幸せを祈っているよ」

ルイスは両腕で子供達を抱き寄せた。





「ルカが無事に帰ってきて、本当に良かったわ」


バルコニーで並んで夜空を見上げながらリリーは言った。


「もしもの事があったらどうしようって、ずっと不安だったの」


「僕は簡単には死なないよ」

ルカはそう返すとリリーの顔を覗き込んだ。

「リリーを護るのが僕の役目なんだから」


「…ありがとう、ルカ。———あなたが一緒に帝国に行ってくれるから心強いわ」

「不安なの?」

「それは、不安よ。お父様やお母様と会えなくなるし…この先何があるか分からないわ」


ルカを見つめ返して、リリーは笑みを浮かべた。

「でもあなたと、フランツ様がいるから。きっと大丈夫ね」



「大丈夫だよ。約束する」


リリーの手に自身の手を重ねてルカは強く握りしめた。

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