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紫の百合 〜乙女ゲームの世界に転生して、前世で好きだった人と再び出会いました〜  作者: 冬野月子
第一章 赤い記憶

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03

「リリー?大丈夫?僕が分かる?」


ぼんやりとしたように反応のない姉の様子に、ルカは握る手に力を込めた。

「…大丈夫よ…ルカ」

「ルカ様。リリー様はまだ熱があるのですから」

「三日間も寝ていたんだよ」

やんわりと引き離そうとする侍女に逆らうように、熱を帯びた手を自分の頬へと引き寄せる。


「ごめん…僕があんな火事なんか見せたから」

「三日…そんなに?…ごめんね、もう大丈夫だから」

「なんでリリーが謝るの…」


「心配してくれてありがとう」

困ったように眉根を寄せるルカに笑顔を返すと、ルカもようやく安心したようにその口端を緩めた。



「リリー!目を覚ましたのか!」


背の高い男性が駆け込むように部屋に入ってくると、リリーの手を未だ離そうとしないルカの手ごとその大きな手で包み込んだ。

「良かった…このまま目を覚まさなかったらどうしようかと」


「まあ貴方…そんな不吉な事をおっしゃらないで下さいな」

男性の後から入ってきた女性がほう、と息をつく。


「お父様…お母様。ご心配をおかけしました」

「リリー。気分はどう?」

母親は汗で乱れた髪を手で優しく撫でながら娘の顔を覗き込むと目を細める。

「はい…大丈夫です」



やはりここはゲームの世界とは———あのエバンズ家とは違う。


泣きそうに自分を見つめる男性陣と、優しい笑みを浮かべる母親を見渡してリリーは心の中で呟いた。




エバンズ侯爵家はローズランド王国の中でも特に古い歴史を持つ家の一つである。


現当主は若いながらも政務能力に優れ、国王からの信頼も厚い。

夫婦仲も良好で十歳になる双子の子供達も明るく元気に育っている。

愛情に満ちた幸せな家族———それがエバンズ家だった。


けれど小百合のプレイしていたゲームの中のエバンズ家は全く異なる。

夫婦仲は冷え切っており、子供達を顧みる事もない。

そのせいでリリーは我儘放題の高慢な少女に、そしてルカは愛を知らない、心の冷めた少年に成長してしまうのだ。


十五歳になり学園へ入ったルカはヒロインと出会い、注がれる事のなかった愛情を知り、人の心を知り、やがて恋に落ちる。

双子の弟が平民の娘と仲良くなる事を良しとしないリリーはあれこれ邪魔をしようと画策するが、障害があるほどに二人の恋は盛り上がっていく———



我儘なリリーも、心の冷めたルカも現実にはいない。

けれどリリーの前世の記憶の中には別の性格を持った、同じ顔と名前を持つ家族達がいる。


二つのエバンズ家———この差異は何なのだろう?




このモヤモヤした疑問を解決しようと考えた結果。

これはいわゆる「パラレルワールド」なのだ、とリリーは自分の中で結論付けた。


あくまでもあの仲の悪いエバンズ家はゲームの世界の中だけ、現実とは関係ない。

今自分が生きているのはこの世界、前世の事もゲームの事も思い出として心の奥にしまっておこう。


せっかく折り合いを付けた心が、そう時間を経たずにまた乱れる事になるとは。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 全く同じ乙女ゲーと同じ設定じゃないなんてストーリーの幅が広がって面白いですね。
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