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01

細く伸びた月の光が冷たい石室の中に落ちていた。


恐ろしい貌を刻み込んだ、獣に似た姿の石造りの像が並ぶ間を真っ直ぐに伸びている。

その光の差し示す先———古い文字が刻まれた石板の前に一つの影があった。


「…ここか」

影が口を開いた。


大きな槌を石板めがけて振り下ろす。

何度か繰り返すと、やがてヒビが入り、石板が崩れ落ちた。


崩れ落ちた後ろから暗い通路が現れた。



「ククッ」

喉を鳴らす音が石室に反響する。


「見つけたぞ…城への入口———」


唇を醜く歪めると、男は横坑へと足を踏み出した。






「ここが二つめのポイントだ」

地図と、湖畔に立つ目の前の彫像を見比べてロイドは言った。


「次は…右に行くのがいいのか」

「そうだな」

地図を覗き込んでロイドとフレデリックが次のルートを決定すると、ルカが振り返った。


「二人とも疲れてない?少し休憩する?」

「まだ大丈夫よ」

「私も大丈夫です!」

「じゃあ行くか」

リリーとマリアの返事に、一同は再び歩き出した。



校外学習で王国の西にある湖に来ていた。

二泊三日の予定で、二日目の今日は少人数のグループに分かれ、地図を頼りに幾つかのポイントを探しながら湖やその周辺の森を巡るのだ。


「中学校の林間学校を思い出すわ」

「…私そういうの参加できなかったんですよね」

「あ…ごめんなさい」

「いえ、いいんです」

先を行く男性陣とやや距離を置きながら、リリーとマリアは小声で言葉を交わす。


「今はこうやって元気なんですから。———それよりも」

マリアはさらに声を落とした。


「大丈夫ですよね。もう…ゲームとかイベントとか、関係ないですよね」

「…大丈夫よ。…うん、大丈夫」

「フランツ様も……ならないですよね」

「ならないわ」


あのゲームの中では、この校外学習は二年目の隠しルートの中で起きるはずだった。

そしてこのオリエンテーリングの時にマリアは———


「リリー、マリア」

先を行くフレデリック達が振り返った。

「これから森に入るから、離れない方がいい」


「…危ないの?」

「大きな獣はいないけど、はぐれたら大変だから」



木々が生い茂る森の中は、時折鳥の鳴く声が聞こえる他は五人の足音だけが響いていた。


「リリー」

フレデリックが隣へやってきた。

「…何?」

「そういう格好も似合うね」

満面の笑顔でフレデリックは言った。


今日のリリーは、野外活動用にとジャケット姿にキュロットとブーツを合わせ、髪は三つ編みで纏めていた。


「…ありがとう……」

「うん、凄く可愛い」

前を行くルカが眉根を寄せて振り返り、ロイドが声を抑えて笑い出す。


ダンスパーティーでの事があって気まずくなるかと思われたが、フレデリックは変わらず———むしろ以前よりもリリーへの好意を表に出すようになっていた。


強引に迫るような事はないけれど…一度キスをされそうになったせいで、つい身構えてしまう。



「私じゃなくてリリー様が〝ヒロイン〟ですよね」

くすくすと笑いながらマリアがリリーにだけ聞こえる声で呟いた。

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