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虜囚2


男の方への尋問と言うか質問は終わった。

帰らせてくれと、言っていたがまだ真偽の確認も出来ていないのに戻す事は出来ないと伝えると、納得したのか絶望したのかは分からないが、大人しくなった。


失礼な奴だな。人類と違って、妙な嘘なんかはつかねぇよ。

そのうちに帰らせてやる。


次は女の方か。

コスプレのカツラの様な鮮やかな青い髪はよく覚えているが、顔の印象は薄い。

やっぱり目を引く物が近くにあると他の印象が薄れるってのは本当だったな、等と他愛も無い事を考えながら扉を開けさせる。


男の方とは違い、目が覚めているようだ。

魔法使いだと訊いていたので、魔法などで先制して襲い掛かってくるかとも思ったが、怯えたような顔をして、手で体を隠しているだけだった。


そんなに必死になって隠さなくても、そもそも興味ねぇよ。

まぁ、そんな事は相手には分からないので、仕方ないと言えば仕方ないのだが、何となく気に入らないのは確かだ。


リッチキングとヴァンパイアロードもそこまで興味は無いだろう。


『安心していい。今からする質問に俺の満足する答えを返せれば無事に帰らせてやる』

『心配は要らない。聞きたい事があるだけだ。』


何と言えばうまく行くのか……。

男の方が思いの外うまく行った事もあって、完全にノープランで来てしまった。

言葉を選ぶ為に無言になってしまった俺の事を、完全に誤解した配下の二人が激昂する。


俺の両脇に控えていた二人の気配が一気に膨れ上がる。

「失礼であろう……。脆弱な人間種如きが……、貴様も亡者共の仲間入りをさせてやろうか。」

リッチキングがそう言うと、周囲の温度が下がり霜が降りでピキピキと氷の割れる音が聞こえる。


「小娘ぇ!我があるじの御前であるぞ!跪き頭を下げよ!」

ヴァンパイアロードが、そう言いながら闇のオーラみたいな物を発現させ、目が怪しく赤く輝いている。魔眼なのだろうか?俺も欲しいな。


いやいや、そうじゃない。女が息してない。

「止めろ、お前達。俺の邪魔をしたいのか?」


「「いえ、決してそのような事は!」」

そう言って狼狽え始めると、力が抜けた様に女が崩れ落ちる。

荒い息を吐きながらぐったりとしているが、幸いにも気絶はしなかったようだ。と言うか、むしろ気絶すらできなかったと言うのが正しいのかもしれない。


「大丈夫か?すまなかったな。気が短い連中で。」

「そんな!あるじが謝罪する事ではございません!我々が……。」

「何度同じことを言わせればいいんだ?俺がこの女と話しているんだ。」

「も、申し訳ありません……。」


「さて、これでゆっくり話が出来るかな?」

「…………。」

怯えた様な目で俺を見るだけだ。

二人の配下が動きそうな気配があったので、先に手を上げて動きを抑える。

まぁこいつらの動きは基本的に俺の為に、と言う事があるのでそこまで強く怒るつもりはない。


「まぁ、察してるとは思うけど俺はこのダンジョンのあるじだ。はっきりと言えばダンジョンマスターと呼ばれる存在だ。申し訳ないが君の仲間のうち数名は亡くなった。そして君のような立場の者が一名、拘束させてもらっている。」


言葉は発さないが、はっとした表情を見せる。

あれ?おい。まさか。

言葉が話せない訳じゃないよな?参ったな……。

視覚としてはダンジョン内の全てを認識できるが、音声までは分からないんだよ。


何か話していたとは思うんだが、あの男が読唇術の様なもので会話していたのであればコミュニケーションを取る事は不可能だ。

急速に会話をしようと思う気持ちが萎えて行く。


「話せないのならば、もう君に用は無い。用を成さないのであれば、このまま捕らえておく必要も無いしな。好きに処分しろ。」

「「はっ。」」


俺がさっさと背を向けて牢を出ようとすると、後ろから追いかける様にして女が転がり出てきてヴァンパイアロードに頭を抑えつけられて身動きできなくされている。

「ま、待ってください。もっ、申し訳ありません。何が起きたのか分からなくて呆然としていたのです。」

「何だ。喋れるんじゃないか。口がきけないのかと思ってたよ。」


別に何かの駆け引きをしようとか、一切考えていない。

ただ単純に用が無いから処分しようと思っただけだ。捕虜として置いておくと健康を維持させる為に食べ物を用意したりしなければならないし、排泄物等の処理も考えなければいけないからだ。

無事に帰すと、約束した限りは健康な状態で解放したいと思う。

だが、こちらにとって有益な情報が得られないのであれば生かしておくだけ損だ。


「解放してやれ。」

「はい。」

「それじゃ、先程の続きをしようか。さっきも言ったけど、もう一人捕らえてあるから答え合わせみたいなもんだ。分からない事は、分からないと言ってくれて構わない。」


「協力してくれるのであれば、無事に帰す事を約束しよう。それに、謝礼を与えても構わない。どうだろうか?協力してくれるかな?」

「は、はい。どのような事が聞きたいのでしょうか?わ、私は一介の冒険者ですので知ってる事はそんなに多くないのですが……。」


「勿論、そんなことは承知しているよ。俺が聞きたいのは、至極常識的な事が聞きたいだけだ。難しい事を聞くつもりは無い。簡単な事で言えば、どんなものを食べてどんな暮らしをしているか。また、君はマジックキャスターだと聞いた。その為、魔法に関しても少し聞きたいと思う。」

「わ、わかりました。」


「それじゃあ、最初に……………。」







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