出陣
本日二話更新します。
二十時予定です。
そちらも併せてよろしくお願いします。
ダンジョンに対しての直接攻撃が無効だと気付いたのか、程なくして光線だか雷だかの攻撃は止まった様だった。
ダンジョンコアからは、再度対魔法の霧をどうするか尋ねられたが、発生させるのは止めさせた。
外壁自体は無傷なので問題ないが、霧を発生させるにも魔力が必要だからだ。
相手の攻撃であっさりと散らされるのであれば、やるだけ無駄だしな。
今更、塔の存在が明らかになろうが特に問題ない。
キラーアント達による侵略が始まってから、もうそろそろ一か月。
餓死者が出始める頃だろうか?
餓死するほどの状況になった事も無ければ、周囲にもそんな者は居なかったので、一体どれ位の期間で餓死するのかは分からないが、そろそろ国内の物資は底をつく頃だと思う。
アルスロー王国の封じ込めは概ね上手くいっているようだ。
国境付近には多くの難民が詰めかけているが、周辺国は難民の受け入れ拒否の姿勢を貫いており、関所は門を閉じたままだ。
国境にフェンスが張っている訳でも無いので、国境警備隊の目の届かない森林部分からは難民が抜け出ようとしているようだが、こちらとしては許すつもりは無い。
最初にいくらかの難民の集団を捕らえ、ガウェインに命じて眷属化した上で、そういった場所に解き放った。
まぁ彼等を振り切ることが出来れば、見逃してやってもいいかと思う。
生きているだけマシと言う物だ。
そう言えば、新たに仲間を増やした。
彼は十メートル程の体躯を持ち、暗赤色の鱗を持つ竜だ。
ユーサーと言う。
我ながら、洒落が効いていると自負している。
ダンジョン内に呼び出したは良いが、外に出すのにはなかなか苦労した。
主にサルガタナスが……。
その彼が昼夜を問わず、国境の遥か上空から監視を続けている。
目的は貴族達を逃がさない為にだ。
難民たちに関しては、ガウェインの眷属から逃れられるのであれば見逃すように言ってあるが、身なりの整った者や馬車に乗った者などは、悉く襲い掛かる様に指示している。
貴族たる者、国と運命を共にしてもらわないとな。
なんだっけ?
ノブレス・オブリージュ?とか言ったかな?
まぁ細かい部分は違うかもしれないが、そう言う事だ。
肉食で大型の彼を養うのは、かなり苦労をすると思われたが、それなりに知能も高く自分で勝手に餌を取ってくれるので助かっている。
万が一、討伐されたとしても所詮はでかいトカゲに過ぎない。
懐いて来るのでダンジョンコアの分身体よりは可愛く感じてしまうが……。
アルスロー王国自体は豊かな森に囲まれ、それなりの国土を誇ってはいたが難民が出始めた頃にはダンジョンに面した側の逆、つまりは北西側だな。
そっち側にあった森は、焼き払わせてもらった。
まぁ、焼き払われた森を抜けても進んだ先は海だしな。
船でもない限りはどこかに行く事も叶わないだろう。
そうやって、アルスロー王国滅亡への道を着々と進めている時に客が現れた。
招待した訳じゃないが、思ってもみなかった者達だったので少し驚いた。
アルスロー王国で呼び出したと思われる勇者達だ。
いや、正確に言えば勇者達だった物と言えばいいだろうか?
どうやったのかは知らないが、ガウェインの様な眷属化ではないらしい。
傷付けば血も流れている事から、ゾンビ系の様に不死化している訳でも無いらしいが、意志と言う物がまるで感じられない。
戦闘能力は高い様なのだが、ただそれだけなのだ。
何と言えばいいだろうか、パーティを組んではいるが三名のソロプレイヤーが、てんでバラバラに行動している感じと言えば分かってもらえるだろうか?
つまりはチームワークなんてあった物じゃない。
味方が居ようが、邪魔であればそれごと巻き込んでも気にしない。
そして、巻き込まれた側も気にしていない。
そんな状態だから、最下層のゴーレム相手に血を流したりしている。
それでもあっさりと十階層を突破すると言うのは、やはり勇者としての力は優秀なのだろう。
それなりの武具に身を包み、兜に遮られて顔をしっかりと確認する事は出来ないが、恐らくは高校生くらいであろう。
目の色までは分からないが、黒髪なのは確認できた。
日本人だろうか?
もしかすると、俺が居た世界の住人か?
それとも似た世界の似た人種なのだろうか?
まぁ、異世界召喚だと決まった訳では無いが、彼等からすればどうでも良い事だろう。
俺にとっても、だが……。
それでも、惨い事をする……。
それなりに暮らしていたであろう彼等を、自己都合で呼び出した挙句に力を奪い、意志すらも奪い駒として扱う。
いくら強力だろうが、所詮は搾りかすみたいなもんだろう。
ダンジョンに送り込んだって、数に擂り潰されて俺まで届かない事ぐらい分かるだろうに……。
大した感情は湧かないが、同情くらいはしてしまう。
王女とやらも、俺に劣らず外道な様だ。
まぁ、俺が人の事をどうこう言うつもりは無いが、ウチのモンに手を出したんだ。
その落とし前だけはキッチリとつけてもらおう。
取り敢えず、搾りかすの片付けをしに行かないとな。
これ以上好き勝手にされるのは困る。
「行けるか?」
「無論です。我があるじ。」
「御意。」
赤黒い炎を眼窩に宿し、豪奢なローブに身を包んだ骸骨と、柔らかな物腰ながら並の貴族など足元にも及ばぬ程の気品と、一切の温度を感じさせぬルビーの様な瞳を輝かせる者が影の中に沈んで行った。
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