完成
「へぇ……、立派なモンだ。新品なんて見た事無かったけど、最初はこんなに風に綺麗だったんだな。」
「うむ。これが稼働するようになれば、儂らが扱う物ほどではなくとも、それなりの物が大量に手に入る様になるじゃろうて。」
「質の低下は仕方ないさ。それでも、これまでの物に比べれば十分に高品質な物が、安定して大量に供給できるんだ。」
「材料は用意したとは言え、こんなにも短い期間で出来るとはな。流石ノームと言った所か?」
「ふん。褒めても何も出やせんわい。それに仕組みさえしっかりと理解して、材料さえ揃っておるのであれば、誰でも作れるわい。」
鼻を鳴らしてそっぽを向いているが、これはアレか?もしかしてテレているんだろうか?
髭もじゃでずんぐりむっくりなおっさんのツンデレなんて需要は無いんじゃないか……?
まぁ、感謝している事には違いないので褒美を渡す事にしよう。
「褒美をやろうと思うんだが、何が良い?」
「酒じゃな。」
「そ、そうか……。それじゃあ、今日は全員ダンジョンに戻って来い。酒宴を開こう。」
一切の遠慮も、躊躇も無かったので一瞬面食らったが、固辞されるよりこうやってはっきりと要求してくれたほうが楽で良い。
今日完成したのは『反射炉』だ。
ダンジョンの機能では設計図なんかは手に入らなかったので、俺が簡単に図に書いて説明する事になった。まさか高校の課外授業が異世界で役に立つとは思わなかったよ……。
感想文を書くのにそれなりに調べたからな。
それに主材料となる耐火煉瓦なんかが、ダンジョン機能で取り出すことが出来たのは幸運だった。
近代化された反射炉であれば、ボイラーなんかに繋いで電力などの発電を行うことが出来るのだが、さすがにそこまで出来る程の設備は無かったので断念した。
この反射炉は十八世紀から十九世紀にかけて使用された物を模倣させてもらった物だ。
「っかーーー!染みるわい!」
十九階層に集まったノーム十名とアグニの一名、そして子供達やリリア。
それらによる酒宴が始まって、ノーム達は俺が取り出した地球産の酒類を水の様に飲んでいる。
満喫してくれている様で何よりだ。
俺も異世界ならば年齢制限や法律など関係ないと思って、興味本位で酒を試してみたのだがどうにもダメな様だった。
よく分からないが、ダンジョンコアからストップが掛かってしまったのだ。
なんでも、酔った状態と言うのは所謂バッドステータスに当たるらしく、ダンジョンとしての
不具合が起きる可能性がある、と言う物だった。
ただの興味本位で、そんなメリットの一切無い可能性に賭ける理由も無かったのでアッサリと諦めた。
ノーム達は酒精の強い物がお好みの様だ。アグニはビール類かな?
「あるじの出してくれた酒はどれも絶品じゃな!竜のみが作り出せると言われる竜精酒も斯くやという味わいじゃ!」
「気に言ってくれたようで良かった。まぁ、俺も詳しい事は良く分からないけど、今飲んでいるソレなんかは十三年寝かせた物らしいぞ。蒸留した物を樽に詰めて寝かせて置くことで、そんな味わいが出来るんだ。まぁ、均一の味を作り出すのに熟練の職人が必要らしいけどね。」
TVで聞きかじった様な事を披露してみる。
「ふむぅ……。あるじよ。次は酒を造ってみんか?」
「え?」
「このういすきー?とか言ったかのう?これはまっこと大した味じゃ。これ程の品、この世の王侯貴族でも飲んだ事はあるまいよ。これらが造り出せるとしたら、これらが自由に飲めるとしたら、この世の中の酒飲みは必ずやあるじを支持するじゃろうて。」
「ふむ。」
どちらかと言うと食べ物とかを先に広めてしまおうかと思っていたんだけどな……。
自分で言っておいて何だが、十数年掛かったりするのであれば先に手を付けても良いかもしれないな。
「それに、一部じゃが人手不足を解消する事にも繋がる。」
「へぇ…、それは何故?むしろ酒造りに手を取られて、もっと人手不足に陥るんじゃないか?」
「簡単な事じゃ。この酒をドワーフ共に贈って飲ませてやれば良い。その上でこの酒を造る手伝いと完成した炉を動かす人員も募集すれば良い。すぐに食らい付くぞ!」
にかっと笑いながら、そう断言する。
話半分でも試してみる価値はあるかもしれないな。
駄目だったとしても、そこまで大きな損することも無い。
「だが、俺は詳しい作り方なんか分からないぞ?どういう物だか理解できていなければ、呼び出す事も出来ない。」
「ふむ……。それもそうか……。」
構造が分かればいいんだけどな……。構造さえわかれば彼らの事だ。どんなに難しい物であっても作り出してしまうだろう。
実物を見た事は無いけど、かなりの大きさの物だったよなぁ……。
国産メーカーのTVCMでちらっと見た事がある程度だから詳しい事はまるで分からない。
この世界にモデルになる物があれば良いんだけど……。
「この世界にモデルとなる物が無いかどうか探して……。いや、ちょっと待てよ。」
ノームが不思議そうな顔でこちらに話しかけようとしてくるが、手振りで押し止める。
「そうか……。これなら……。うん。目途が立ったぞ。」
「なにぃ!本当か!?」
「あぁ。この方法なら恐らく大丈夫だろう。」
反射炉の建造の時点で思い浮かばなかったのは残念だが、思った通りの物が取り出せた。
うん。地球生まれのダンジョンマスターも十分にチートだって事が分かったわ。
取り出した物を話をしていたノームの手に載せて説明してやった。
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