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お披露目


「ふあぁぁぁぁ……。」

「おいおい……。いくらなんでも気を抜きすぎだぞ。」

「でもよぉ、4国が国境で睨み合いして3年だぞ?そう簡単に動く訳ねぇだろ?」


「そりゃあ、そうだけどよ。ブラント神教国が亜人と手を組むとも思えねぇし、セエレの亜人共にしても同じだろうけど、ルドラス皇国は違うだろ?」

「あいつらは勝つ為ならどんな相手とも組むし、卑劣な裏切りなんかも平気でやっちまうって話だしな。」


「んな事ぁわかってるよ。ただ、こうも何にもねぇと仕方ねぇだろ?」

「まぁな………。所でよぅ、新しく赴任するって噂の騎士様の噂知ってっか?ドえれぇ美人らしいじゃねぇか。こんな何にもねぇ場所を見張る役目もちょっとは楽しくなるってもんだよな。でも、あの鮮血公の孫娘って事は、おい!聞いてんのかよ?」


「な、なぁ……おい……。あれ……何だ?」

「あん?」

「何だよ!あの光!あんなの見た事ねぇよ!」

「あ……あ……ありゃ、魔法陣……だ……。何の為の魔ほ…。」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



その日、セエレ共和国・ルドラス皇国・ブラント神教国、そしてアルスロー王国の4国の駐屯地及び監視警戒の為の軍、およそ5万は地図から消滅した。

そして、その舞台となったハイランド平原と言う名の土地も同時に姿を消したのである。



「…………報告は以上です。」

「それで……、ハイランド平原を押さえたのはどの国なのかね?」

「いえ、未だどの国からも宣言は出されておらず、密偵からもそのような報告は受けておりません。加えて言いますと、どの国も対応に追われ駆けずり回っていてどう考えてもいずれかの国が彼の地を支配した、とは思えぬ状況だそうです。」

「それと……、申し上げ難いのですが、地形が丸ごとそっくり変わってしまったと言い出す者も出る始末でして。真偽を確かめようにも、辺り一帯は深い霧に包まれ確認する事が出来ておりません。」


頭の痛い問題である。ルドラス皇国皇帝ルドラス九世は、頭を抱えたくなるのを堪えて報告している密偵の1人を手を振る事で下がらせた。

「どう思う?」

50をとっくに超えても、未だに衰えぬ肉体と覇気。武人そのものと言っても過言ではない皇帝が尋ねたのは年若い文官風の優男だった。


「材料が少なすぎて、何とも判断に困る所でございます。極大魔法の行使と言う事であればブラント神教国が濃厚ですが、それにしても味方の兵士ごとと言うのは首を傾げざるを得ません。」

「ふむ……。続けよ。」

「はい。そして、元々はセエレ共和国に対してブラント神教国が邪教徒討伐と言う名目で軍を起こした事に端を発する物でして、それらに関して我が国とアルスロー王国は警戒と監視、または隙あらばと言った様に積極性に欠ける物であります。」


「神話級のアーティファクトを手に入れた、いずれかの国が事を起こしたにしても自軍の戦力をわざわざ減らす真似をするかどうか……。何にせよ今は情報を集める事が肝要かと存じます。」

「そうだな。メイヤー、お前が中心となって情報を集め私に報告せよ。諸侯に対してはその後で良い。私が抑えるとしよう。」

「承知しました。」



「まずは、上々ってとこかな?」

「そうですね。マスターの指定した場所へ転移しました。それから、周囲には対魔法(アンチマジック)の霧を常に発生させてありますので、魔法と言う手段で内部を探る事は不可能です。」

「よし。それじゃあ、キラーアント達を行動させよう。」


思念にて魔物達へ命令を送る。

彼らは俺にとても忠実で、俺の思っている通りに行動してくれる事だろう。ただ、自分で考えて行動すると言う事は苦手にしている。

魔物にも個性があるのだ。キラーアント自身は大して強いわけではないが、集団として戦うとなると恐ろしく驚異的だ。


そして俺は、彼らに対してこう命令したのだ。『四方へ向かって掘り進め、巣を充実させよ』と。

彼らの親であるクイーンアントに対しては、『積極的に卵を産み同族を増やすと同時に新たなクイーンアントを育て巣分けをするように』そして、同じ命令を新たなクイーンアントへも伝える様に、と。


「それから、霧の事だが塔の中層から上は隠さずに見える様にしてくれ。」

「はい。承知しました。」

「この塔の存在はしっかりと確認してもらわないといけないからな。」


ちなみに兵士は消えて無くなった訳じゃない。強制的にダンジョンの内部へ取り込んだだけだ。

その生き残りが、今死んだ。

第一段階は終了だ。思った以上に何も感じないもんだな。元人間としては多少何か思う所でも出て来るかと思ったが、何の感傷も起きない。


さて、次だ。


外周部の洞窟にはゴブリンやコボルト・オークなどの比較的ランクの低い魔物ばかりを配置してある。そして、洞窟と洞窟を繋ぐ渓谷部分にはフレイムジャイアントやフロストジャイアントなどの巨人系の魔物を配置した。


ダンジョンの壁部分には自己修復機能があり時間が経てば元に戻ると言う性質がある。

その為、鉱物資源を最初に設定しておきさえすれば、この地の魔力が尽きない限りは無尽蔵に発掘・採取が出来るのだ。

ゴブリン達が採掘した物を、キラーアント達がさらに外周の自分達の巣へ運ばせる。

そして、それらの鉱物と犠牲となった者達の装備などを再利用して巨人達が新たな武具を作り上げていく。

それもまた、箱に入れダンジョンの各地へ運ばれるのだ。

所謂、宝箱ってやつだな。


こうやって疑似ダンジョンとも呼べる洞窟を増やして行き、拡張していく。

食い止めようとしなければ、その国が飲み込まれるだけだ。


さぁ、まずは4国との陣取り合戦だ。




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