亡国
出張予定です。
詳しくは活動報告に記してあります。
あれから既に一か月の時間が過ぎた。
決して無為に過ごしていた訳ではないが、特に変わった点と言う物は無い。
強いて言うのなら子供の数が増えた事だ。
いつも通りに冒険者として活動しているデーモンロードが野党の巣窟を襲った所までは良かったのだが、その場に違法行為すれすれどころか、完全真っ黒な奴隷商が居たのだ。
まぁ、その奴隷商もタイミングが悪いと言えば悪いのだが、こちらとしても同様だったのだ。
捕えられていた少女の姉が、馬車で先にアルスロー王国の王都へと送られたとの事だった。そうなってしまうと、冒険者としての仮面を被っている手前、無視する事は出来なかったと言う訳だ。
尚且つ、王都での活動と言う事で大事になってしまい、警備隊などを巻き込んでの大立ち回りとなってしまった。そして、冒険者が少ない事を憂慮していたアルスロー王国によって大々的に表彰される流れとなってしまったと言う。
極力、問題行動を起こさない様にと俺から命令されていた為に、逃げ出す事も出来ず流されるままに、アルスロー王国の冒険者として認知されてしまったのだった。
俺の命令は、彼らに柔軟な対応と言う物を奪う結果となった。
どうしようもないので、報奨金や国からの褒美として金貨と奴隷に落とされていた者で身寄りの無い者をすべて引き取った。
そして、これも褒美でもらったと言う王都の屋敷で大人達を働かせる事にして、子供達は故郷の村へ預ける、と言う名目でダンジョンへ連れ帰って来た、と言う訳だ。
正直な話、デーモンロードと子供達の前で頭を抱え込まなかった自分を褒めてやりたい。
だが、過ぎた事を悔やんでも仕方がない。
デーモンロード達もやりたくてやった訳じゃないだろう。
だが、朗報が無かった訳でもない。
アルスロー王国内での事件と言う事で、王宮関係者と繋ぎが出来たのは大きな収穫だった。
結果、俺が警戒していたような事は一切無いと言う事が判明したからだ。
ただの取り越し苦労だったのは不幸中の幸いと言う奴だろうか。
動きが無かったのは、ただ単に動きが悪かっただけだと言うのは、少し力が抜けてしまった。
だが、警戒が必要な者が居ない訳でもない。
現王は愚王と評判だが、その一人娘。現在は王の名代として王国内各地を廻っている王女、レオノール。
彼女は聡明で、臣下や民からの人気も高く次期女王として期待されていると言う。
だが、前もって知れたのであれば対策も立てられる。
これからも情報をしっかりと集める事にしよう。
デーモンロード達には気にしない様にと伝えたが、それはそれと言う事でアルスロー国内にて冒険者として活動する事を命じる。
名前は、褒美を受け取る時に名乗った偽名をそのまま俺が名付ける形にした。
しかし、デーモンロード達がこんな事になってしまったのだが、外に出たブレオベリスは大丈夫だろうか?
周囲の国の対応や冒険者達など比にならない位に不安だ。
変な事にならなければいいんだが……。
◇
「姫様!ここはもはや保てません!どうか!脱出を!」
「しかし!お父様の仇を!」
「無念ではございますが、今のままでは無駄死にです。ですが!ですが!姫様さえ生きておられれば、まだ希望はあります!御家再興の道も拓ける筈です!」
「でも!」
「今は!今は御辛抱ください!」
「分かりました……。城を脱出いたしましょう。」
「それでは、抜け道を出た後はこの者が先導致します。どうか、御無事で!」
「そんな!ギースは!貴方はどうするのですか?」
「申し訳ありません。姫様が既に居ないとバレぬ様にする為には将軍である儂と言う的が必要なのです。」
「そ、そんな………。」
「なぁに。この老骨でも姫様が逃げる時間位は稼いで見せますぞ!」
「ギース……。」
「ささっ!姫様はお早くお逃げください。おい。姫様をよろしく頼むぞ。」
「はっ!」
王宮の食堂に設置された食堂に設置された暖炉の上部にある窪み。
そこへ代々受け継がれている王家の紋章が刻まれた指輪をはめ込むと、『カチリ』と言う機械的な音の後、暖炉横の柱部分が奥へとずれて通路が口を開ける。
「それでは、姫様。これにておさらばでございます。お元気で!」
「ギースも……。御武運を……。」
「はっはっは。これで千人力でございますな!勢い余って反乱を起こした者共を全て狩り尽くしてしまった際はご容赦ください!」
にっこりと笑いながらギースがそんな事を言う。
泣いてはいけないと、思いながらも溢れる涙を止める事が出来なかった。
「えぇ……。その時は罰として、子供の頃のように遠乗りへ連れて行って頂きますわ。」
「それは……、また王に大目玉を食らってしまいますな!またお会いしましょう!」
「約束!約束ですよ!」
守られる事の無い約束をして別れを告げ、通路へと進もうとした時に声が掛かる。
「そろそろ、別れは終わったかね?」
すでに大臣の手の者が入り込んで来たのかと、周囲の者が武器を取り出そうとするが、相手の姿は見えない。
「どこだ!姿を見せろ!」
「すまないな。もっと早くに出られたのだが、どうにも別れを邪魔するのは無粋な気がしてな。他意は無いのだ。今そちらへ行く。」
そう言って王家の者か、それに近しい者しか知らない筈の抜け穴の闇の中から異形の者が姿を見せる。
その姿は、赤黒い光を眼窩に灯した骸骨の姿をした一体のアンデッドだった。
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