プロローグ
初投稿となります。
拙い文ですが、多くの人に読んで頂ける様に
頑張っていきますので暖かい目で見守って頂けると
ありがたいです。
これから、よろしくお願いします。
最初に言っておこうと思う。
俺は最低な人間で、クズと呼ばれる部類の人間だ。誰に言われるでも無く、自分自身でそれがはっきりと分かっている。
親の教育が悪く、社会に対して何か思う所があるからひねくれて育った。
などという事は無く、ただただ単純に俺が欠陥を持って生まれ落ちたってだけだ。
愛情と言う物が理解できない。
可哀想だ、と言う感覚が分からない。
他人を測る物差しは、自分から見ての損得勘定のみ。
別に他人の不幸を喜ぶ趣味は無いが、助けようなどと考える事も無い。
例えそれが自分の肉親であっても、だ。
万が一、人助けをした場合があったとすれば、多分に打算と計算を働かせて自分の利益になると判断したまでの話だ。
まぁ、一度もそんな事は無い訳だが。
そう言った人間を世間では『人間のクズ』や『最低の人間』などと呼ぶ。
だが、別にそれが気に入らないと思った事は無い。
純然たる事実を言われているだけであり、それらの言葉が俺と言う一個人を言い表すには最適の物だからだ。
そして、何よりも誰よりも俺自身がそれを一番自覚している。
まぁ、そんな生き方だと世の中は生き難い。それもまた事実だ。
現代日本に生まれ育った俺は、『外面の良さ』と言う仮面を身に着けるまでかなり苦労した。
日本と言う国(まぁ日本だけではないのだろうが)は異物に対してかなり過敏に反応する。
まず最初に気付いたのは、祖母だった。
小学生の3~4年生くらいだったろうか?大人しいと周囲から評されていた俺は、学校が終わり家のリビングで祖母と共にTVで時代劇の再放送を見ていた。
その際に時代劇のある場面で借金のかたに娘が売り飛ばされる場面を祖母と一緒に見ていた俺は、
祖母の「可哀想に……。」などと言った言葉が理解できず、不思議に思い訊いてしまったのだ。
悪徳な高利貸しから借金をし、娘を売り飛ばされた挙句に高利貸しの手に掛かって死んでいく父親。
恨みを晴らす為に、高利貸しやその後ろ盾の悪代官を殺す。
はっきり言えば意味が分からなかったのだ。
そもそも借金をする方が悪いし、よく調べもせずに借りようと思う方が間違っている。
借金をしてしまったのが仕方なかったとしても、娘一人で事が済むのだ。
なぜ、自分が助かった事に満足せず明らかに勝てない相手に向かって行くのか?
2-1=1で終わらせずに、どうしてわざわざ2-2=0にしようとするのか?
そう訊かれた祖母は驚いた顔をしながら、色々と説明をしてくれた。
曰く、普通の人はこういう風に感じる物だ、と。
祖母の話は何一つとして理解できなかったが、一つだけ分かった事があった。
自分は他の人と違う、と。
子供ながらに、その違いと言う物はこの社会においては致命的な物だという事が理解できた。
孫にあれだけ甘い、祖母が異物を見る様な表情で俺の事を見たからだ。
だが別に、感情が無いわけでも加虐嗜好がある訳でもない。
TV等で感動の再会や、かわいい動物の子供等、普通に感じる事が出来る。
恐らくは、普通の人が普通に感じる感情と言う物だと思う。
だがそれは自分に関係のない世界の話で、関係が無いからこそ損得無しで見ていられるのだ。
その時からだろうか?仮面を被る様に生きる様になったのは……。
周囲と自分が違うという違和感を抱えながら成長し、高校を卒業した。
恐らくだが、周囲からの評価としては大人しい物静かな人物と思われていた事だろう。
家族には薄々気付かれていたのだろうがはっきりと言われた事は無い。
腫れ物に触るように扱われ、そして俺自身もそれを許容してきた。
家族と暮らしていてもお互いに違和感は募るばかり。
その為、大学入学を機に一人暮らしを始めた。
特に反対などは無かった。
だが、それでも。
ようやく自由と言う物を感じた気がした。
縛っていた物から抜け出せた気がした。
自分を偽る事無く生きていける気がした。
そう、あの日までは……。
一人暮らしを始めて数か月が経って、大学や暮らしにも慣れてきた。
夏の日差しが柔らかくなり、少しずつ過ごしやすくなってきた日の早朝に、それは起こった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
ドーン!
俺がベッドで眠っていると、大音響と共に突き上げる様な激しい揺れが襲い掛かる。
薄暗い中、目を開けた俺が最初に見た物は、今にも俺を押し潰さんと迫ってくる部屋の天井だった。
「え?」
体ごと激しい渦の中に放り込まれた様な衝撃の中で、なんとか逃げようと転げ回ったような気がする。
どれくらい経ったのだろうか?
俺を襲っていた衝撃はいつしか収まっていた。
恐らくは地震だったのだろう。
起き上がろうとして、それが出来ない事に気付く。
住んでいたアパートが倒壊でもしたのだろうか?
色々と動いてみたり、周囲を探ってみた所、ベッド等の家具と柱の様な太い梁のお陰で下敷きになる事は免れた様だった。
しかし、恐ろしく狭い隙間に自分が居る事にも気付かされる。
親の世話になる事が嫌で、自分のバイトで賄える程度の家賃と言う事で探した古いアパートだった。
まさかそれが、こんな目に合う羽目になるとは……。
ツイてない……。
救助が来るまで耐えられるだろうか?
こういう時のリミットは72時間だと聞く。
地震の影響で倒壊したのが、古かったこのアパートだけならば良いのだけれど、周辺がすべてこのアパートの様な状況だとするとかなり厳しい事になる……。
落ち着く為と、周囲の音を聞く為に目を閉じて耳を澄ます。
パチッ。パチパチッ。
何の音だろう?
そう思った時には、異臭が流れ込んで来た。
鼻や喉を刺激する異臭に気が付いた俺が目を開けると、倒壊した建物と家具などの小さな隙間から、日の光とは違う揺らめくような明かりが差し込んでいる事が分かった。
「本当にツイてない!」
何とか抜け出そうと、必死にもがいてみるが周囲はビクともしない。
「クソッ!おおーい!誰かー!」
「誰か居ませんかー!?」
「誰かー!……げほっげほっ!」
助けを呼ぶために大声を出していて、息を吸い込んだ拍子に煙を思い切り吸い込んでしまう。
「助けてくれー!げほっ……げほっ……。」
声を上げ続けるが、煙と光は強くなっていく一方だ。
どんどんと息苦しくなってきて、顔の前にある隙間から目の前まで炎が迫ってきている事がわかる。
「…………こりゃぁ……無理だな……。」
正確には分からないが、盛大な焚火の真下に居る様なものだろう。
「ようやく………。ようやくだぞ!ここまで我慢して!俺の今までは何の為に!!」
「理不尽過ぎるだろ!俺が何をしたってんだ!ただちょっと考え方が違っただけだろうが!」
「こんな世界!ヘドが出る!!こんな事なら好きに生きればよかった!クソッタレーーー!」
こうして、俺は死んだ。
暫くはハイペースで書いていけたら、と
考えています。
誤字・脱字や感想など頂けるとありがたく思います。